Bhooth Bangla

3.0
Bhooth Bangla
「Bhooth Bangla」

 2026年4月17日公開の「Bhooth Bangla(お化け屋敷)」は、「Go Goa Gone」(2013年/邦題:インド・オブ・ザ・デッド)や「Stree」(2018年/邦題:ストゥリー 女に呪われた町)などの系譜に連なるホラー・コメディー映画だ。インド映画界ではホラーとコメディーをミックスした大衆娯楽映画が大人気になっており、その勢いは留まるところを知らない。2026年6月12日からNetflixで配信開始されたが、なんと日本語字幕付きであり、「ブート・バングラ ~悪霊の館~」という邦題も付けられている。

 プロデューサーはエークター・カプールなど。監督はプリヤダルシャン。音楽はプリータム、作詞はクマール。主演はアクシャイ・クマール。プリヤダルシャンとアクシャイ・クマールがコンビを組んだホラー映画といえば「Bhool Bhulaiyaa」(2007年)が有名だ。このヒット作はシリーズ化され、「Bhool Bhulaiyaa 2」(2022年)、「Bhool Bhulaiyaa 3」(2024年)と続いたが、これら2作の監督はアニース・バーズミーに交代していた。「Bhooth Bangla」は「Bhool Bhulaiyaa」と共通点が多く、プリヤダルシャンによるもうひとつの「Bhool Bhulaiyaa」シリーズといえるかもしれない。

 マルチヒロイン映画であり、タブー、ミティラー・パールカル、ワーミカー・ガッビーがヒロイン格で起用されている。また、パレーシュ・ラーワル、ジーシュー・セーングプター、ラージパール・ヤーダヴ、アスラーニー、ラージェーシュ・シャルマー、マノージ・ジョーシー、ザーキル・フサイン、バーヴナー・パーニー、アレックス・オニール、チャーヤー・ヴォーラーなどが出演している。2025年10月20日に亡くなったアスラーニーにとっては遺作の一本になる。

 アルジュン・アーチャーリヤ(アクシャイ・クマール)と妹のミーラー(ミティラー・パールカル)は、父親のヴァースデーヴ(ジーシュー・セーングプター)と共にロンドンに住んでいた。ヴァースデーヴが出張でシドニーに行っている間に二人のところに弁護士リチャード・ガードナー(アレックス・オニール)が訪ねてくる。彼は、ミーラーの祖父ドゥシャント(ラージェーシュ・シャルマー)が亡くなり、遺書によって莫大な遺産がミーラーただ一人に遺されたと伝える。遺産の中には、アーチャーリヤ家の祖地であるマンガルプルの邸宅も含まれていた。折しもミーラーはラーフルとの結婚を準備しているところであり、結婚式会場を探していた。マンガルプルの邸宅が会場にふさわしいのではないかと考え、まずアルジュンがインドに向かう。

 アルジュンはマンガルプル行きの電車の中でプリヤー(ワーミカー・ガッビー)という女性の命を救う。マンガルプルに着いたアルジュンは、シャーンタラーム・ヤーダヴもしくはシャンブー・バーブーを名乗る怪しげな管理人(アスラーニー)に導かれ、妹が相続した邸宅に足を踏み入れる。長年手入れされておらず廃墟になっていたが、アルジュンはシャーンタラームに清掃の手配を依頼し、結婚式までに邸宅を美しく飾り立てようとする。ウェディングプランナーのジャグディーシュ・マニクチャンド・ループカマル・ケーワルラーマーニー(パレーシュ・ラーワル)とその甥で電気技師のスンダル、通称バッリー(ラージパール・ヤーダヴ)もやって来て準備を始める。ただ、邸宅には一室だけ、厳重に施錠された祭祀室があり、誰にも開けられなかった。

 ところで、マンガルプルは周囲の人々から呪われた町として知られていた。花嫁がさらわれるため、誰も結婚をしようとしなかったし、花嫁が近づくことすらも避けられていた。特にアーチャーリヤ家の邸宅にはお化けが出ると専らの噂だった。だが、アルジュンは迷信を信じず、邸宅に滞在していた。邸宅にはプリヤーもやって来る。今度はプリヤーに命を救われたアルジュンは、妹の結婚式に彼女を招待する。

 シャーンタラームは、マンガルプルの伝説をアルジュンたちに聞かせる。はるか昔、魔族の娘と神族の息子が恋に落ち、ヴァドゥスルという子供が生まれたが、神からも悪魔からも追われ、暗闇の王アンドカルターに子供を託して息を引き取った。アンドカルターはマンガルヴァンに子供を隠し、コウモリを守護に付けた。成長したヴァドゥスルはシヴァ神を念じて苦行をし、不死身になる恩恵を受けた。ヴァドゥスルは神々に宣戦布告をした。神々はヴィシュヌ神に助けを求め、ヴィシュヌ神は木の精霊ヴリクシュニーを派遣した。美しいヴリシュクニーに魅了されたヴァドゥスルは彼女との結婚を求める。ヴリクシュニーは婚姻の儀式でヴァドゥスルを騙し討ちし地中に埋める。だが、呪術師の一団がヴァドゥスルを崇拝するために寺院を建て、その復活を目論んだ。ヴァドゥスルの復活を阻止するため、ヴリクシュニーはヴァドゥスル寺院のそばに大樹となって立ち、監視し続けた。ヴァドゥスルの肉体は滅んだが、邪悪な魂は生きており、花嫁を誘拐するようになった。13人の花嫁を血祭りに上げればヴァドゥスルは復活できるはずだった。

 シドニーから帰ってきたヴァースデーヴは、アルジュンがミーラーの結婚式をマンガルプルの邸宅で行おうとしているのを知り、それを止めようとする。だが、アルジュンは拒否する。そんな中、アルジュンも邸宅で邪悪な影を見て、実際に攻撃を受ける。何とか生き延びたアルジュンは迷信を信じるようになり、一転して結婚式を中止しようとするが、既にミーラーやラーフルの家族も来てしまっており、難しかった。アルジュンは、マンガルプルに到着したヴァースデーヴと共に、聖なるガンガープリーのアーシュラム(道場)に住むヴァシシュト(ザーキル・フサイン)に相談に行く。ヴァシシュトは、ヴァドゥスルは光に弱いため、日中に結婚式を済ませれば結婚は可能だと助言を与える。アルジュンはそうすることにする。

 ところが、ラーフルの祖母(チャーヤー・ヴォーラー)は信心深く、占星術師ゴーヴィンド・マハーラージ(マノージ・ジョーシー)の言いなりだった。ゴーヴィンドは午後8時半に婚姻の儀式を行うことにこだわっていた。破談になりそうな勢いだったため、アルジュンは仕方なく結婚式を夜に行うことに同意する。また、ゴーヴィンドは開かずの間の鍵を入手するために、元々祖父が住んでいた家を訪ねるが、そこでドゥシャントと会う。ドゥシャントは生きており、自らの死を偽装していたのだった。

 ヴァースデーヴの語るところでは、ドゥシャントにはマーダヴ(アクシャイ・クマール)という息子がおり、ヴァースデーヴとマーダヴはドゥシャントの兄弟弟子だった。ヴァースデーヴはドゥシャントの親友の娘ヤショーダー(タブー)と恋に落ち、師匠からも結婚を認められるが、実はマーダヴもヤショーダーを狙っていた。嫉妬に狂ったマーダヴはヴァドゥスルを復活させて何でも願い事を聞いてもらおうとする。マーダヴは悪魔に魂を売り、ドゥシャントは息子を救うために必死になる。ドゥシャントはヴァースデーヴからヤショーダーを奪い、無理やりマーダヴと結婚させる。だが、マーダヴが悪魔化したことを知ったヤショーダーは逃げ出し、ヴァースデーヴは彼女を連れてマンガルプルを出る。ヤショーダーは妊娠しており、生まれたのがアルジュンだった。ヤショーダーはミーラー出産後に亡くなった。

 アルジュンは、結婚式中とにかく灯りを絶やさないように取り計らう。何とか婚姻の儀式は終わるが、ヴァドゥスルに操作されたバッリーがブレーカーを落としてしまい、邸宅は暗闇に包まれる。ミーラーは誘拐され、アルジュンは後を追ってヴァドゥスル寺院に潜入する。そこではドゥシャントが儀式を行い、ヴァドゥスルを復活させようとしていた。復活に必要な最後の花嫁がミーラーであり、悪魔化したマーダヴが彼女を殺そうとしていた。アルジュンはマーダヴに襲い掛かる。また、邸宅ではヴァースデーヴが開かずの扉をこじ開け、中にあったマントラ装置を起動する。アルジュンはヴリクシュニーの力を借りてマーダヴを倒し、聖なるマントラによってヴァドゥスルの復活は阻止される。

 プリヤダルシャンは南北インドを股に掛けて活躍する映画監督で、1980年代から数々のヒット作を送り出してきた。マラヤーラム語映画界をベースとするが、ヒンディー語映画界でも彼の貢献は多大であり、「Hera Pheri」(2000年)、「Hungama」(2003年)、「Garam Masala」(2005年)、そして前掲の「Bhool Bhulaiyaa」など、名作が多い。さまざまなジャンルの映画を撮ってきたが、コメディーをもっとも得意とし、しばしば「コメディーの帝王」と呼ばれてきた。「Bhooth Bangla」も、ホラー・コメディーの元祖は自分だと自己主張する目的で作られたのではないかと邪推する。非常に多作であることでも知られるが、最近はさすがに年を取ったのか、作品数はグッと少なくなり、ヒンディー語映画も「Hungama 2」(2021年)以来5年振りとなる。現在69歳。精いっぱい時代に付いていこうとしているが、さすがに若い映画監督と同じ感覚での映画作りには至っておらず、チグハグさのある映画になっていた。

 まず、「Bhooth Bangla」を純粋なコメディー映画として観た場合、十分に笑える作品だといえる。ホラーシーンの合間に、主にパレーシュ・ラーワルやラージパール・ヤーダヴを使ってコミックシーンを入れており、それらのパンチ力は侮れない。プリヤダルシャン監督、ここにあり、といった感じだ。だが、ホラーとコメディーがバランス良く配置されていたわけではないので、取って付けたような笑いと感じるところも多かった。

 次に、ホラー映画として観た場合はどうかといえば、派手にしすぎてしまっている。最近のヒンディー語のホラー映画はCGを駆使してやたらと派手に飾り立てる傾向にあるが、ホラー映画は派手にすればいいというわけではない。むしろ、低予算映画の方が工夫の余地があり、それがかえって怖さを引き立てているということも多い。「Bhooth Bangla」は、ホラー映画としては失敗の部類に入る。

 アクシャイ・クマールを主演に起用したのは、プリヤダルシャン監督のお気に入りだからだろうと予想される。アクシャイはプリヤダルシャン作品に数多く出演してきて、映画の顔になってきた。そして最盛期にはこのコンビの成功率も高かった。だが、彼が「Bhooth Bangla」のアルジュン役に最適だったとはとても思えない。まず、年齢が高すぎる。現在アクシャイは58歳だが、33歳のミティラー・パールカルが演じるミーラー役の兄にふさわしいとは思わないし、ましてや49歳のジーシュー・セーングプターが演じるヴァースデーヴ役の息子を演じる道理があったとも思えない。ここは中堅の俳優にチャンスを与えてほしかった。年齢は演技でカバーできるという声もあるかもしれない。だが、「Bhooth Bangla」のアクシャイは終始怒鳴り立て騒いでいるだけだった。そもそも彼の演じたアルジュンの人物設定がよく分からなかった。ヴァースデーヴの息子でミーラーの兄ということは分かるのだが、それ以外の情報が抜け落ちていたのである。

 「Bhooth Bangla」の救いになっていたのは音楽監督プリータムによるいくつかの楽曲だ。本来ならばホラー映画にソングシーンやダンスシーンはそぐわないのだが、ホラー・コメディー映画にすることで、歌と踊りが入り込む余地が生まれる。そして、「Tu Hi Disda」や「O Sundari」などのヒット曲を盛り込むことができた。特に「Tu Hi Disda」は、プレイバックシンガー引退表明済みのアリジート・スィンが歌っている。プレイバックシンガーとしてのアリジートの最後の歌声を聴ける曲のひとつである。

 「Bhooth Bangla」は、プリヤダルシャン監督、アクシャイ・クマール主演のホラー・コメディー映画である。この二人のコンビは過去に多くのヒット作を送り出してきた。本作についても興行的には成功している。だが、決して丁寧に作られた作品ではなく、彼らのキャリアベストには到底程遠い。コメディー映画として観るのが正しい。インド人観客にもコメディー映画として受けたのだと思われる。