Awarapan 2

3.0
Awarapan 2
「Awarapan 2」

 2026年8月14日、独立記念日週に公開の「Awarapan 2」は、題名が示す通り、「Awarapan」(2007年)の続編である。キャラおよびストーリー上のつながりのある続編であり、本作の鑑賞の前に前作を押さえておくのが好ましい。特異なのは、前作から約20年という長い歳月を経た後に作られた続編という点と、前作がヒットしなかったのに続編が作られたという点である。「Awarapan」は興行的に失敗したのだが、OTT配信などで後から再評価され、カルト的人気を帯び、続編製作の機運が高まったという経緯がある。「Awarapan 2」は興行的に成功し、2026年のヒンディー語映画界を代表するヒット作に数えられている。

 前作のプロデューサーはムケーシュ・バットだったが、本作はその息子ヴィシェーシュ・バットが引き継いでいる。また、前作の監督はモーヒト・スーリーだったが、本作は「Notebook」(2019年)などのニティン・カッカルが起用された。前作ではプリータムが音楽監督を務め、映画のカルト的人気を支えたが、本作ではミトゥン、アマール・マリク、ジート・ガーングリー、ワースィフ・アハマド、アキル・サチデーヴァなどが担当している。作詞は前作も本作もサイード・カードリーが主であるが、本作ではラシュミー・ヴィラーグ、サチン・ウルムトーシュ、アキル・サチデーヴァが書いているものもある。

 主演は前作から引き続きイムラーン・ハーシュミーである。彼が演じるのがシヴァム役という点も変わらない。前作のヒロイン、アーリヤー役を演じていたのはシュリヤー・サランで、本作でも彼女は少しだけ出演しているが、メインヒロインはディシャー・パータニーに交代している。前作でシヴァムの相棒カビール役を演じたシャード・ランダーワーや、悪役マリクを演じたアーシュトーシュ・ラーナーも一瞬だけ顔を出している。

 他に、シャバーナー・アーズミー、プーラン・ガッビー、スヴィンダル・ヴィッキー、ヴィジャヤーント・コーリー、アトゥル・クマール、アニルッド・ラーワル、ジャグクリード・カームディー、バルン・チャンダー、ルクサール・レヘマーン、リチャー・ジャインなどが出演している。

 「Awarapan」の最後では死んだことになっていた主人公シヴァムは、実は生き延びていたということになっており、「Awarapan 2」のストーリーにつながっている。ただ、前作から何年後の設定なのかは不明だ。

 バラト・マリク(アーシュトーシュ・ラーナー)のマフィアを壊滅させても恋人アーリヤー・ハミード(シュリヤー・サラン)を失った悲しみから立ち直れていなかったシヴァム・パンディト(イムラーン・ハーシュミー)は、彼女の墓で偶然発見した捨て子を拾い、自身が育った孤児院に預ける。その女児は「アーリヤー」と名付けられ、成長する。シヴァムは遠くからアーリヤーの成長を見守っていた。

 アーリヤーの里親が見つかり、彼女は引き取られていった。ところが、インターポールのサマルト・スィン(アトゥル・クマール)が現れ、アーリヤーはバンコクを拠点とする国際的人身売買マフィアに売り飛ばされたと知らせる。シヴァムはアーリヤーを探すため、サマルトの捜査に協力し、アムリト・スィン(バルン・チャンダー)のマフィアに潜入しようとする。

 アムリトには自閉症の長男スィカンダル(アニルッド・ラーワル)、音楽家の長女ザーラー(ディシャー・パータニー)、そして野心家の次男ゾーラーワル(プーラン・ガッビー)という3人の子供がいた。アムリトのマフィアは麻薬密輸を本業としていたが、ゾーラーワルは父親に内緒で人身売買に手を出していた。そして、それをアムリトから叱責されると、ゾーラーワルは父親を殺し、自らマフィアのドンになる。

 アムリトにはナフィーサー・ナワーズ(シャバーナー・アーズミー)というライバルがいた。アムリトの葬儀でゾーラーワルたちは襲撃を受け、彼らはタクシーに乗り込むが、その運転手がシヴァムだった。シヴァムはゾーラーワルの信頼を勝ち取り、彼のマフィアのセキュリティー主任を任される。

 ゾーラーワルは、マフィアの中に内通者がいると疑っており、シヴァムにその特定を命じた。シヴァムはサマルトと協力しナフィーサーと密会している相手を探す。なんとそれはザーラーだった。また、ザーラーはナフィーサーから、アムリトの葬儀襲撃を実行に移したのはシヴァムだと明かす。このときまでにシヴァムとザーラーは心を通い合わせ始めていた。シヴァムとザーラーはお互いにお互いを裏切り者だと断じ対峙する。だが、シヴァムはアーリヤーや子供たちを救うために行動していることを明かし、ザーラーはスィカンダルを救うためにナフィーサーと密約を結んだことを明かす。これ以降、二人は協力してお互いの目的を達成することになる。とりあえずシヴァムは内通者として、アムリトの腹心の一人だったメヘムード・アリー・カーン(ヴィジャヤーント・コーリー)を祭り上げ、これまたアムリトの腹心の一人ジャイディープ(スヴィンダル・ヴィッキー)に殺させる。

 メヘムードの裏切りを信じられなかったジャイディープはナフィーサーと密会し真相を問う。ナフィーサーはシヴァムがインターポールの手先であることを暴露し、ジャイディープはそれをゾーラーワルに伝える。ゾーラーワルはサマルトを捕まえ、シヴァムの前に突き出す。サマルトは殺され、シヴァムは気絶させられて彼の遺体と共に放置された。シヴァムはサマルト殺害の容疑で逮捕され警察から拷問を受ける。また、ザーラーは誘拐された子供たちの居所を突き止めるが、残念ながらアーリヤーらしき女児は死んでいた。ザーラーは刑務所でシヴァムにそれを伝える。

 シヴァムは脱獄し、ナフィーサーに助けを求める。だが、ナフィーサーはシヴァムを捕まえ、ゾーラーワルに送る。ゾーラーワルは港でバイヤーと子供たちの売買取引をしようとしていたところだった。ゾーラーワルはジャイディープにシヴァム殺害を命じるが、ジャイディープはゾーラーワルがアムリトを殺したことを知り、シヴァムに協力する。解放されたシヴァムはゾーラーワルと戦うが、ゾーラーワルは誘拐した子供たちを人質にする。その中にはなんとアーリヤーがいた。生きていたのである。ゾーラーワルはアーリヤーを人質にして事を有利に進めようとするが、スィカンダルとザーラーがシヴァムに加勢し、最後にゾーラーワルは死ぬ。

 実はシヴァムは事前にナフィーサーと密約を交わし、彼女の奴隷になることに同意していた。スィカンダル、ザーラー、アーリヤーの無事を確認した後、シヴァムはナフィーサーのギャングに加わる。

 「Awarapan 2」の軸になっているマフィアへの潜入というミッションは、「Dhurandhar」(2025年/邦題:ドゥランダル作戦)および「Dhurandhar: The Revenge」(2026年)を想起させるものだ。イムラーン・ハーシュミー演じる主人公シヴァムのビジュアルも「Dhurandhar」シリーズのハムザーに似ている。だが、シヴァムのビジュアルは前作から変わっていないし、そもそも「Awarapan 2」の製作が始まったのは「Dhurandhar」公開の少なくとも半年以上前だ。よって、「Awarapan 2」に「Dhurandhar」シリーズの影響を探すのは適切ではないだろう。ただ、悪役ゾーラーワルのテーマソング的に使われていた「ゾー!ラー!ワル!」という掛け声は、どう見ても「Dhurandhar」のタイトル曲にあった「ドゥ!ラン!ダル!」という歌詞の二番煎じだ。

 題名の「Awarapan」は「放浪」という意味だが、実は「Awarapan 2」の登場人物の大半は何らかの束縛を受けている。シヴァムは、恋人アーリヤーを失った悲しみから解放されておらず、墓地で拾った捨て子アーリヤーに多大な執着を抱いており、人身売買マフィアに売り飛ばされた彼女を救うためにインターポールに協力してアムリトのマフィアに潜入せざるをえなくなる。ザーラーは、父親を殺しマフィアのドンになって暴走を始めた弟ゾーラーワルから、自閉症の兄スィカンダルを守ろうとあがいていた。物語の最後でも、シヴァムは自身の自由と引き換えに、スィカンダル、ザーラー、アーリヤーの自由を勝ち取った。つまり、シヴァムは放浪者ではなくなったのである。

 そのような束縛の中で出会ったシヴァムとザーラーが心を通い合わせ、お互いのミッションに協力することになる。シヴァムがザーラーの裏切りを知ると同時にザーラーがシヴァムの裏切りを知ることになるインターミッション前後の展開はこの映画の最大の盛り上がりである。ただ、シヴァムはどんなに絶体絶命のピンチに陥ってもなかなか死なない。なぜかシヴァムを簡単に殺せる立場にある者が彼を殺さないのである。そういう場面が何回か繰り返されるため、次第に盛り下がっていく。この欠点は前作から引き継がれている。生き埋めからの復活シーンも前作そのままである。わざと前作のハイライトをリピートしているかのようだ。

 それでも、前作から音楽の良さはしっかり受け継いでいる。まず、前作のヒット曲「Tera Mera Rishta」と「Toh Phir Aao」が「New Version」としてリメイクされ劇中で使われており、前作のファンのハートをガッチリと掴んでいる。やはりこれらはリメイクされても名曲である。もちろん、オリジナル曲にも手抜かりはなく、「Ve Junoon」、「Yeh Awarapan」、「Tumhare Liye」などのしっとりとした良曲がちりばめられており、映画全体に流れる狂おしい雰囲気を増幅している。

 とてもインドらしいと感じたのは、最後の最後でシヴァムとザーラーを結びつけて見せなかったことだ。シヴァムの心には前作で死んだ恋人アーリヤーが永遠に住んでいることになっており、続編になっても彼に新たな恋愛を許していなかった。彼が孤児に「アーリヤー」と名付けたのもその延長線上で捉えられる。「恋愛は一生に一度のみ」という鉄の掟が守られており、それがインド人観客に好感を持って受け入れられた可能性がある。終わり方を見るとどうも「Awarapan 3」の製作も見込んでいるようで、第3作でシヴァムとザーラーの関係がどうなるのか見ものである。

 「Awarapan」はイムラーン・ハーシュミーが20代後半だった頃に作られた映画だ。現在は40代後半になっている。「Awarapan 2」では前作の映像もいくつか使われており、その中で約20年前のイムラーンも出て来るが、あまり変化がないのが驚きである。イムラーンは昔からこんな顔で、今もこんな顔だ。もしかしたら男性スターの中ではもっとも年を取っているように見えない俳優かもしれない。

 ヒロインのディシャー・パータニーにとって2026年は当たり年で、「Welcome to the Jungle」(2026年)に続きこの「Awarapan 2」も大ヒットになった。「Welcome to the Jungle」はマルチスター映画だったために彼女の貢献度は相対的に低く見積もられるが、本作の彼女はほぼ唯一のヒロインであり、その成功は彼女のキャリアにとって重要な意味を持つ。グラマラスな外見からアイテムガール的に起用されることの多かったディシャーだが、ここに来て女優として再評価が進んでいる。

 序盤に広大な塩田が映し出される。これはラージャスターン州のサーンバル塩湖である。インド最大の塩湖となっていて、製塩業が盛んである。物語の大半はバンコクが舞台になっており、実際にバンコクでロケが行われた。

 「Awarapan 2」は、フロップに終わりながら後からカルト的人気を獲得した「Awarapan」の続編である。前作から約20年後に続編が作られるというのも異例なことだ。だが、前作で作り出した雰囲気をうまく受け継いでおり、派手なVFXに食傷気味の現在の観客のニーズとうまく合致して、大ヒットになった。中身はあまりない。だが音楽を含めた世界観作りで成功した。そんな映画だ。