病気の映画

 インド映画では、様々な病気や障害を取り上げた作品がある。これらの映画を観ることで、それぞれの病気のことが少し分かる。インドでは病名はそのまま英語が使われることが多いため、英語での病名を併記してある。各病気の解説はWikipediaからほぼそのまま転載してある。なお、視覚・聴覚・発話や身体の障害を扱った映画は多いので省略している。

失語症

 英語では「Dyslexia」。ディスレキシア。高次脳機能障害の1種であり、主には脳出血、脳梗塞などの脳血管障害によって脳の言語機能の中枢(言語野)が損傷されることにより、獲得した言語機能(「聞く」「話す」といった音声に関わる機能、「読む」「書く」といった文字に関わる機能)が障害された状態。失語症を取り上げた映画に「Taare Zameen Par」(2007年)がある。

知的障害

 英語では「Intellectual Disability」。知的機能に制約があること、適応行動に制約を伴う状態であること、発達期に生じる障害であることの3点で定義されるが、一般的には金銭管理・読み書き・計算など、日常生活や学校生活の上で頭脳を使う知的行動に支障があることを指す。知的障害を取り上げた映画に「Koi… Mil Gaya」(2003年)、「Barfi!」(2012年)、「Dhoom: 3」(2013年)がある。

脳性麻痺

 英語では「Cerebral Palsy」。略称は「CP」。受精から生後4週までの間に、何らかの原因で受けた脳の損傷によって引き起こされる運動機能の障害を指す症候群。脳性麻痺を取り上げた映画に「Margarita with a Straw」(2015年)や「Zero」(2018年)がある。

アスペルガー症候群

 英語では「Asperger Syndrome」。「自閉症スペクトラム」ともいう。コミュニケーションや興味について特異性が認められるものの言語発達は良好な、先天的なヒトの発達における障害。特定の分野への強いこだわりを示し、運動機能の軽度な障害が見られることもある。アスペルガー症候群を取り上げた映画に「My Name Is Khan」(2010年)がある。

トゥレット症候群

 英語では「Tourette Syndrome」。チックという一群の神経精神疾患のうち、音声や行動の症状を主体とし慢性の経過をたどるものを指す。小児期に発症し、軽快・増悪を繰り返しながら慢性に経過する。トゥレット症候群を取り上げた映画に「Hichki」(2018年)がある。

ダウン症候群

 英語では「Down Syndrome」。体細胞の21番染色体が通常より1本多く存在し、計3本になることで発症する先天性疾患群。身体的発達の遅延、特徴的な顔つき、軽度の知的障害が特徴。ダウン症候群を取り上げた映画に「Ahaan」(2021年)がある。

強迫性障害

 英語では「Obsessive Compulsive Disorder」。略称は「OCD」。不合理な行為や思考を自分の意に反して反復してしまう精神障害の一種。同じ行為を繰り返してしまう「強迫行為」と、同じ思考を繰り返してしまう「強迫観念」からなる。強迫性障害を取り上げた映画に「Ahaan」(2021年)がある。

アルツハイマー症候群

 英語では「Alzheimer Syndrome」。脳が萎縮していく病気で、認知機能低下や人格の変化を主な症状とする。認知症の60-70%を占める。アルツハイマー症候群を取り上げた映画に「Maine Gandhi Ko Nahin Mara」(2005年)、「U Me Aur Hum」(2008年)、「Listen… Amaya」(2013年)、「Project Papa」(2018年)がある。

パーキンソン病

 英語では「Parkinson’s Disease」。手の震えや動作、歩行の困難など、運動障害を示す、進行性の神経変性疾患。進行すると自力歩行も困難となり、車椅子や寝たきりになる場合がある。40歳以上の中高年の発症が多く、特に65歳以上の割合が高い。パーキンソン病を取り上げた映画に「Jamun」(2021年)がある。

健忘症

 英語では「Amnesia」。記憶を思い出すことができない、また、新たなことを覚えることができないという症状である記憶障害の中でも、エピソード記憶が障害され、かつ前向性健忘が主症状のものを健忘症と呼ぶことが多い。健忘症を取り上げた映画に「Ghajini」(2008年)がある。

不眠症

 英語では「Insomnia」。必要に応じて入眠や眠り続けることができない睡眠障害。睡眠障害を取り上げた映画に「Talaash」(2012年)や「Shaandaar」(2015年)がある。

勃起不全

 英語では「Erectile Dysfunction」。略称は「ED」。男性の性機能障害の一種であり、陰茎の勃起の発現あるいは維持ができないため、満足に性交の行えない状態をいう。勃起不全を取り上げた映画に「Shubh Mangal Saavdhan」(2017年)がある。

若年性脱毛症

 英語では「Premature Alopecia」。男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia, AGA)の一種で、若い年代、特に10代後半から20代前半に発症する脱毛症のことを指す。若年性脱毛症を取り上げた映画に「Gone Kesh」(2019年)、「Ujda Chaman」(2019年)、「Bala」(2019年)がある。

後天性免疫不全症候群

 英語では「Acquired Immune Deficiency Syndrome」。略称は「AIDS」。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が免疫細胞に感染し、免疫細胞を破壊して後天的に免疫不全を起こす疾患。AIDSを取り上げた映画に「Phir Milenge」(2004年)、「My Brother… Nikhil」(2005年)、「Babloo Happy Hai」(2014年)がある。

骨肉腫

 英語では「Osteosarcoma」。肉腫の組織型の1つで、悪性の間葉性腫瘍のうち造骨細胞への分化ポテンシャルをわずかでも有し、腫瘍骨を形成する能力を持つもの。骨肉腫を取り上げた映画に「Dil Bechara」(2020年)がある。

甲状腺癌

 英語では「Thyroid Cancer」。甲状腺の組織から発生する癌。甲状腺癌を取り上げた映画に「Dil Bechara」(2020年)がある。

ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群

 英語では「Hutchinson-Gilford Progeria Syndrome」。新生児期ないし幼年期に好発して、全身の老化が異常な速度で進行する早老症疾患。ハッチソン・ギルフォード・プロジェリア症候群を取り上げた映画に「Paa」(2009年)や「Cuttputlli」(2022年)がある。

小人症

 英語では「Dwarfism」。様々な原因によって低身長という表現型を示している疾患群。小人症を取り上げた映画に「Zero」(2018年)がある。

重症複合免疫不全症

 英語では「Severe Combined Immunodeficiency」。略称は「SCID」。T細胞の数または機能の異常のため、免疫系が正常に働かない疾患。細菌、真菌、ウイルスのいずれにも感染しやすい。SCIDを取り上げた映画に「The Sky Is Pink」(2019年)と「Black Sunshine Baby」(2023年)がある。

先天性無痛無汗症

 英語では「Congenital Insensitivity to Pain with Anhidrosis」。略称は「CIPA」。運動麻痺を伴わない、全身の無痛を主症状とする疾患。全身の温覚や痛覚が消失し、痛みを感じず汗もかかないため、様々な症状を引き起こす。温痛覚による防御反応が欠如することが患者の実生活に深刻な影響を与える。皮膚、軟部組織、骨、関節に様々な外傷を受けやすく、また受傷に気付かずに重症化することもありうる。CIPAを取り上げた映画に「Mard Ko Dard Nahi Hota」(2019年)がある。

解離性同一性障害

 英語では「Dissociative Identity Disorder」。略称は「DID」。本人にとって堪えられない状況から受けるべき心のダメージを、人格や記憶を切り離すことで回避しようとする上で、切り離した感情や記憶が成長して、別の人格となって表に現れるものである。かつては多重人格障害と呼ばれた。DIDを取り上げた映画は多く、「Bhool Bhulaiyaa」(2007年)、「Karthik Calling Karthik」(2010年)、「Nail Polish」(2021年)、「Roohi」(2021年)、「Koi Jaane Na」(2021年)などがある。ホラー映画の種明かしに使われる例が目立つ。

クーヴァード症候群

 英語では「Couvade Syndrome」。「同情的妊娠(Sympathetic Pregnancy)」とも呼ばれる。妻が妊娠したことで、夫の方にもつわりのような症状が現れることである。男性が妊娠するという筋書きのコメディー映画「Mister Mummy」(2022年)のオチがクーヴァード症候群だった。

デュシェンヌ型筋ジストロフィー

 英語では「Duchenne Muscular Dystrophy」。略称は「DMD」。筋ジストロフィーの一種で、筋力の低下が歩行困難を引き起こし、やがて生命を維持する筋力すらもなくなって死に至る先天的な病気である。「Salaam Venky」(2022年)の主人公ヴェンキーがDMDを患っていた。

筋萎縮性側索硬化症

 英語では「Amyotropic Lateral Sclerosis」。略称は「ALS」。手足、のど、舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく病気である。「The Last Coffee」(2023年)の脇役がこの病気を患い、最後は視線入力によってしか意思を伝えられなくなっていた。

てんかん

 英語では「Epilepsy」。突発的な痙攣の発作や意識喪失が起きる慢性的な脳の疾患である。「Bawaal」(2023年)の主人公ニシャーがてんかん持ちで、ストーリーにも関わってくる。

先天性四肢欠損症

 英語では「Congenital Limb Defects」。生まれつき手足が不完全な病気である。「Cypher」(2019年)は先天性四肢欠損症の男性の自伝映画であり、本人が本人役で出演する。