Dishoom

3.5

 「Student of the Year」(2012年/邦題:スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!)でデビューし、現在のヒンディー語映画界を代表する若手スターとして活躍しているヴァルン・ダワンは、他の大多数のスターと同様に、映画関係者を家族に持っている。特に父親は「コメディー映画の帝王」として知られるデーヴィッド・ダワン監督であり、「Main Tera Hero」(2014年)は父子のコンビによって作られた。実はヴァルンの兄ローヒト・ダワンも映画監督であり、今までに「Desi Boyz」(2011年)を撮っている。

 2016年7月29日公開の「Dishoom」は、ローヒト・ダワン監督、ヴァルン・ダワン主演の、ダワン兄弟が初めて手を組んだ作品である。ジャンルはコミカルなアクション映画となっている。キャストが豪華で、ジョン・アブラハムとジャクリーン・フェルナンデスが主演、悪役がアクシャイ・カンナーの他、錚々たるスターたちがチョイ役で特別出演している。アクシャイ・クマール、パリニーティ・チョープラー、ナルギス・ファクリーなどである。また、サーキブ・サリーム、タルン・カンナー、ラーフル・デーヴ、ヴィジャイ・ラーズ、モナ・アンベーガーオンカルなどが出演している。

 舞台は中東のとある国。インド対パーキスターンの因縁のクリケットマッチが開催されようとしていたが、インド代表のスタープレーヤー、ヴィラージ・シャルマー(サーキブ・サリーム)が試合の36時間前に行方不明になり、試合を中止しないように脅迫するビデオがインドの外務大臣ガーヤトリー・シュバー・ミシュラー(モナ・アンベーガーオンカル)のところへ送られてくる。ガーヤトリー外相はヴィラージ捜索のため、破天荒な警察官カビール・シェールギル(ジョン・アブラハム)を同国に派遣する。

 カビールは、お調子者の新米警察官ジュナイド・アンサーリー(ヴァルン・ダワン)をガイドにしてヴィラージを探す。ヴィラージと最後に接触したサミーラー(ナルギス・ファクリー)やサミール(アクシャイ・クマール)、そしてスリのミーラー(ジャクリーン・フェルナンデス)などに聞き取り調査をする中で、ヴィラージを誘拐したのがアルターフ(ラーフル・デーヴ)という隣国の男だということを突き止める。

 カビール、ジュナイド、ミーラーは隣国に赴いてアルターフを探すが、あと少しのところで何者かに射殺されてしまう。あまりに暴れ回ったため、カビールはインドに送り返されることになる。だが、ジュナイドの飼っていた犬が偶然、事件の黒幕であるワーガー(アクシャイ・カンナー)のところへ行っており、仕込まれたカメラがヴィラージの姿を捉えていた。ジュナイドは飛行機からカビールを連れ出して、ワーガーを追う。

 ワーガーはクリケット賭博の総元締めだったが、ヴィラージの活躍により大損をしており、50億ルピーの借金を抱えていた。ヴィラージを誘拐し、意のままに動かすことで、八百長賭博により大儲けし、借金を返済しようとしていた。だが、カビールに勘付かれたことを察知し、ヴィラージの身体に爆弾をくくりつけて逃亡する。カビールとジュナイドはヴィラージの爆弾を外すことに成功する。

 インド対パーキスターンの試合が始まった。ワーガーの期待と異なり、試合会場にヴィラージが現れ、パーキスターン代表相手に獅子奮迅の活躍をする。会場を逃げ出したワーガーをカビールとジュナイドは追い、捕まえる。カビールはジュナイドに別れを告げインドに去るが、ミーラーも一緒だった。

 前半は消えたクリケット選手の謎を追う展開で、スリルとサスペンスに満ちており、比較的緻密に構成されていた。だが、後半になった途端、前のシーンと次のシーンがスムーズにつながっていないような、雑な展開が続くようになり、多少盛り下がってしまった。それでも、サプライズゲストの波状攻撃が小気味よく、まあまあの娯楽大作に仕上がっていた。

 デーヴィッド・ダワンの人脈が成せる業なのか、キャスティングが大きな魅力となっていた映画だった。寡黙な筋肉派男優ジョン・アブラハムと、コミカルなイメージで売っているヴァルン・ダワンの凸凹コンビがはまっていたし、ヒロインのジャクリーン・フェルナンデスも小悪党な女の子を溌剌と演じていた。しかも悪役は、ねちっこい演技が得意なアクシャイ・カンナーである。それに加えて、アクシャイ・クマールというビッグネームの特別出演があった他、ナルギス・ファクリーとパリニーティ・チョープラーまで登場し、かなりのスターパワーがパッケージされた映画であった。

 ちなみに、ローヒト・ダワン監督の前作「Desi Boyz」の主演はアクシャイ・クマールとジョン・アブラハムだった。それを意識してか、「Desi Boyz」のヒット曲「Subah Hone Na De」のリミックスがアクシャイ・クマールの登場シーンで使われていた。

 インド対パーキスターンのクリケットマッチの直前にインド代表の中心的なクリケット選手が誘拐されるという導入部からは、パーキスターンが悪役の映画であることを予想させるが、意外にもパーキスターンが悪く描かれた映画ではなかった。誘拐の理由は、クリケット賭博であった。スター選手を誘拐して試合をコントロールしようとしていたのである。クリケット賭博が主題になった映画というと「Jannat」(2008年)があったが、「Dishoom」についてはクリケット賭博はあくまでサイドストーリーに過ぎなかった。ちなみに、サーキブ・サリームが演じたクリケット選手、ヴィラージは、おそらく人気クリケット選手ヴィラート・コーリーをモデルにしていると思われる。

 舞台となった国ははっきりと示されていなかった。ロケはアブダビとモロッコで行われたようであるが、架空の国ということでいいだろう。チェイスシーンが多く、いろいろな乗り物を使ってチェイスが行われた。特にウラルのサイドカー付きバイクでチェイスをするシーンはユニークだったが、迫力はなかった。

 スターパワーがあったために、ダンスシーンにも力が入っていた。ジョン・アブラハムとヴァルン・ダワンが踊るタイトルソング「Toh Dishoom」、ジャクリーン・フェルナンデスの踊る「Sau Tarah Ke」、ヴァルン・ダワンとパリニーティ・チョープラーが踊る「Jaaneman Aah」など、ノリノリのダンスナンバーが多かった。

 「Dishoom」は、ジョン・アブラハム、ヴァルン・ダワン、ジャクリーン・フェルナンデスが主演、アクシャイ・カンナーが悪役、そしてアクシャイ・クマール、ナルギス・ファクリー、パリニーティ・チョープラーが特別出演という、これ以上にない豪華な顔ぶれのコミカルなアクション映画である。ほぼ全編海外ロケであるし、音楽にも力が入っている。ヒットもしており、見所の多い映画だが、後半が雑になってしまったのが残念だった。