Golmaal Returns

3.0

 長らくインドに住み、インド映画を見続けて来ているので、感性がかなりインド人に近付いたと我ながら思う。大体僕が面白いと思う映画はインド人にも受けるし、インド人に受けた映画は僕にも面白く感じられるのが常である。だが、まだ完全にインド人になりきれていない部分も残っており、時々ズレも生じる。僕があまり高く評価しなかった映画が意外なヒットを記録することも時々あるのである。その一例が、2006年公開の「Golmaal」というコメディー映画であった。当時の日記を見ると、「面白いことはないが、最高のコメディー映画ではない」とまとめてある。だが、この映画はインド人の笑いの壺に見事にはまり、大ヒットを記録した。そしてその続編まで制作されてしまったのである。それが今年のディーワーリー・シーズンに投入されたヒンディー語映画の一本、「Golmaal Returns」である。2008年10月29日に公開された。

 とは言え、「Golmaal Returns」は、「Golmaal」のストーリーとは全く別になっている。単に主要登場人物の設定が共通しているだけだ。これは、「Munna Bhai」シリーズの続編の作り方と同じだ。また、キャストに多少変更がある。前作では、主人公4人組を演じていたのはアジャイ・デーヴガン、アルシャド・ワールスィー、トゥシャール・カプール、シャルマン・ジョーシーであった。前者三人は今作でも出演しているが、シャルマン・ジョーシーだけは外れ、代わりにシュレーヤス・タルパデーがシャルマンの演じたラッキーを演じている。これは撮影スケジュールの都合が理由で、深い意味はないようだ。また、前作のヒロインはリーミー・セーンであったが、本作ではリーミーは出演せず、代わりに4人の女優がヒロインを演じている。

監督:ローヒト・シェッティー
制作:シュリー・アシュタヴィナーヤク・シネヴィション
音楽:プリータム
歌詞:サミール
出演:アジャイ・デーヴガン、カリーナ―・カプール、アルシャド・ワールスィー、トゥシャール・カプール、シュレーヤス・タルパデー、セリナ・ジェートリー、アムリター・アローラー、アンジャナー・スカーニー、サンジャイ・ミシュラー、シャラト・サクセーナー、ムラリー・シャルマー、ヴラジェーシュ・ヒルジー
備考:PVRプリヤーで鑑賞。満席。

 ゴーパール(アジャイ・デーヴガン)は、ゴアの水産輸出会社ゴールデン・フィッシャリーズの管理職であった。だが、最近ゴールデン・フィッシャリーズが魚介類の他に麻薬の密輸も行っているとの情報が流れ、警察の捜査の対象となった。マーダヴ・スィン・ガーイー警視監(アルシャド・ワールスィー)がゴールデン・フィッシャリーズの捜査にやって来る。だが、ゴーパールは令状の不備を見つけてマーダヴを追い返す。このときからゴーパールとマーダヴの間に火花が飛び散るようになった。しかし、会長(シャラト・サクセーナー)は事態を重く見て、従業員を一新することを決める。新規雇用の仕事は、社長(ムラリー・シャルマー)からゴーパールへ、ゴーパールから部下のスボード・メヘラー(サンジャイ・ミシュラー)へと引き渡された。

 ところで、ゴーパールは既婚者であった。妻のエークター(カリーナ―・カプール)はテレビドラマに影響され、ゴーパールの行動をいちいち疑っていた。ゴーパールの家には、妹のイーシャー(アムリター・アローラー)と、エークターの弟で唖者のラッキー(トゥシャール・カプール)が住んでいた。ラッキーは美容師で、勤務先の美容院の近くでよく見掛けるデイジー(アンジャナー・スカーニー)という女の子に恋していたが、自分が唖者であることを知られると嫌われると思い、言い寄れずにいた。また、イーシャーにはボーイフレンドがおり、ゴーパールは一度家に連れて来るように言うが、それは天敵のマーダヴであった。ゴーパールとマーダヴの仲はますます険悪になる。

 ある晩、仕事を終えたゴーパールが家に向かっていると、道端で一人の女性がチンピラにからまれているのを発見する。ゴーパールはその女性を助けるが、チンピラとの格闘中に自動車が壊されてしまう。おまけに雨まで降って来そうであった。仕方がないのでゴーパールは彼女と共に、波止場に留まっている友人のボートで一夜を明かすことにする。

 その晩、スボードが遺体で発見される。しかし、まだ身元が分からなかった。また、エークターはゴーパールが深夜になっても帰って来ないので、てっきり彼が死んでしまったと勘違いする。だが、翌朝ゴーパールがひょっこり帰って来ると、今度は彼を疑い出す。ゴーパールは、女性と一夜を明かしたと言い出せず、友人のアンソニー・ゴンザルベスの家にいたと嘘を付く。エークターはそれを信用できず、ゴーパールが適当に口にしたアンソニーの住所に手紙を送る。それを見たラッキーはゴーパールに報告する。困ったゴーパールは、就職の面接に来た若者ラクシュマン・プラサード・アプテー(シュレーヤス・タルパデー)をアンソニーに仕立て上げ、エークターに引き合わせる。アンソニーと会ったことで、エークターもようやくゴーパールを信用する。

 この活躍により、求職中だったラクシュマンは晴れて採用となった。彼が仕事を探していたのは、ガールフレンドのミーラー(セリナ・ジェートリー)と結婚するためだった。仕事が見つかったラクシュマンはそれをミーラーに報告し、ミーラーはそれを両親に報告した。ミーラーの両親は二人の結婚を認める。

 ところがエークターが送った手紙はたまたまアンソニー(ヴラジェーシュ・ヒジュリー)に届いてしまう。アンソニーの妻はその手紙を見て夫が不倫していると勘違いし、エークターの家に乗り込む。ゴーパール、ラッキー、ラクシュマンは何とか彼女を追い返すが、今度はアンソニー自身もやって来る。3人はアンソニーに電流攻撃を行い、撃退する。

 ラッキーはデイジーに何とか言い寄ろうとするが、ゴーパールとラクシュマンは「お前には無理だ」と笑う。ところがデイジーの方もまんざらでもなく、ラッキーに気があるようであった。話している内にラッキーが唖者であることがばれそうになるが、それよりも先に、実はデイジーは聾者であることが発覚する。

 そうこうしている内に遺体の身元が判明し、ゴーパールが容疑者として浮上する。スボードはゴーパールとよく口論していたし、スボードが殺された晩にゴーパールは家に帰って来なかった。ただ、アンソニーの家に行っていたという嘘のアリバイがあったため、ゴーパールはラクシュマンに言って、アンソニーの振りをして証言をさせ、面倒を避けようとする。ところがエークターに、ラクシュマンが演じていたアンソニーの正体がばれてしまう。ラクシュマンがアンソニーの振りをして証言をしたことも警察にばれてしまい、ラクシュマンはミーラーの両親の目の前でマーダヴに逮捕されてしまう。また、ゴーパールはエークターに家を追い出されてしまう。

 ゴーパールは、スボードが殺された晩に一人の女性と一緒だったとマーダヴに話す。マーダヴはゴーパールらに3日間の猶予を与え、それまでにその女性を証人として連れて来れば無実と認めると言う。ゴーパール、ラッキー、ラクシュマンの三人はその女性を必死に探す。だが、見つかりそうもないので、三人はムンニーという売春婦に大金を払って嘘の証言をさせる計画を立てる。ところがマーダヴを連れて来るとムンニーは姿を消してしまう。しかもムンニーは、危険な取り立て人ワスーリー(ムケーシュ・ティワーリー)の愛人であった。

 遂にゴーパールは逮捕されてしまった。一方、ラクシュマンは必死でミーラーに言い訳をしていた。もはや嘘を突き通すこともできなくなったため、ラクシュマンは真実を話す。だが、その話を聞いたミーラーは、その晩にゴーパールと一緒にいたのは自分だと言い出す。ミーラーは警察へ行って証言をしようとする。ところがそこへワスーリーが現れ、ムンニーはどこだとラクシュマンに詰め寄る。そしてミーラーを誘拐して去って行ってしまう。

 仕方なくラクシュマンとラッキーはマーダヴのところへ行って事情を説明する。だが、既にゴーパールは釈放された後だった。上司が彼を引き取りに来たのだった。だが、彼らが向かった先はラヴァーズ・ポイントであった。マーダヴ、ラッキー、ラクシュマンはゴーパールたちの後を追う。また、エークター、イーシャー、ワスーリーもラヴァーズ・ポイントに向かう。

 ラヴァーズ・ポイントに着いた上司は、スボードを殺したのは自分だと打ち明け、しかもゴーパールを犯人に仕立て上げ、彼に自殺をさせようと強制した。しかしそこへマーダヴらが駆けつける。大混乱の後、結局ゴーパールの無実は晴れ、一件落着となった。

 後日談。会長は、社長の逮捕を受けて、新人事を発表した。ゴーパールはてっきり自分が社長に就任するかと思ったが、社長になったのは意外や意外、ラッキーであった。ラッキーの恋人のデイジーは、実は社長の娘だったのである。

 はっきり言って前作以上にベタベタのチープなギャグ満載なのだが、それが開き直りと言えるぐらい徹底しているため、途中からはついついそのごり押しに負けて笑い出してしまう、そんな作品であった。やはりインド人の笑いの壺にピッタリはまり込んでいたようで、映画館は大変な盛り上がりだった。この映画に品質はない、だがとにかく面白い、つまり「品質破壊の面白さ」と評価したい。

 「Golmaal」シリーズ成功の理由の大部分は、安っぽい笑いに徹する爽快な開き直りだと思うが、もちろん主人公4人組のコンビも成功に一役買っているのは確実である。一見すると全く異色の取り合わせで、スクリーン上の相性もよくないのだが、それが「Golmaal」の枠組みの中で化合反応すると、とてつもない爆笑パワーを発するのである。今回シャルマン・ジョーシーの代わりにシュレーヤス・タルパデーが入ったが、シュレーヤスはシュレーヤスで独自のコメディーセンスを持っており、このメンバーチェンジは決してマイナスになっていなかった。むしろ成功と言える。

 インドには身体障害者をギャグのネタにする悪い風習が昔からあり、この映画でも唖者のラッキーが特に笑いの渦の中心になっていた。言葉がしゃべれないラッキーが引き起こすミスコミュニケーションは前作でもネタになっていたが、今回はさらにパワーアップし、彼のジェスチャーやうめき声や行動は観客を大爆笑させていた。しかし、それらは見ていて決して気持ちのいい種類の笑いではなかった。

 よって、今回4人組の中でショーをさらっていたのは、シュレーヤス・タルパデーとトゥシャール・カプールの二人である。前作の中心だったアジャイ・デーヴガンとアルシャド・ワールスィーは、今回はどちらかというと後衛という感じだった。

 本作では4人のヒロインが登場するが、メインはもちろんカリーナ―・カプールである。しかし、この映画でのヒロインは基本的に飾りに過ぎず、カリーナーも十分に魅力を発揮できていなかった。

 音楽はプリータム。テーマソングのメロディーは前作を踏襲している。「Golmaal Returns」の中でもっとも印象的なのは「Meow」であろう。この曲はエンディングのスタッフロールで流れるが、猫に扮したカリーナーを中心にしたダンスナンバーになっている。

 「Golmaal Returns」は、一言で言ってしまえばB級コメディー映画であるが、B級なりに徹底して分かりやすいチープなギャグを「これでもか!」と詰め込んでおり、勢いのあるコメディー映画に仕上がっている。誠実なB級コメディーと言えよう。

 ところで、今年のディーワーリー・シーズンには4本の映画が公開されたが、それらを敢えて必見順に並べるとしたら以下の通りになる。「Fashion」>「Roadside Romeo」>「Golmaal Returns」>「Heroes」。「Fashion」は今年を代表する映画の一本となるはずで外せない。3DCGアニメーション映画「Roadside Romeo」もマイルストーン的映画になる可能性大で、基本的には子供向けながら、見ておいて損はないだろう。「Golmaal Returns」は、安っぽいコメディー映画の好きな人は是非。しかも、これは今年のヒット作の一本になるであろう。だが、万人向けではない。「Heros」は最後になってしまったが、それでも観る価値は十分ある。ディーワーリー映画にしては派手さがないので、それで損をしている。