
2026年6月26日公開の「Welcome to the Jungle」は、大人気コメディー映画「Welcome」シリーズの第3作である。これまで「Welcome」(2007年)、「Welcome Back」(2015年)と作られてきており、いずれも大ヒットした。大人数によるドタバタ劇が持ち味である。
前作、前々作ともに監督はアニース・バーズミーだったが、「Welcome to the Jungle」では「Baaghi 2」(2018年/邦題:タイガー・バレット)などのアハマド・カーンにバトンタッチした。プロデューサーは3作通してフィーローズ・ナーディヤードワーラーである。
キャストは、アクシャイ・クマール、スニール・シェッティー、パレーシュ・ラーワル、ディシャー・パータニー、ジャクリーン・フェルナンデス、アルシャド・ワールスィー、ジャッキー・シュロフ、ラヴィーナー・タンダン、ラーラー・ダッター、ファリーダー・ジャラール、ジョニー・リーヴァル、シュレーヤス・タールパデー、トゥシャール・カプール、ラージパール・ヤーダヴ、クルシュナ・アビシェーク、キクー・シャールダー、ダレール・メヘンディー、アーフターブ・シヴダーサーニー、ムケーシュ・ティワーリー、ヤシュパール・シャルマー、キラン・クマール、ザーキル・フサイン、ヴィンドゥー・ダーラー・スィン、ウルヴァシー・ラウテーラー、ヘーマント・パーンデーイ、ブリジェーンドラ・カーラー、フィーローズ・カーン、パンカジ・ディール、プニート・イッサール、スデーシュ・ベリー、ジートゥー・ヴァルマー、ルシャード・ラーナー、ナワーブ・シャーなどである。
また、アクシャラー・スィンがアイテムソング「Ghis Ghis Ghis」にアイテムガール出演している他、「Welcome」と「Welcome Back」に出演していたアニル・カプールとナーナー・パーテーカルが過去の映像の中で一瞬だけ出演している。
大富豪のスィナー(ザーキル・フサイン)は、マネーロンダリングのために200億ルピーを投じてわざとフロップ映画を作ろうとし、部下のドゥベー(ジョニー・リーヴァル)に命じて、デーヴ(ラージパール・ヤーダヴ)とダース(パレーシュ・ラーワル)という無能な監督デュオ、それに片目が見えない撮影監督ナインスク(シュレーヤス・タールパデー)を連れてくる。デーヴとダースは、5年前にスターだったものの没落して現在はボージプリー語映画界で落ちぶれた俳優生活を送っていたラージーヴ・コーリー(アクシャイ・クマール)を主演に起用する。ベニー(トゥシャール・カプール)はラージーヴのマネージャーだった。同時に、デーヴとダースはマフィアのドン、イェーラー・アンナー・シェッティー(スニール・シェッティー)とロミオ(アルシャド・ワールスィー)にも脅され、彼らを起用することになる。ヒロインに起用されたのは、スィナーの娘ジェニー(ジャクリーン・フェルナンデス)と、ラージーヴの元恋人で現在は大女優のナディア・ダールーワーラー(ディシャー・パータニー)であった。
他にも、ランボー(クルシュナ・アビシェーク)とジャンボー(キクー・シャールダー)、ラングワー(ムケーシュ・ティワーリー)とジャグワー(ヤシュパール・シャルマー)、それにバングラー歌手のダレール・メヘンディー(本人)も起用された。
彼らは鬼教官ウスタード・テージャスウィニー(ラーラー・ダッター)の下で10日間の軍事教練を受け、ジャングルへ向かう。そこで順調に撮影が進められたが、政権交代があり、スィナーの邸宅には所得税局の家宅捜索が入り、彼は一文無しになってしまう。スィナーはフロップ映画ではなく大ヒット映画を作らざるをえなくなり、ドゥベーに残り1日で映画を完成するように厳命する。だが、セットは手違いにより爆発専門家ドミニク(ジートゥー・ヴァルマー)によってことごとく爆破されてしまう。そこで撮影班は、国境近くにある本物の村アーザードガンジで残りのシーンを撮影することになる。
アーザードガンジの村人たちは、ムジャーヒディーンのザターラー(ジャッキー・シュロフ)とその一味によって抑圧された生活を送っていた。アーザードガンジに現れたラージーヴたちは救世主と勘違いされる。また、ラージーヴたちは村、村人、そして村に現れたザターラーの手下たちを全てセットと俳優だと勘違いしていた。ラージーヴ、アンナー、ロミオたちはザターラーの手下たちに歯向かって彼らを敗走させる。
とうとうザターラー本人が大量の部下を連れてアーザードガンジに押し寄せた。ラージーヴたちはやっと彼らが本物のムジャーヒディーンであることを知り、一転して恐れおののく。ラージーヴはいったん村から逃げ出そうとするが、やはり放っておけず、引き返す。そして、ザターラーの武器庫から15年間囚われていた4人のインド軍兵士たちを救出する。その中の一人は、ラージーヴの父親ヴィシュワジート(アクシャイ・クマール)であった。
ラージーヴたちは、ザターラーの部下たちを一網打尽にし、アーザードガンジの村人たちをインド領まで連れて行こうとする。だが、村の中心的な女性ゾーヤー(ラヴィーナー・タンダン)の娘ウルヴィーとヴィシュワジートは後に残されてしまう。ザターラーに拉致されそうになったウルヴィーをヴィシュワジートは助け、インド領まで連れて来る。一件落着後、撮影された映像は編集されて映画の形になり、公開されて大ヒットになる。
基本的にはチープなコメディー映画である。いくつももの申したくなるところはあるが、いちいちそれを突っ込んだら負けだ。細かいところを気にせずに楽しむのが正しい鑑賞方法である。無数の登場人物がごちゃごちゃと寸劇を繰り広げるところに「Welcome」シリーズの持ち味があるのだが、「Welcome to the Jungle」では頑張りすぎたのか人数が多すぎて何が何だか分からなくなっており、中にはほとんど出番がないかわいそうな俳優がいたのは否めない。特にバングラー歌手ダレール・メヘンディーの起用は全くの謎である。歌手としては人気者だが、俳優としては素人の域を出ない。それでも、全体としてコメディーの破壊力は強く、2時間45分の上映時間の中で何度も思わず爆笑してしまう。映画としてはお粗末だが、コメディー作品としては成功している。
スィナーという実業家が裏金を儲けすぎて、わざと多額の損失を計上しなければならなくなり、一番無駄遣いできる事業として映画製作が選ばれた、というのが物語の導入である。税金対策のためにわざとフロップ映画を作るというのは実際にあることのようで、たとえば「Chalti Ka Naam Gaadi」(1958年)はそのような目的で作られた映画だとされている。ただし、この映画は大ヒットしてしまい、ますます税金を払わなければならなくなった。
映画をフロップにさせるために集められたのが、いかにも無能な監督や俳優たちである。彼ら自身はこの企画の真の目的を知らされていないので、ヒットを狙って真剣に映画を作ろうとするのだが、自分を主演だと思い込んでいる俳優たちによる主導権争いや手違いによるセットの爆破などのトラブルが起きる。さらに、プロデューサーのスィナーが所得税局の家宅捜索を受けて無一文になったことで映画製作の目的が180度変わってしまう。そして手っ取り早く映画を完成させるために、印パ国境沿いにある村でロケが行われることになるが、そこはムジャーヒディーンの頭領ザターラーに支配された村だった。そんな筋書きである。
「Welcome to the Jungle」の笑いで特徴的だったのは、おかしなしゃべり方をする複数の登場人物によって笑いを取っていたことだった。ジョニー・リーヴァル演じるドゥベーは、興奮すると声が出なくなるという設定であったし、アクシャイ・クマールがダブルロール(一人二役)で演じるヴィシュワジートはザターラーによって舌を損傷されて舌足らずなしゃべり方をしていた。ファリーダー・ジャラール演じるバリー・ビーはモゴモゴしたしゃべり方をしていて何を言っているのかよく分からず、ルシャード・ラーナー演じるゾーヤーの夫は高度なウルドゥー語を話し周囲の人々をチンプンカンプンにさせていた。
起用された俳優たちの中には久しぶりに顔を見た者もいた。ラーラー・ダッターは「Ishq-e-Nadaan」(2023年)以来だ。トゥシャール・カプールとアーフターブ・シヴダーサーニーは「Mastiii 4」(2025年)に出演していたが、かつては一線で活躍していたのを思うと最近はかなり出番が減った。「Welcome to the Jungle」で再起を狙いたいところだ。また、アクシャイ・クマール、スニール・シェッティー、パレーシュ・ラーワルは「Hera Pheri」(2000年)や「Phir Hera Pheri」(2006年)などで一世を風靡したゴールデントリオである。このトリオが最後にそろったのが「De Dana Dan」(2009年)だったため、その復活を喜ぶファンは少なくないだろう。
これだけ大人数の映画なのでヒロインも複数いたが、その中でメインと呼べるのはディシャー・パータニーだろう。ミスコン出身で抜群のスタイルのディシャーは、どちらかといえば女優というよりもアイテムガールまたはグラマー要素担当の起用が多かったが、ここに来てジャクリーン・フェルナンデスを差し置いてメインヒロインの座を射止めており、運気が上がっている。既に30代半ばではあるが、作品に恵まれれば、ヒロイン女優への脱却を図れる位置にいる。今後の躍進に期待したい。
俳優と同じく、音楽も複数の音楽監督による楽曲の寄せ集めになっている。アクシャイ・クマールを中心として派手さのあるコメディー映画なので、アップテンポのダンスナンバーが相性がいい。過去の「Welcome」シリーズへのオマージュがいくつかある。タイトル曲はほぼそのままだ。「Ucha Lamba Kad Forever」は「Welcome」のヒット曲のリミックスである。その中で注目したいのがタルウィンダルとNDSによる「Kyun」だ。メロディーや歌い方もユニークなのだが、映画での使われ方も変わっていた。インターミッションに差し挟まれていたのである。アクシャイ・クマール曰く、せっかく作ったが本編で使い所がなかったためにインターミッションで使うことにしたとのことだった。今まで、本編と関連の薄い楽曲はオープニングやエンディングで使われることが常だったが、今後はインターミッションに入ることも増えてくるかもしれない。
「Welcome to the Jungle」は、100カロールのヒット基準を漏れなく突破してきたコメディー映画「Welcome」シリーズの最新作であり、やはり100カロールを超える大ヒットになっている。作りはチープだが、その分難しいことを考える必要がなく、単に笑いの連続に身を委ねるだけでよくて、束の間の気分転換を求める層にはうってつけの作品である。この規模の娯楽作がコンスタントに公開されそつなく成功することが映画産業の発展のためにはもっとも重要である。
