Maan Gaye Mughal-e-Azam

2.5

 2008年下半期に入った途端、「Jaane Tu… Ya Jaane Na」、「Singh is Kinng」、「Bachna Ae Haseeno」をヒットさせて勢いに乗るヒンディー語映画業界。今日(2008年8月22日)は3本のヒンディー語映画が同時公開された。上映スケジュールの関係から、コメディー映画「Maan Gaye Mughall-e-Azam(大ムガル皇帝が認めた)」をまず観ることにした。題名からは、インド史上最高傑作に数えられることも多い「Mughal-e-Azam」(1960年)のパロディーであることが容易に推測できる。

監督:サンジャイ・チェール
制作:ガネーシュ・ジャイン、ラタン・ジャイン
音楽:アヌ・マリク
歌詞:サンジャイ・チェール
振付:サロージ・カーン
出演:パレーシュ・ラーワル、ラーフル・ボース、マッリカー・シェーラーワト、ケー・ケー・メーナン、パワン・マロートラー、ザーキル・フサイン
備考:PVRアヌパム4で鑑賞。

 1993年、ゴア州の港町セントルイス。ドバイに住みながらボンベイ(現ムンバイー)のアンダーワールドを牛耳るドンが、ボンベイで大規模なテロを計画していた。インドの対外諜報機関、調査分析局(RAW)は、ドンがゴア州の小さな港町セントルイスでRDX(爆薬)を陸揚げしようとしているとの情報をキャッチし、RAWエージェントを送り込む。派遣されたのは、ガザル歌手として表の顔を持つハルディー・ハサン(ケー・ケー・メーナン)であった。ところが、同じくRAWエージェントのアルジュン・ラストーギー(ラーフル・ボース)は、ハルディーに不審な点を感じ、局長の命を受けてセントルイスへ急行する。

 実はアルジュンはセントルイスの劇団カラーカール・シアターカンパニー所属の女優シャブナム(マッリカー・シェーラーワト)に恋していた。シャブナムは、同劇団の男優ウダイシャンカル・マズムダール(パレーシュ・ラーワル)の妻であったが、大女優になる夢を持っていた。セクシーなシャブナムの周りには男が絶えず、アルジュンとも不倫関係にあった。この不倫関係のおかげで、彼は劇場爆破テロを防ぐという手柄も挙げていた。

 ハルディーよりも先にセントルイスに到着したアルジュンは、シャブナムを使ってハルディーから情報を得ようとする。やはりハルディーはドンとつながっており、テロリストであった。シャブナムはハルディーに近づき、ドンがもうすぐセントルイスに大量のRDXと共に上陸予定であることを突き止める。一方、アルジュンは、シャブナムのベッドで眠っているところをウダイシャンカルに見つかってしまうが、国を救うための極秘ミッションだと言い訳をし、カラーカール・シアターカンパニーの劇団員の協力を得て、RDXをマフィアたちから奪う作戦を開始する。

 ドンは、カラーカール・シアターカンパニーの劇場をマフィアたちの集合場所に指定していた。そこで劇団員たちは、集会の途中で劇場の電源を切り、どさくさに紛れてRDXを奪う計画を立てる。作戦は首尾良く進まなかったが、何とかRDXを手に入れたアルジュンたちは、ドンたちと裏でつながる警察の追っ手を振り切って海にRDXを捨てる。このときウダイシャンカルは銃弾を受けるが、命に別状はなかった。

 半年後。アルジュンと劇団員たちは、テロを防いだ功績により表彰を受けた。だが、その場で新たにシャブナムの新しい恋人が発覚するのであった。

 爆笑ポイントがいくつかあるが、低予算でこぢんまりとまとまったコメディー映画だった。「Mughal-e-Azam」のルーズなパロディーが随所に出て来るが、基本的には何の前知識なしでも笑える映画になっている。もちろん、「Mughal-e-Azam」を見ていれば、面白さは倍増である。ウルドゥー語の難解な言葉遣いをおちょくるような場面もいくつかあった。映画というよりは、コントのノリに近い。

 映画の面白さの核は、演劇「Mughal-e-Azam」の中でアクバルを演じるウダイシャンカルがしゃべる「敵がインドの地に足を踏み入れたら常に・・・」という台詞である。ウダイシャンカルはその台詞に絶大な自信を持っていた。だが、彼の妻のシャブナムと不倫関係にあり、毎日演劇を見に来ていたアルジュンは、シャブナムに、アクバルがその台詞をしゃべり出したらドレスルームに来るように言われていた。だから、ウダイシャンカルが「敵がインドの地に足を踏み入れたら常に・・・」と台詞をしゃべり出すと、アルジュンはいつも席を立って行ってしまった。ウダイシャンカルはそれを自分の演技力の欠陥だと感じ、だんだん俳優としての自信を失って行く。

 この台詞は物語の端々のいろいろな場面で出て来て笑いを誘うが、エンディングまでこの台詞で閉められていた。テロリストからRDXを奪取し、テロを未然に防いだアルジュン、ウダイシャンカル、シャブナムらは、国から表彰を受ける。そのときウダイシャンカルは得意になって「敵がインドの地に足を踏み入れたら常に・・・」と演説し出す。そうしたら、表彰式に出席していた士官たちが一斉にシャブナムに向かって走り出し、花を差し出すのである。

 また、RAWのエージェントながら、ドバイのドンとつながるテロリストだったハルディーは、ガザル歌手という表向きの職業柄、日常会話でもウルドゥー語の雅な言葉遣いを多用する。シャブナムに惚れたハルディーはロマンチックな言葉で彼女を口説こうとするが、いかんせん、彼の言葉は時代遅れで、シャブナムにはチンプンカンプンなのである。

 このように、映画では「古典を笑う」笑いがテーマになっていたと言える。

 ちなみに、映画中ではテロは未然に防がれたことになっていたが、実際には1993年にボンベイで連続爆破テロが発生している。ドバイのドンとは、映画中実名は出なかったものの、国際的テロリストのダーウード・イブラーヒームである。

 「Pyaar Ke Side/Effects」(2006年)の主演コンビであるラーフル・ボースとマッリカー・シェーラーワトの再共演が話題になっていたが、実際にはパレーシュ・ラーワルとマッリカー・シェーラーワトの映画であった。現在ヒンディー語映画界最高のコメディアンであるパレーシュ・ラーワルは見せ場たっぷりで大いに笑わせてくれた。マッリカー・シェーラーワトは、「Ugly Aur Pagli」(2008年)に続いてキュート&セクシーな魅力を存分に発揮しており、映画を支配していた。かなりギリギリのセクシーシーンもあった。この二人の前では、ミスター・ヒングリッシュの異名を持つ名優ラーフル・ボースも萎縮してしまっていた。

 音楽はアヌ・マリク、振付はサロージ・カーン。ネオ・ムガル様式とでも言うべきミュージカルがいくつかあり、ユニークな雰囲気を作り出していた。だが、楽曲自体にそれほど魅力はない。

 「Maan Gaye Mughall-e-Azam」は、決して笑えないコメディー映画ではないが、映画らしいスケールの大きさに欠けるため、コメディー映画としては二流の作品になってしまう。観て損はないが、わざわざ見逃しても損ではないだろう。パレーシュ・ラーワルやマッリカー・シェーラーワトのファンにのみオススメできる。