インターミッション

 伝統的には、インド映画の上映時間は2時間半前後ある。現代のヒンディー語映画では、そこまで長い映画はだいぶ少なくなったが、南インド映画では依然として2時間半が標準のままだ。

 インド人でもさすがに3時間ぶっ通しで映画を観るのはつらいのだろう。映画の途中、上映時間の半分くらいで、「インターミッション(intermission)」とか「インターバル(interval)」と呼ばれる中休みが入る。雰囲気を出すために、時々わざわざヒンディー語で「मध्यांतरマディヤーンタル」と言ったり、ウルドゥー語的に「वक़्फ़ाワクファー」と言ったりもする。一般的には5分から10分くらいの休憩となる。

 この時間、インド人観客は、トイレに行ったり、飲食物を買いに行ったりする。また、これまでの展開、そしてこれからの展望について、周りの人とペチャクチャしゃべったりする。

 映画館にとってインターミッションの時間は、追加の収入源である飲食物の売り上げが期待できるため、とても重要だ。インド映画には元々インターミッションの時間が組み込まれているが、上映時間が2時間ほどしかない欧米の映画が上映されるときも、真ん中辺りでブツリと切られ、無理矢理インターミッションが差し挟まれる。とにかく最初から最後まで切れ目なしに映画に没頭したい人にはすこぶる評判が悪いが、是非とも飲食物を買って欲しい映画館側の切実な事情もある。チケットの売り上げだけでは映画館の経営は難しいのである。

 また、インドの映画館で映画を鑑賞する上で、インターミッションの存在は、楽しみを増幅する装置として働いている。インドでは、家族や友人と連れ立って映画を観に行くのが常で、中休みの時間があると、その間に今観ている映画について連れ合いと思い思いのことを話し合う機会に恵まれる。これが楽しいのである。

 映画を作る側も、インド映画の土着の習慣と化したインターミッションの有効活用を心掛けている。インターミッションの直前にどんでん返しを持って来る映画はとても多く、インターミッション時に話し合う格好のネタを観客に提供してくれている。

 日本でも大ヒットしたヒンディー語映画「3 Idiots」(2009年/邦題:きっと、うまくいく)も、インターミッションを最大限に活用した映画の好例だ。前半の中心人物であり、アーミル・カーンが演じる主人公ランチョーが、実は偽物だったことが分かる衝撃の瞬間、間髪入れずにインターミッションに突入し、観客は映画館の客席に放り出される。「3 Idiots」は、インド人の誰もが、最も優れたインド映画のひとつに挙げる作品だが、インターミッションの使い方も非常に巧いのである。

 ちなみに、日本での公開時や、DVD販売やネット配信の際には、インターミッションがカットされていることがよくある。映画の中頃で、映像や音楽が飛んだり、同じ映像が繰り返されたりした場合は、映画館上映バージョンでその間に入っていたインターミッションがカットされてしまったのだと理解して欲しい。

 個人的には、インド映画を上映するときには、必ずインターミッションの時間も確保すべきだと考えている。それを含めて「インド映画体験」だからだ。