続編

 米国映画界などではヒット映画の続編、いわゆる「~2」が作られるのはかなり前から一般的な慣習だったが、意外なことに、ヒンディー語映画界では長らく特定の映画の続編を作るという発想がなかた。

 ヒンディー語映画界で初めて作られた続編映画は、「Munna Bhai M.B.B.S.」(2003年)の続編「Lage Raho Munna Bhai」(2006年)であった。「~2」と付く映画となると、「Dhoom」(2004年)の続編「Dhoom: 2」(2006年)になる。どちらにしろ、2006年頃から続編映画の文化が根付いていったといえる。今ではヒンディー語映画界でも続編が作られるのは普通になっている。

Munna Bhai MBBS

 ただ、ヒンディー語映画界における続編映画の取り扱い方は特殊である。ここでは、続編映画の類型について論じてみたい。

数部作

 まずもっとも分かりやすいのが、当初から数部構成で作られている、壮大な規模の映画である。ハリウッド映画でいえば、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズや「スター・ウォーズ」シリーズなどの作り方だ。

 ヒンディー語映画において、初めて数部構成で作られた映画は、ラーム・ゴーパール・ヴァルマー監督の「Rakht Charitra」シリーズであろう。まずは2012年10月に第1作「Rakht Charitra」(2010年)が公開され、2ヵ月後の同年12月に第2作「Rakht Charitra 2」(2010年)が公開された。当初から2部構成だったのは確実で、それを2つに分けて時間差で公開した形である。

Rakht Charitra

 おそらくそれを受けて、アヌラーグ・カシヤプ監督は「Gangs of Wasseypur Part 1」(2012年)と「Gangs of Wasseypur Part 2」(2012年)を作った。2部構成の映画で、やはり2ヵ月の時差を設けて第1部と第2部を立て続けに公開した。

Gangs of Wasseypur

 日本でも大ヒットしたテルグ語映画「Baahubali: The Beginning」(2015年/邦題:バーフバリ 伝説誕生)と「Baahubali 2: The Conclusion」(2017年/邦題:バーフバリ 王の凱旋)は、もっとも大規模な数部構成の映画である。公開時差は2年あるが、当初から数部構成の構想の下に作られていた。

Baahubali

 構想段階から複数の部に分けて作られたこのような映画において、続編に前作とのつながりがあるのは当然であり、続編映画としてはもっとも単純な構造となる。

ストーリーにつながりがある続編

 続編映画に前作からのストーリーのつながりがあるのは当然だと思う人もいるかもしれないが、わざわざこういう分類が必要になるのは、インド映画界でそれが常識ではないからである。ただ、まずは一般に続編映画と聞いた場合に思い浮かべるであろう、ストーリーにつながるのある続編について説明したい。

 このような種類の続編映画の一般的な作りは、前作の後日譚である。前作で何らかの事件が起き、それが解決されたが、続編ではまた新しい問題が起き、同じ主人公が再びその問題に立ち向かうという内容である。

 「Dhoom: 2」(2006年)はストーリー上のつながりのある続編映画だった。前作の内容を受けて続編が作られ、前作の登場人物がほぼそのまま続編にも登場した。同じように「Dhoom: 3」(2013年/邦題:チェイス!)が作られている。

Dhoom

 「Dabangg」シリーズもストーリーにつながりがあるシリーズである。「Dabangg」(2010年/邦題:ダバング 大胆不敵)の後日譚が「Dabangg 2」(2012年)であり、前日譚が「Dabangg 3」(2019年)である。

Dabangg

 「Krrish」シリーズは、題名から関連性を見出しにくいのだが、第1作が「Koi… Mil Gaya」(2003年)、第2作が「Krrish」(2006年)、第3作が「Krrish 3」(2013年)である。きちんとストーリー上のつながりがあり、キャラクターも共通していて、俳優にも一貫性がある。

Koi... Mil Gaya

 ヒット映画の興奮が冷めやらない内に続編が作られることが大半なのだが、大昔の映画の続編が突発的に作られることもある。「Sadak 2」(2020年)は、ほぼ30年前に公開された映画「Sadak」(1991年)の続編であり、ストーリーにもキャラクターにも関連性がある。

Sadak 2

 スピンアウトという形で作られた、部分的な続編の例も登場している。「Naam Shabana」(2017年)は、「Baby」(2015年)に登場したシャバーナー・カーンという女性エージェントを主人公にした映画で、スピンアウト映画の一例である。シャバーナーを演じるのもタープスィー・パンヌーで共通した。

Naam Shabana

キャラクターのみにつながりがある続編

 ヒンディー語映画で多いのは、前作からストーリー上のつながりがないものの、キャラクターが共通している続編映画である。前作までの内容は一旦リセットして、キャラクターだけを再利用して別シチュエーションで続編が作られる。そのキャラクターを演じる俳優も共通していることがほとんどである。

 例えば「Munna Bhai M.B.B.S.」で登場して人気を博したコンビ、ムンナー・バーイーとサーキットは、続編「Lage Raho Munna Bhai」でもそのまま登場した。演じる俳優も同じサンジャイ・ダットとアルシャド・ワールスィーである。ただ、「Munna Bhai M.B.B.S.」と「Lage Raho Munna Bhai」のストーリーには全く連続性がない。ヒロインも交代している。

Lage Raho Munna Bhai

 「Golmaal」シリーズも4作が作られているが、ストーリー上の連続性は全くないシリーズである。主人公は主に4~5人いるのだが、若干の交代をしながら、大部分は受け継がれている。アジャイ・デーヴガン演じるゴーパール、アルシャド・ワールスィー演じるマーダヴが核となっており、トゥシャール・カプール演じるラッキー、シャルマン・ジョーシー演じるラクシュマン、シュレーヤス・タルパデー演じるもう一人のラクシュマン、クナール・ケームー演じる3人目のラクシュマンが入れ替わり主人公を務め、「Golmaal」(2006年)、「Golmaal Returns」(2008年)、「Golmaal 3」(2010年)、「Golmaal Again!!!」(2017年)と作られてきている。

Golmaal

全く関連性のない続編

 ヒンディー語映画界で少なくないのが、前作とストーリー上にもキャラクター上にも全く関連性がないにも関わらず、続編を名乗っているシリーズである。言い換えれば、単に題名に「~2」などと付いているだけで、実質的には前作と全く別の映画になっている。前作の続きを期待して映画を観てみると肩透かしを喰らうので注意が必要な作品群だ。

 例えば「Murder」シリーズは「Murder」(2004年)、「Murder 2」(2011年)、「Murder 3」(2013年)と3作が作られているが、これらには相互に何の関連性もない。ストーリー上のつながりもなければ、キャラクター上のつながりもない。一貫して出演している俳優もいない。単に題名が「Murder」なだけである。敢えていうならば、エロティックなサスペンス映画というジャンルのみが共通しており、観客もそれを期待して観ることになる。

 ヒンディー語映画界にホラー映画というジャンルを定着させた立役者である「Raaz」シリーズも、「Raaz」(2002年)、「Raaz: The Mystery Continues」(2009年)、「Raaz 3」(2012年)、「Raaz: Reboot」(2016年)と4作が作られているが、相互に関係はない。単にホラー映画というジャンルが共通しているだけで、敢えていえば「秘密」という意味の題名が示す通り、何らかの秘密が物語のキーとなっていることが共通しているくらいだ。

Raaz

その他

 ヒンディー語映画界では、他国の映画や南インド映画のリメイクが多い一方で、過去のヒンディー語映画のリメイクもよく行われる。その際、過去のヒット作のリメイクが、いかにもその続編のような顔をして「~2」として公開されることがある。「Aashiqui 2」(2013年)は「Aashiqui」(1990年)のリメイクであるし、「Judwaa 2」(2017年)は「Judwaa」(1997年)のリメイクである。

Aashiqui 2

 一時期、アクシャイ・クマール主演の映画が「Khiladi(プレーヤー)」と題されることが多かった。始まりはアッバース・マスターン監督の「Khiladi」(1992年)だが、この映画が大ヒットしたことで、第1作とは無関係なプロデューサーや監督が、アクシャイ・クマール主演映画の題名に片っ端から「Khiladi」を加えるようになった。「Main Khiladi Tu Anari」(1994年)、「Sabse Bada Khiladi」(1995年)、「Khiladiyon Ka Khiladi」(1996年)、「Mr. and Mrs. Khiladi」(1997年)、「International Khiladi」(1999年)、「Khiladi 420」(2000年)、そして「Khiladi 786」(2012年)などである。これらは一般に「Khiladi」シリーズと呼ばれているものの、相互に何の関連性もないため、純粋な意味でのシリーズではない。

Khiladi

 まだ続編の製作が一般的でなかった時代に、「Waisa Bhi Hota Hai Part II」(2003年)という変な題名の映画があった。何が変かといえば、「~Part II」とのことなので、そのパート1があるのかと思ってしまうのだが、「Waisa Bhi Hota Hai」もしくは「Waisa Bhi Hota Hai Part I」という映画は存在しない。奇をてらって、いきなり「Part II」という題名の映画を作ってしまっただけである。

Waisa Bhi Hota Hai Part II

 映画の最後に「続編に続く」と表示されたにもかかわらず続編が作られなかった映画もある。「Agyaat」(2009年)である。ジャングルに迷い込んだ一団が次々に謎の生物に襲われて殺されるが、何に殺されているのか、この映画の中では明かされず、その謎解きは続編に持ち越される。だが、「Agyaat」はフロップに終わり、続編が企画されることは二度となかった。よって、「Agyaat」の謎は永遠に謎になってしまった。ちなみに「Agyaat」とは「未知の」という意味である。