Garam Masala

2.0

 今日は、2005年11月2日から公開されたヒンディー語映画「Garam Masala」をPVRプリヤーで観た。今年のディーワーリーには、3本の映画が同時公開された。「Kyon Ki…」(2005年)、「Shaadi No.1」(2005年)、そしてこの「Garam Masala」である。「Kyon Ki…」と「Garam Masala」の監督はプリヤダルシャンで同一。「Kyon Ki…」は、ちょっとお笑いのスパイスも入った悲劇映画であったが、「Garam Masala」は完全なるコメディー映画であった。そして奇しくもデーヴィッド・ダワン監督の「Shaadi No.1」と、この「Garam Masala」は、どちらも浮気をテーマにしたコメディー映画ということで競合していた。

 「Garam Masala」、つまりガラム・マサーラーとは予め混合されたスパイスのことであり、インド料理に使われる七味唐辛子的な調味料であるが、特に何がどの比率で混合されるかは家庭やレストランによって様々で決まっておらず、厳密には食品名とは言いがたい。また、インド映画のことを「マサーラー・ムーヴィー」と呼ぶことがあるが、これはいろんな要素が詰め込まれたインド映画の特徴を、いろんなスパイスがミックスされたガラム・マサーラーに喩えたものである。映画中、「ガラム・マサーラー」という名の雑誌が出て来るが、それよりも映画全体のスパイシーな雰囲気を題名に込めたと考えた方がいいだろう。監督はプリヤダルシャン、音楽はプリータム。キャストは、アクシャイ・クマール、ジョン・アブラハム、ネーハー・ドゥーピヤー、リーミー・セーン、パレーシュ・ラーワル、ラージパール・ヤーダヴと、3人の新人女優、デイジー、ニートゥー、ナルギスなど。

 舞台はモーリシャス。マック(アクシャイ・クマール)とサム(ジョン・アブラハム)は同じ雑誌会社に勤めるヘッポコ写真家コンビだった。二人はルームメイトでかつ親友であったが、会社の受付のマッギー(ネーハー・ドゥーピヤー)を巡る恋敵でもあった。マックにはアンジャリー(リーミー・セーン)という許婚がいたが、彼はあまり結婚する気がなかった。

 サムは有名写真家から写真をもらってそれを国際写真コンテストに出し見事受賞する。その功績によりサムは昇進した上に会社からボーナスと1ヶ月間の米国旅行をプレゼントされる。また、マッギーは完全にマックを無視するようになる。親友だと思っていたサムの出し抜けに絶望したマックはマッギーよりもいい女を見つけるため、アンジャリーの前から姿をくらますと同時に、年中空いている豪華フラットの管理人に就職し、3人のスチュワーデス、プリーティ(デイジー)、スウィーティー(ニートゥー)、プージャー(ナルギス)と同時に恋愛を始める。マックは気難しい料理人のマンボー(パレーシュ・ラーワル)を雇って、彼にもそれに協力をさせる。マックは三人それぞれと婚約し、自分が管理するフラットに住まわせるようになる。

 ところが米国からサムが帰って来てマックの家に住み始めると、次第に事がややこしくなって来る。飛行機のスケジュールが狂うと、彼女たちが鉢合わせにならないよう奔走しなければならなかったし、アンジャリーにも居場所が知れてしまった。また、サムはマックに協力するように見せかけ、三人のスチュワーデスたちを口説いたりしていた。

 しかしとうとうアンジャリーと三人のスチュワーデスに真実が知れてしまった。アンジャリーは怒ってインドに帰国するために空港へ向かう。アンジャリーを追いかけてマックとサムは空港まで行き、何とか彼女を引き止めるが、今度はスチュワーデスの大群から追われることになる。マックの運命やいかに・・・。

 一応舞台はモーリシャスなのだが、どこの国の話なのか分からないほど無国籍な舞台設定。脳みそを家に置いて映画館に出掛けても理解できるほど単純だが、よく考えば考えるほど前後の脈絡がチンプンカンプンになってくるストーリー。最初から最後まで女性を遊びの道具としか捉えない男尊女卑的思想で一貫されており、改善の糸口も見えないその偏見性。欠点を挙げるとキリがないが、ギャグと音楽がよかったため、何とかまあまあの満足感と共に映画館を出ることができる映画にまとまっていた。

 何年間もヒンディー語映画を見続けており、ヒンディー語の勉強も怠っていないつもりなので、もう最近では通常のヒンディー語映画を観ていてストーリーを見失うことはかなり少なくなった。映画のセリフは、100%とはいかないまでもかなり聴き取ることができるし、インド映画の方程式も身体で理解してきた。しかし、この映画では少なくとも2回、筋を見失ってしまった。ひとつはマックが3人のスチュワーデスと同時に付き合うようになった経緯、もうひとつはマックがマンボーという料理人を雇うようになった経緯についてである。特に前者は映画の中核であり、その動機が説得力ある展開で説明されていなかったのは残念であった。

 そしてさらに観客を混乱させるのは、三人のスチュワーデスの見分けが付きにくいことである。三人とも新人女優であるが、「モーニング娘。」のような「ブスというわけでもないが際立って美人でもない」というレベルの似たような顔の女の子が三人交互に出て来るので、誰が誰だか分からなくなる。別に誰が誰だか理解していなくても映画の筋は理解できるほど単純ではあるのだが、どうせならもっと個性のある顔の女優を三人並べてほしかった。

 これら3人の新人女優がけっこう重要な役割を担っていたのとは対照的に、既にデビューしてしばらく経っている若手女優二人の存在感があまりに薄かったのも不思議でしょうがなかった。マッギーを演じたネーハー・ドゥーピヤーは2002年のミス・インディアで、既に主役を演じるほどの女優に成長して来ているのに、今回は非常に限定的で全く重要でない役での出演であった。アンジャリーを演じたリーミー・セーンは、「Dhoom」(2004年)に出演していた女優であり、やはり既に数本の映画に出演しているが、彼女も全く活かされていなかった。

 脇を固めるのはインドを代表するコメディアン、パレーシュ・ラーワルとラージパール・ヤーダヴの2人。特にパレーシュ・ラーワルの活躍が目立った。内容のないことをさも内容があるかのように延々としゃべり続けるマシンガン・トークは絶品。せっかく作った料理をゴミ箱に捨てるシーンが哀愁を誘う。

 プリヤダルシャン監督の映画は、最後に必ず、登場人物総登場のドタバタ劇が繰り広げられることで有名である。「Hungama」(2003年)や「Hulchul」(2004年)がその好例だ。しかし、「Garam Masala」のクライマックスにはプリヤダルシャン監督らしいドタバタが用意されておらず、かなり尻すぼみ的な終わり方となってしまっていた。

 この映画の見所のひとつは、アクシャイ・クマールとジョン・アブラハムの絶妙のコンビである。二人が共演するのはこれが初めてだ。アクシャイ・クマールは過去にも「Hera Pheri」(2000年)や「Mujhse Shaadi Karogi」(2004年)などでコメディー役を演じているが、ジョン・アブラハムがコミックロールを演じたのはこれが初めてである。今までアクションヒーローのイメージが強かったジョンだが、今回はかなり今までのイメージをぶち破るピエロ振りを見せてくれた。二人の息が意外にピッタリと合っていた他、どちらもワイルドなハンサムさを売りにしており、スクリーン上の相性もよかった。ジョンは現在人気沸騰中。彼が映画中、「俺はまだ独身、ガールフレンド募集中」とセリフをしゃべった瞬間、観客席のあちこちから黄色い声が上がったほどだ。ちなみにジョンはビパーシャー・バスと付き合っている。

 もうひとつの見所は音楽の踊り。「Dhoom」の大ヒットで一躍名を上げた音楽監督プリータムが作曲しており、聞くだけで身体が動き出すようなアップテンポの名曲がいくつかあった。冒頭のクレジットシーンで流れる「Ada」、パンジャービー・ソング「Chori Chori」、アドナーン・サミーが歌う「Kiss Me Baby」、「ドゥバドゥバドゥバ・・・」というリフレインが耳に残る「Dil Samandar」などが秀逸。「Garam Masala」のサントラCDは買って損はない。

 ちなみにこの映画は、プリヤダルシャン監督自身が監督したマラヤーラム語映画「Boeing Boeing」(1985年)のリメイクである。しかもその映画は、ハリウッドの「Boeing Boeing」(1965年)のリメイクとなっている。

 これでディーワーリーに同時公開された3本の映画を全て観たことになる。当然のことながら3本の内でどれが最も優れていたか、判断を下したくなる。はっきり言ってどれも期待外れだったのだが、期待外れながら優劣を付けたい。どうやらデリーでの観客動員数からいくと、この「Garam Masala」が1番のようだ。2週目の今日でもけっこう観客が入っていた。だが、「Garam Masala」も「Shaadi No.1」もうまくまとまったコメディー映画とは言いがたく、テーマも道徳的でなくて「家族の祭典」であるディーワーリー向けではないように思える。よって、僕は悲劇映画ではあるが「Kyon Ki…」をディーワーリー3部作の中で最も優れた作品だとしたい。