LOC Kargil

2.0

 アハマダーバードのアーシュラム・ロードにあるシネマ・コンプレックス、シティ・ゴールドで、2003年12月25日に封切られた「LOC Kargil」を観た。シティ・ゴールドのチケットは100ルピー。5スクリーンの大規模なシネコンだが、デリーのシネコンに比べたら格は落ち、館内の売店ではロクなものが売られておらず、座席も不潔ではないものの、くすんだ印象を受けた。映像、音響はまあまあの程度。

 「LOC Kargil」は1999年にジャンムー&カシュミール州で起こったカールギル紛争を題材にした映画である。監督はJPダッター。キャストは近年のヒンディー語映画の中では最も豪華で、有名な俳優を挙げるだけでも、男優はサンジャイ・ダット、スニール・シェッティー、アジャイ・デーヴガン、マノージ・バージペーイー、ナーガールジュナ、サイフ・アリー・カーン、アクシャイ・カンナー、アビシェーク・バッチャン、サンジャイ・カプール、女優はラヴィーナー・タンダン、マヒマー・チャウダリー、タブー、ラーニー・ムカルジー、カリーナー・カプール、ナムラター・シロードカル、イーシャー・デーオール、イーシャー・コッピカルなどなど枚挙に暇がない。よくこれだけ集めたな、という感じだ。

 1999年5月、ジャンムー&カシュミール州のカールギル付近の停戦ライン(Line of Control:LoC)を警備するインド軍のパトロール隊が相次いで消息を絶つという事件が発生した。何者かが停戦ライン上にある山岳地帯を占拠し、インド側に向けて発砲、砲撃を繰り返すようになった。ジャンムー&カシュミール州各地に展開していたインド軍の精鋭たちがカールギルに集結し、事態の収拾に当たった。相手は高所に陣取っており、また彼らが何者なのか、どれだけの戦力なのか全く情報がなかった。しかし、パーキスターンの正規軍が関与していることが疑われた。インド軍は犠牲をものともせずに謎の武装勢力たちの拠点を次々と陥落させていき、最後の要害タイガー・ヒルの奪回に成功する。こうして1999年7月、インド軍は武装勢力たちを停戦ラインから追い出すことに成功したのだった。

 あらすじにしてしまうと非常に短い、つまり内容があまりない映画だった。停戦ラインを越えてインド側に侵入した武装勢力を掃討する作戦が冗漫に描かれており、最後に作戦が成功するという、何のひねりもない筋書きである。登場人物が多い映画というのは、各キャラクターの特徴付けが難しいのだが、その点ではこの映画は各俳優の個性をうまく引き出して色づけをすることに成功していたと思う。もっとも、それは男優に限っての話で、女優たちははっきり言って単なる飾りに過ぎなかった。各兵士たちには妻、家族、恋人などがあって、それぞれ大切な人々の不安を背に戦場に赴いているのだが、それは特に目新しいことではなく、描写もいい加減だったために、何の感慨も沸かなかった。

 インドの文学を読むと、クシャトリヤ(戦士階級)の妻というのは、戦士である夫よりも勇猛果敢であることが多く、夫を戦場に送り出すときに「必ず生きて帰って来て」などとは言わない。「勝利か、死か」である。負けて生き恥をさらすような選択肢は元々インドのクシャトリヤ・カーストにはない。男にも、女にも。もし夫が戦場から逃げ帰って来たり、戦場に行くことを拒んだりすると、妻は女の装飾品を夫に投げつけて、自ら馬に乗って武器を取って戦場へ駆け出したという。ラクシュミーバーイーという、「インドのジャンヌ・ダルク」と称される勇猛果敢な女性は歴史上有名である。そしてもし男たちが戦争で負けたら、女性たちは自ら火の中に飛び込んで命を絶ったという。こういうインドの女性の強さが描かれていたらもっと良かったのだが、「LOC Kargil」に登場する女性たちはただ家で涙を浮かべながら、愛する人の無事を案じているだけのステレオタイプな女性像でしか描かれていなかった。

 この映画の一番いけないところは、敵の基地を襲撃するシーンがワンパターンであることだ。各部隊が敵の各拠点を攻撃し、それぞれの男優たちの見せ場が用意されているのだが、どれも「それ~突撃~!うお~!」というごり押しの描写で、全くひねりがない。結局、各男優たちの勇猛な行動のおかげで敵の基地を占拠することに成功して喜ぶのだが、味方にも犠牲者が出て、それを悼んで悲しむ、というパターンの繰り返しである。また、地名は一応出てくるものの、どの部隊がどこをどこから攻撃しているのかよく分からない。もっと地図などをうまく使って詳細を説明したら、戦争ドキュメンタリーの要素も持った映画にもなったと思う。

 興味深かったのは、インド軍が出身地で割り振られているのが分かったことだ。特に山岳戦となると、グルカーと呼ばれるネパール人兵士たちの部隊が強い。実際のカールギル戦争でも、グルカー兵たちは大活躍をしたようだ。その他にもハリヤーナー州のジャート兵や、パンジャーブ州のターバンを巻いた兵士、ムスリムの部隊など、いろいろ登場した。

 ヒンディー語の四文字言葉にあたる「ベヘンチョー」という言葉が、仲間を撃たれて怒った兵士たちなどから連発されるのだが、「チョー(チョード)」の部分がカットされていた。カットされるくらいだったら、セリフに入れなければよかったのに、と思うのだが。その他の侮蔑語も連発される。

 退屈な映画ではあるが、男優たちが水を得た魚のように生き生きと演技していたのは高く評価できた。多分みんな、戦争物の映画に出て見たかったのだと思う。確かに戦争映画というのは男の血をたぎらせる。「こういう映画に一度出てみたかったんだよ!」という顔をして楽しそうに演技をしているのが印象的だった。また、その他のエキストラたちはどうやら本物の兵士のようだ。彼らももちろん「やったぜ、映画に出演できるぜ!」という感じで目を輝かせて演技をしていた。

 インド人はこういうインド賞賛映画が大好きなので、内容はないものの現在ヒットしている。だが、日本人が観ても眠たくなるだけの映画だから注意が必要である。


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