Border 2

4.0
Border 2
「Border 2」

 1971年の第3次印パ戦争初期において西部戦線で発生したローンゲーワーラーの戦いを題材にした「Border」(1997年)は、インド映画史に残る戦争映画の傑作として現代まで語り継がれている。監督のJPダッターは戦争映画を得意とするが、正直いってその戦闘描写は大味で、軍事専門家的な緻密さや巨匠的な壮大さがあるわけではない。彼が長けているのは軍人情緒の表現だ。前線に駐屯する軍人たちの故郷や家族を思う気持ちや戦友たちの友情を描かせたら右に出る者はいない。「Border」の挿入歌「Sandese Aate Hai(手紙が来る)」は、愛する人からの手紙を待ちわびる兵士たちの気持ちを切なく歌った名曲中の名曲だ。

 2026年1月23日、共和国記念日に合わせて公開された「Border 2」は、「Border」の続編である。前作に根強い人気があるため、その続編もヒットが期待され、2026年の最初の話題作になっていた。ただ、今回も第3次印パ戦争が主題である。プロデューサーはJPダッターだが、監督は「Kesari」(2019年/邦題:KESARI ケサリ 21人の勇者たち)のアヌラーグ・スィンに交代している。

 前作ではアヌ・マリクが作曲をしたが、本作では「Border」の人気曲をミトゥンがリミックスして再利用するという反則技を使っている。他に、サチェート=パランパラー、ヴィシャール・ミシュラー、グルモーも作曲している。また、前作の作詞はジャーヴェード・アクタルで、本作ではマノージ・ムンタシル、カウサル・ムニール、クマール、アヌラーグ・スィンが作詞をしている。

 前作の主演はサニー・デーオールだった。今作でもサニーが主演の一人である。ということは前作で彼が演じたパンジャーブ連隊第23大隊の司令官クルディープ・スィン・チャーンドプリー少佐役を再演するのかと思いきや、彼が演じるのはスィク連隊第6大隊の司令官ファテー・スィン・カレール中佐役であり、全くの別人である。

 他に、ヴァルン・ダワン、ディルジート・ドーサーンジ、アハーン・シェッティー、モーナー・スィン、ソーナム・バージワー、メーダー・ラーナー、アーンニャー・スィンなどが出演している。また、前作に出演したスニール・シェッティー、アクシャイ・カンナー、プニート・イッサール、スデーシュ・ベリーが一瞬だけカメオ出演している。ちなみに、アハーンはスニールの息子である。

 「Border」と同じく「Border 2」が題材にするのも第3次印パ戦争の西部戦線である。第3次印パ戦争は東パーキスターンを主戦場とし、バングラデシュの独立につながったため、どうしても東部戦線に注目しがちだが、インド西部の国境地帯でも戦いが行われていた。また、既に「The Ghazi Attack」(2017年)で描かれたように若干の海戦もあった。「Border 2」では、シュリーナガルでの空戦やアラビア海における海戦も描かれ、陸戦のみだった前作に比べて領域が陸海空に広がっている。陸戦ではバサンタルの戦いにも触れられるが、これはちょうど直前に公開された戦車映画「Ikkis」(2026年)と重なる。

 インド陸軍のホーシヤール・スィン・ダヒヤー少佐(ヴァルン・ダワン)、空軍のニルマル・ジート・スィン・シェーコーン大尉(ディルジート・ドーサーンジ)、海軍のマヘーンドラ・スィン・ラーワト少佐(アハーン・シェッティー)は、同じ士官学校でファテー・スィン・カレール中佐(サニー・デーオール)から学んだ親友であった。

 ファテー中佐は1965年の第2次印パ戦争で息子のアンガド・スィン大尉を亡くしており、家では妻のスィミー(モーナー・スィン)が彼の帰りを待っていた。ホーシヤール少佐は父親を1947-48年の第1次印パ戦争で亡くしており、ダンワンティー(メーダー・ラーナー)と結婚していた。ニルマル大尉はマンジート(ソーナム・バージワー)と結婚し、マヘーンドラ少佐には妻スダー(アーンニャー・スィン)との間に一人の娘がいた。

 1971年12月、東パーキスターンで両国の軍事行動が活発化する中、西部戦線でも警戒が高まっていた。ファテー中佐はムナーワル行きを命じられ、ホーシヤール少佐はパターンコート近くに駐屯し、ニルマルはシュリーナガルの空軍基地に駐屯し、マヘーンドラ少佐の乗ったフリゲート艦はアラビア海にいた。パーキスターン軍はシュリーナガル、パターンコート、そしてアラビア海で攻勢に出て、インド軍も反撃を開始した。

 ファテー中佐は敵に奪われた村を奪還し、要塞化する。そして戦車部隊の攻撃に耐え、逆に一網打尽にする。ホーシヤール少佐は越境攻撃に名乗り出て、敵の塹壕奪還に貢献する。ニルマル大尉は空襲に来た敵の戦闘機群を一人で迎撃するも戦死する。マヘーンドラ少佐は魚雷を受けながらも敵の潜水艦を撃沈するが、沈みゆく艦船と共に海に消える。

 ファテー中佐はスィミーの待つ自宅に帰り、ホーシヤール少佐はニルマル大尉やマヘーンドラ少佐の家を訪れ弔問する。

 「Border 2」も前作と同じく正真正銘の戦争映画だ。特に後半は陸海空の戦闘シーンが続く。監督は交代しているものの、JPダッター印の大味な戦闘描写は依然として健在であり、それぞれの戦闘に特筆すべきものはあまりない。空戦ならば近年は「Sky Force」(2025年)などの戦闘機映画がいくつも作られているし、海戦も前述の「The Ghazi Attack」などがあり、目新しさはない。多方面展開されているためにそれぞれの戦闘に割かれる時間は限られ、迫真性や再現性でも劣る。陸戦においても、やぶれかぶれの突撃主体の戦い方ばかりで、この部分だけを切り取ったら、戦争映画にしてはお粗末という評価を免れないだろう。

 だが、「Border 2」の真価は戦闘シーンにはなく、兵士一人一人の心情描写にある。メインキャラクターは、サニー・デーオールの演じるファテー中佐、ヴァルン・ダワンの演じるホーシヤール少佐、ディルジート・ドーサーンジの演じるニルマル大尉、そしてアハーン・シェッティーの演じるマヘーンドラ少佐であるが、それ以外にも脇役の兵士たちの家族などにも焦点が合わせられる時間帯があり、さまざまな思いを胸に秘めながら兵士たちが前線で国を守っている様子が生き生きと描かれる。

 意外に長めに描かれていたのが、ホーシヤール少佐、ニルマル大尉、マヘーンドラ少佐の士官学校時代だ。彼らの所属は陸海空と分かれていたが、三軍の士官を包括的に養成する士官学校で同期となり、友情を育む。しかも、彼らの教官がファテー中佐であった。ファテー中佐は士官たちに、兵士にとって一番大切なのは「愛」だと教える。そして、戦友たちを「兄弟」と考え、「兄弟愛」のために戦うように訴える。その教えの中で、特にホーシヤール少佐、ニルマル大尉、マヘーンドラ少佐は終生の友となったのだった。やがて彼らは士官学校を卒業し、指揮官の立場でそれぞれの持ち場に散る。どちらかといえばニルマル大尉は一匹狼的な行動をしていたし、マヘーンドラ少佐と周囲の人間関係も不透明だったが、陸軍のホーシヤール少佐は現場の兵士たちとホモソーシャルな関係を結び、生死を共にする絆を築き上げる。「Border 2」がまずこだわっていたのが兵士同士の友情であった。

 次に優れた筆致と共に描かれていたのが家族と別離だ。三人とも結婚し、それぞれ家庭を持っていたため、家で彼らの帰りを待つ妻がいた。もちろん、父親や母親、そして兄弟がいる者もいた。戦争が勃発すると、休暇で帰省していた兵士たちも呼び戻される。軍人を持つ家庭では、これが今生の別れになるかもしれないということを重々に承知している。母として、妻として、引き留めたい気持ちはある。だが、兵士の家族がそういうことをしたら、誰も国を守る者がいなくなってしまう。兵士は国境で戦うが、兵士の家族も家で葛藤と戦っている。戦場に赴く兵士たちを見送る家族の心情が挿入歌「Jaate Hue Lamhon(別れの瞬間)」と共に丁寧に描かれていた。また、前作と同様に、家族から届く手紙もフォーカスされており、前作の名曲「Sandese Aate Hai」をリミックスし拡張された「Ghar Kab Aaoge(家にいつ帰る?)」でもってじっくりと描かれる。この辺りは中盤の佳境であり、「Border 2」でもっとも心を締め付けられる時間帯である。

 その後は長い戦闘シーンの連続となり、それが目的でこの映画を観る人もいるのだろう。だが、最後にグッと引き締まっていたのは、戦死者の遺体が自宅に届く場面があったからだ。メインキャラクターの中で戦争を生き抜いたのはファテー中佐とホーシヤール少佐のみで、ニルマル大尉とマヘーンドラ少佐はそれぞれ戦果を上げながらも戦死してしまう。家族は悲しみを噛み締めながらも胸を張り、国を守るために命を捧げた兵士たちに敬意を払う。

 もうひとつ叙情的に描かれていたのがファテー中佐の内面的戦いである。彼は、自分を追って軍人になった息子を第2次印パ戦争で亡くしていた。致命傷を負った息子から掛かって来た電話を彼は取ることができなかった。なぜなら彼はそのとき、グルドワーラーに参拝していたからだった。ファテー中佐はそれ以来、神様が信じられなくなり、グルドワーラーへ行くのをやめてしまっていた。だが、今回の戦いの中でようやく彼は息子の死を受け入れられるようになり、戦争後は妻と共にグルドワーラーに参拝する。そこで彼は、戦死した仲間たちの姿を見るのである。

 「Border 2」のこの最後は、「マハーバーラタ」の最後と酷似している。「マハーバーラタ」でも最後まで生き残ったユディシュティラはヒマーラヤ山脈の山頂で、死んで天国に上った兄弟たちを見るのである。そしてなんと「Border 2」では、前作で死んだバイローン・スィン大尉(スニール・シェッティー)、ダラムヴィール・スィン少尉(アクシャイ・カンナー)、マトゥラー・ダース准尉(スデーシュ・ベリー)、ラタン・スィン曹長(プニート・イッサール)まで登場する。繰り返しになるが、前作でサニー・デーオールが演じたクルディープ少佐と本作で彼が演じたファテー中佐は別人である。ファテー中佐がバイローン少佐、ダラムヴィール少尉、マトゥラー准尉、ラタン曹長と知り合いだったというエピソードも語られていない。「Border」と「Border 2」を無理やりひとつのユニバースに押し込めているような強引さも感じたが、ファンサービスと捉えておけばいいだろう。

 「Border」はオールスターキャストの映画だったが、スターパワーという面では「Border 2」の方が控え目だ。長らく低迷していたものの、「Gadar 2」(2023年)で奇跡の復活を果たしたサニー・でオールと、「Bhediya」(2022年)を当てて何とかスターとしての命脈を保ったヴァルン・ダワンがスターキャストといえ、ディルジート・ドーサーンジも歌手として、パンジャービー語映画のスターとして評価できるが、アハーン・シェッティーはまだ若いし、ヒロインに全く中堅以上のスターがいない。

 「Border 2」は、前線の兵士たちの心情描写に成功した「Border」の作りを引き継ぎ、領域を陸海空に広げてスケールアップした続編戦争映画である。愛国主義的な映画であるため、インド人と愛国心を共有していない者には響かないところもあるかもしれないが、兵士たちの生き様やその家族の葛藤をエモーショナルに描き出すことには前作以上に成功しており、感動的な作品に仕上がっている。ただ、上映時間は3時間20分あるが、内容が良かったために観客を集め、大ヒットとなった。インド製戦争映画の完成形といえる。