Yun Hota Toh Kya Hota

2.0

 ジャナマーシュトミー(クリシュナ生誕祭)の今日、PVRアヌパム4で、2006年7月21日公開の「Yun Hota Toh Kya Hota」を観た。この映画は、インド最高の俳優として誉れ高いナスィールッディーン・シャーが初めてメガホンを取った作品で、911事件を題材としたオムニバス形式の映画である。

 題名「Yun Hota Toh Kya Hota」の意味は、「こうであったらどうだっただろう」という意味。副題は「What If..」。監督はナスィールッディーン・シャー、音楽はヴィジュー・シャー。キャストは、コーンコナー・セーンシャルマー、ジミー・シェールギル、イルファーン・カーン、スハースィニー・ムレー、サロージ・カーン、アンクル・カンナー、パレーシュ・ラーワル、ラトナー・パータク・シャー、カラン・カンナー、トリシュラー・パテール、シャハーナー・ゴースワーミー、イマード・シャー、ラヴィ・バースワーニー、ティンヌー・アーナンド、ボーマン・イーラーニー、ラジャト・カプール、ランヴィール・シャウリー、カーラ・スィンなど。4つの小話が一本の映画を構成している映画なので、登場人物は非常に多い。

 話は2001年8月31日から始まる。

  ティロッタマー・プンジ(コーンコナー・セーンシャルマー)は、ネットで知り合った米国在住インド人のヘーマント(ジミー・シェールギル)と結婚し、幸せの絶頂だった。だが、ヘーマントは仕事のために、結婚式を終えるとすぐに米国へ帰ってしまった。ティロッタマーはヴィザが下りるまで待たなければならなかった。だが、ヘーマントの家族は多くの問題を抱えていた。ヘーマントの母親(カーラ・スィン)は米国人だが、インド人の父親(ラヴィ・バースワーニー)と結婚してインド国籍を取得し、インドに住んでいた。ヒステリックな性格の彼女は、ティロッタマーが米国へ行くのを邪魔し、家の仕事を全て彼女に押し付けていた。ヘーマントの妹は夫と別居状態で精神錯乱状態だった。この家庭に嫌気が差したティロッタマーは、早く米国へ行こうとする。彼女は米国大使館で未婚だと偽って観光ヴィザを取得する。

 株式仲買人のサリーム・ラージャーバリ(イルファーン・カーン)は、年上の女性ナムラター(スハースィニー・ムレー)の虜となっており、しつこく言い寄っていた。だが、ナムラターはサリームを冷たく突き放した。サリームと仲間のジャーヴェードは、ポール警部(ボーマン・イーラーニー)が買った株の件で問題に直面していた。ポール警部はマフィアから金を借りて株に手を出し、大損をしてしまった。そのせいで彼はマフィアから命を狙われていた。サリームとジャーヴェードが警部の隠れているホテルを訪ねたときに、ちょうど警部は暗殺者に殺されてしまう。しかも2人は暗殺の犯人にさせられる恐れがあった。サリームは、母親アンマー(サロージ・カーン)の助言に従い、ジャーヴェードと共に米国へ逃亡する。

 貧しくも優秀な学生であるラーフル・ビデー(アンクル・カンナー)は、米国の大学に合格したが、米国へ行けずにいた。学資金が足らないことと、父親が病気で瀕死の状態であることがその原因だった。だが、友人のクシュブー(アーイシャー・ターキヤー)が学資金を援助してくれた上に、ちょうど父親が息を引き取ったため、米国行きを決める。ヴィザも入手することができた。

 ラージューバーイー・パテール(パレーシュ・ラーワル)は、表向きはダンサーを率いて米国ツアーを行っていたが、裏では米国への不法移民を斡旋していた。ある日、ラージューバーイーのもとに19年前に別れた妻ターラー(ラトナー・パータク・シャー)がやって来て、娘のパーヤル(シャハーナー・ゴースワーミー)を米国へ移住させるよう頼む。ターラーの再婚相手は飲んだ暮れで、妻や娘に売春をさせて暮らしていた。ターラーは、パーヤルだけでも米国へ逃がそうと思い、ラージューバーイーを訪ねたのだった。ラージューバーイーは、今でもターラーに対して愛情を抱いていた上に、18歳のパーヤルが自分の実の娘であることを直感し、それを引き受ける。ラージューバーイーはパーヤルのヴィザを首尾よく取得する。

 サリームは既にニューヨークに渡っていた。ティロッタマー、ラーフル、ラージューバーイー、パーヤルらはボストン行きの飛行機に乗り込んだ。彼らはボストンを経由してロサンゼルスへ行く予定だった。ところが、ボストンの空港でティロッタマーは搭乗券をなくしてしまい、ロサンゼルス行きの飛行機に乗り遅れてしまった。ラーフル、ラージューバーイー、パーヤルはロサンゼルス行きの飛行機に乗るが、その飛行機はハイジャックに遭い、ニューヨークの世界貿易センターへ突っ込む。また、そのときちょうど世界貿易センターにはサリームが来ていた。ヘーマントは、妻の乗った飛行機がテロに遭い、落胆していたが、そこへ飛行機に乗り遅れてバスでロサンゼルスまでやって来たティロッタマーが現れた。

 要は911事件の被害に遭ったインド人と、たまたま飛行機に乗り遅れて難を逃れたインド人のストーリーを4本集めた映画である。どうやら実話に基づいているようだ。だが、はっきり言って監督がこの映画を通して何を観客に伝えたかったのか、よく分からなかった。よって、名優ナスィールッディーン・シャーの監督第1作は、残念ながらとても弱い作品になってしまっていた。

 4つのストーリーの内で最も繊細に描写されていたのは、ラージューバーイーとターラーの物語であろう。移民斡旋を生業としていたラージューバーイーは、19年前に別れた妻の娘パーヤルを米国へ送る仕事を請け負う。しかし、ターラーがどこからその資金を調達して来たのか不安になったラージューバーイーは、ターラーの家を訪ねる。すると、ターラーは飲んだ暮れの夫に売春させられていることを知ってしまう。遂に夫を見限ったターラーは、家を出てラージューバーイーのオフィスに住むようになる。このオフィスでの二人のやり取りが、映画中最もロマンティックなシーンであった。また、ラージューバーイーはパーヤルが自分の娘であることに勘付く。彼はターラーから受け取った金を全て彼女に返し、責任を持ってパーヤルを米国に送り届けることを約束するのだった。

 その他3つのストーリーはまとまりに欠けた。サリームとナムラターの関係、ラーフルとクシュブーの関係や、ヘーマントの家族の状況は説明不足で訳が分からなかった。サリームが911事件で死亡するプロットは、一般にイスラーム教徒のテロリストの仕業とされている911事件の被害者の中にはムスリムもいたんだ、ということを主張していると取ることもできるが、やはりそれも説得力に欠けた。

 だが、インド人がどのように米国のヴィザを取得しているのか、その様子を観察するのは興味深かった。特にティロッタマーがヴィザを取るシーンは面白い。女性が観光ヴィザを取得する際、面接で未婚だと言わないとどうもヴィザは下りにくいらしい。既婚の場合、米国に夫がおり、そのまま配偶者として住み込んでしまう可能性があるからだ。また、ラージューバーイーが密かに行っていた米国への移民の斡旋業は、どうやら実際に存在するようだ。例えば以前、パンジャービー・シンガーのダレール・メヘンディーが、海外ツアーの際にバックダンサーと称して移民希望者を非合法に海外へ連れて行ったとして逮捕されたことがあった。

 多くの俳優が登場したが、その中でも光っていたのはやはり既に名声が確立された俳優たちだった。具体的には、パレーシュ・ラーワル、コーンコナー・セーンシャルマー、イルファーン・カーンなどである。アーイシャー・ターキヤーやジミー・シェールギルは活躍の場が限られていたが、それぞれ無難な演技をしていた。その他、あまり見ない俳優たちも多数出演していた。その中ではラトナー・パータク・シャー、シャハーナー・ゴースワーミーなどが良かった。

 一応、映画の冒頭で、「これは実話に基づいたストーリーです」との注意書きが出るが、題名が「こうだったらどうだっただろう」という、いかにも仮定的なものなので、本当に全てが全て実話なのか疑わしい。ただ、搭乗券をなくして飛行機に乗れなったためにテロで死なずに住んだティローッティマーの話は、逆に現実感があった。人生何が幸いするか分からないものである。

 名優ナスィールッディーン・シャーが撮った911事件を題材とした映画ということで、かなり期待をしてはいたのだが、オムニバス形式だったのが裏目に出て、内容があまりない映画になってしまっていた。次回作に期待である。