Gone Kesh

4.0
Gone Kesh

 2019年3月29日公開の「Gone Kesh」は、脱毛症に悩む女性が主人公の変わった映画である。題名は「髪の毛がなくなった」という意味になる。「絶望的な状態」という意味の英単語「Gone Case」に、「髪の毛」という意味の「Kesh」を掛けている。

 監督は新人のカースィム・カロー。キャストは、シュエーター・トリパーティー、ジテーンドラ・クマール、ヴィピン・シャルマー、ディーピカー・アミーン、ブリジェーンドラ・カーラーなどである。

 舞台は西ベンガル州スィリーグリー。イーナークシー・ダースグプター(シュエーター・トリパーティー)は16歳の頃から脱毛症に悩まされていた。クラスメイトからは「Gone Kesh」とからかわれていた。心配した父親(ヴィピン・シャルマー)と母親(ディーピカー・アミーン)は医者に診せるが良くならず、彼女はスカーフで頭を覆って生活をするようになった。

 イーナークシーは大学生になった。有名な医者に掛かったことで、脱毛症であることが分かる。その治療には多額の治療費が掛かったが、父親は何とか捻出する。ステロイド治療により、イーナークシーの頭に髪が戻るが、副作用として髭や胸毛が生え始める。薬の投与を止めると、髪の毛はまた抜け落ちてしまった。そこで彼女はカツラをかぶって生活するようになる。

 大学を卒業したイーナークシーはショッピングモールで化粧品販売員になる。両親は結婚相手を探し始めるが、イーナークシーがつるっぱげであることが分かるとことごとく断られてしまった。

 ドゥルガー・プージャーの日、モールではダンス・コンペティションが開催されることになっていた。子供の頃からダンスを習ってきたイーナークシーは出場を望むが、モールのマネージャーからは、従業員の参加を認められなかった。そこで彼女は辞職して参加申し込みをする。

 大学生の頃からの知り合いで、同じモールで働くシュリージョイ(ジテーンドラ・クマール)はイーナークシーに片思いをしていた。あるとき、突然彼女の家を訪れるが、そのときちょうど彼女はカツラを外していた。イーナークシーの本当の姿を知りシュリージョイは驚くが、彼女のことをもっと好きになる。シュリージョイはイーナークシーにプロポーズし、彼女もそれを受け入れる。

 ドゥルガー・プージャーの日、イーナークシーはカツラを取って踊る。観客は彼女の姿に拍手を送る。

 1年後、イーナークシーは、自分がダンスを教える子供たちを連れて、モールのダンス・コンペティションに申し込みをした。

 主題は脱毛症であるが、もっと広い視野で見れば、コンプレックスとの戦いの映画だった。自己の弱点も自分の人生の一部であることを受け入れたときに、その人は本当の幸せを得ることができるという力強いメッセージが込められていた。それに加え、主人公イーナークシーを支える両親の物語でもあった。イーナークシーのコンプレックスは、いつしか家族全体のコンプレックスになっていたのである。総じて、家族が一丸となってコンプレックスを克服する感動ドラマに仕上がっていた。

 イーナークシーを演じたシュエーター・トリパーティーは、若く見えるが撮影時30代だったはずである。それでも10代の役をギリギリ演じられるくらいの幼い容姿をしている。そして、根がとても明るい人物のはずで、内側からポジティブさが滲み出てきている。脱毛症に悩まされる若い女性役であったが、イーナークシーからは、一部のシーンを除き、悲愴感のようなものが強く感じられたわけではなかった。それはそういう演技だったのか、彼女の地が出てしまっていたのか、判別できなかったが、映画を極端に暗い雰囲気にしない効果は出ていた。

 髪が抜け落ち始めたとき、イーナークシーは、自分だけの身に降りかかった不幸を呪う。そして何とか髪の毛を取り戻そうと両親と共にあの手この手を尽くすが、完全な治療にはならなかった。大学生時代にカツラと出会い、それによってひとまず彼女はコンプレックスを押さえ込むことに成功する。だが、それは一時しのぎであり、克服ではなかった。

 イーナークシーに自信を与えたのは、シュリージョイの存在に依るところが大きい。イーナークシーは、シュリージョイが自分に気があることを知っていた。だが、彼女は偶然彼につるっぱげの姿を見られてしまう。それでもシュリージョイは彼女を受け入れ、本当の姿を見た後にますます彼女のことが好きになったと言われる。脱毛症のことが分かると縁談を断られることが続いてきたイーナークシーにとって、シュリージョイのその言葉はどんなにありがたかったか知れない。

 だが、それでもまだ彼女は自分の髪の毛のことを公衆の面前で大っぴらにしたことはなかった。ドゥルガー・プージャー(参昭)の日に開催されたダンス・コンペティションで、彼女はカツラを外し、真の姿で踊りを踊る。そして観客から賞賛を浴びる。イーナークシーにとって、自分と完全に向き合うことのできた瞬間であり、彼女のことを心から心配してきた両親にとっても、それが報われた瞬間だった。

 また、イーナークシーは、自分の髪の治療のために両親に多大な迷惑を掛けていたことを痛感していた。両親はほとんどスィリーグリーから出たことがなく、一度タージマハルに行ってみたいという夢を持っていた。だが、イーナークシーの治療費が掛かるために貯金をすることができず、その夢は引き延ばされ続けてきた。イーナークシーは、自分が勇気を持ってコンプレックスと向き合うことで、今度は両親の夢を叶える番だと決意する。

 踊りを重視するインド映画なので、最後はダンスシーンで締めるかと思ったが、カツラを取ったイーナークシーが踊るシーンは映し出されない。コンペティションでも優勝ではなく準優勝だったようだ。もしかしたらシュエーター・トリパーティーは踊れない女優なのかもしれないが、きちんとしたダンスシーンにしていれば、インド映画としてもっと完成度が高くなったのではないかと残念に思った。

 主演のシュエーター・トリパーティーは、「Masaan」(2015年)や「Haraamkhor」(2017年)などで高い評価を得ている急成長中の女優だ。若く見えるのだが、前述の通り、既に30代になっている。興行的にも稼げる女優にまでは成長するだけの時間がないだろうが、主演を演じられるだけの実力があることは、この「Gone Kesh」で証明している。相手役のジテーンドラ・クマールは、押しが弱い男性役が似合う男優だ。イーナークシーを必死に支える両親を演じたヴィピン・シャルマーとディーピカー・アミーンも良かった。

 「Gone Kesh」は、脱毛症を題材にし、コンプレックスと向き合い、受け入れることの大切さを説いた感動作である。しかも、脱毛症によって頭髪が一本もなくなってしまったのは女性ということで、とてもユニークだ。観て損はない作品である。


Gone Kesh Hindi Movie (HD) - Shweta Tripathi - Vipin Sharma - Deepika Amin & Jitendra Kumar