Ab Tumhare Hawale Watan Sathiyo

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Ab Tumhare Hawale Watan Sathiyo
「Ab Tumhare Hawale Watan Sathiyo」

 クリスマスの今日、PVRアヌパム4で2004年12月24日公開の新作ヒンディー語映画「Ab Tumhare Hawale Watan Sathiyo」を観た。ここ数年の内に急速にインドのクリスマスがクリスマスらしくなって来ているように感じる。例えば、PVRの店員はサンタクロースの帽子をかぶっていたし、レストランではクリスマスの特別メニューが用意されるのは当たり前となっている。

 「Ab Tumhare Hawale Watan Sathiyo」とは、「諸君、祖国は君たちに託したぞ」という意味。題名からも分かるように、愛国主義的映画である。監督は、「Gadar: Ek Prem Katha」(2001年)のアニル・シャルマー監督。音楽はアヌ・マリク。キャストは、アミターブ・バッチャン、ボビー・デーオール、アクシャイ・クマール、ディヴィヤー・コースラー(新人)、カピル・シャルマー(新人:監督の弟)、サンダーリー・スィンハー、ダニー・デンゾンパ、アーシュトーシュ・ラーナー、ナグマーなど。

 1971年、アマルジート・スィン少将陸軍(アミターブ・バッチャン)と息子のヴィクラマジート・スィン海軍中佐(ボビー・デーオール)は第3次印パ戦争に従軍するが、ヴィクラマジートは殉死してしまう。ヴィクラマジートの息子クナール(ボビー・デーオール)も陸軍に入隊するが、不真面目な性格は直らなかった。

 ジャイサルメールに駐屯していたクナールは、シュエーター(ディヴィヤー・コースラー)という女の子と出会い、恋に落ちる。シュエーターはラージーヴ少佐(アクシャイ・クマール)と結婚したが、結婚式の日にラージーヴはジャンムー&カシュミール州に召集され、そのまま帰らぬ人となってしまった。クナールはシュエーターに結婚を申し込み、彼女もそれを受け容れようとしたときに、死んだはずのラージーヴが帰って来る。ラージーヴはパーキスターン軍に2年間捕われていたのだが、何とか脱走して帰って来たのだった。一方、クナールはジャンムー&カシュミール州の駐屯地に異動となった。偶然、クナールの上官はラージーヴだった。

 クナールはテロリストの基地壊滅で戦果を上げるものの、その戦闘により戦友トリローク(カピル・シャルマー)を失う。実はその戦果のほとんどもトリロークの勇敢な行動によるものだった。クナールは自己嫌悪に陥る。クナールはラージーヴがシュエーターの夫であることも知り、彼女を諦めることを決意する。

 そんな中、パーキスターンの政治家スィカンダル・カーン(アーシュトーシュ・ラーナー)がアマルナート・ヤートラー(ジャンムー近郊のヒンドゥー教聖地巡礼)に参加するという印パ親善イベントが行われた。しかしスィカンダルの目的は親善ではなく、大規模なテロにより印パの仲を永久に切り裂いて金儲けをするというものだった。アマルジートはスィカンダルの意図を知っていながらも、親善イベントなので中止することができなかった。しかし、クナールの活躍により爆弾テロは阻止された。

 2001年の大ヒット作「Gadar: Ek Prem Katha」の監督の作品であり、オールスターキャストに近い顔ぶれだったため、ある程度の質を期待していたのだが、全く期待外れの観る価値のない映画だった。印パ友好に捧げられた映画とのことだが、ここまでパーキスターンが悪く描かれていて、どうして友好などが生まれようか?完全にインド人の愛国心を想起させるための映画である。「LOC Kargil」(2003年)と同じく、日本人には全然楽しめない映画だった。

 ストーリーに全然ひねりがなく、戦闘シーンにも全く緊迫感がなかったが、アミターブ・バッチャン、アクシャイ・クマール、ボビー・デーオールなどの俳優の演技は悪くはなかった。アニル・シャルマー監督の弟カピル・シャルマーは、デビュー作ながら頑張ってはいたのだが、顔がスクリーンで映えないのであまり将来性がなさそうだ。もう一人の新人ディヴィヤー・コースラーはなかなかの演技力と魅力があった。

 ロケ地には見るべきものがあった。前半で登場するのはラージャスターン州ジャイサルメール。パーキスターンとの国境に近いため、軍の重要な駐屯地となっている。毎年2月に行われるデザート・フェスティバルが再現されており、ジャイサルメールの魅力が存分に映像になっていた。ジャイサルメールは今まで多くの映画のロケ地となってきたが、終盤に登場するアマルナートは珍しい。アマルナートはジャンムー&カシュミール州にあるヒンドゥー教の重要な聖地で、標高3,888mの山の上にある洞窟の中に、氷でできたシヴァリンガが祀られている。だが、テロ多発地帯としても有名であり、この映画でもテロリストの標的となっていた。それでも巡礼者の数は減らないというから、信仰の力というのはすごい。このアマルナートを映画のロケ地としたのは、この映画の最大の挑戦だったと言っていいだろう。僕はまだ行ったことがないので、アマルナートの洞窟やリンガを見ることができて少し感動した。これだけがこの映画の見所かもしれない。アマルナートの氷製リンガがスクリーンに映し出されたときには、観客の中には手を合わせる人がいた。

 アマルナート・ヤートラーのシーンで、松葉杖をついた人が踊るシーンがあるが、その人はアクシャイ・クマールの友人だとか。アクシャイ・クマールが監督に頼んで、片足が不自由な友人に小さな役をあげたそうだ。

 結論として、「Ab Tumhare Hawale Watan Sathiyo」は、見た目には大作映画に見えるが、観ると損するので観ない方が吉であろう。