Gol Maal

4.0
Gol Maal
「Gol Maal」

 1979年4月20日公開の「Gol Maal」は、ヒンディー語映画史に残るコメディー映画として愛され続けている作品である。題名は「Golmaal」や「Gol-Maal」などとつづられることもある。「混乱」とか「詐欺」といった意味である。

 監督は「Anand」(1971年)や「Chupke Chupke」(1975年)などで知られる巨匠リシケーシュ・ムカルジー。脚本はサチン・ボウミク、セリフはラーヒー・マースーム・ラザー。音楽はRDブルマン、作詞はグルザール。

 主演はアモール・パーレーカル。他に、ビンディヤー・ゴースワーミー、ウトパル・ダット、デーヴィッド、デーヴェーン・ヴァルマー、ディーナー・パータク、マンジュー・スィン、シュバー・コーテー、ユーヌス・パルヴェーズ、ケーシュトー・ムカルジーなど。また、アミターブ・バッチャン、レーカー、ヘーマー・マーリニー、ズィーナト・アマーン、アルナー・イーラーニー、アンジャン・シュリーヴァースタヴ、オーム・プラカーシュが特別出演している。

 ボンベイに姉のラトナー(マンジュー・スィン)と住むラームプラサード・ダシュラトプラサード・シャルマー(アモール・パーレーカル)は、試験に合格し、公認会計士になった。叔父のケーダール(デーヴィッド)に紹介でラームプラサードはウルミラー・トレーダーズ社の就職面接を受けることになる。社長のバワーニー・シャンカル(ウトパル・ダット)は変わった人物で、髭のない人物を信用しておらず、スポーツにうつつを抜かしている若者も嫌いだった。ケーダールの助言通り、クルター・パージャーマーを着て面接会場に現れたラームプラサードは、スポーツのことなど知らない振りをして、品行方正な若者を演じる。すっかりだまされたバワーニーはラームプラサードを即採用する。

 ある日、ラームプラサードは「母親が病気になった」という嘘を使って仕事を早退し、友人たちと一緒にホッケーの試合を観戦に行った。ところがバワーニーも観戦に訪れており、ラームプラサードの姿を見てしまう。翌日、バワーニーはラームプラサードを問い詰める。ラームプラサードは、彼が見たのは双子の弟ラクシュマンプラサードだと口から出任せを言う。バワーニーはそれを信じてしまい、遊びほうけているラクシュマンプラサードを更生させたいと考え、ラクシュマンプラサードを自宅に呼ぶ。

 ラームプラサードは、口髭を剃り、派手な服装を着て、ラクシュマンプラサードの振りをしてバワーニーの家に行く。バワーニーにはウルミラー(ビンディヤー・ゴースワーミー)という娘がおり、ラクシュマンプラサードに彼女の音楽教師を依頼する。ウルミラーはかつてラームプラサードの公演を見ており、すぐにラクシュマンプラサードを気に入る。こうしてラームプラサードは、平日にはウルミラー・トレーダーズで付け髭を付けて公認会計士として働き、休日にはシャンカル家で付け髭を外してウルミラーを教えることになった。

 それからしばらくして、バワーニーはラームプラサードの母親に会いたいと言い出す。そこでラームプラサードは、映画俳優をするデーヴェーン・ヴァルマー(本人)に頼み、母親俳優カムラー・シュリーワースタヴァ(ディーナー・パータク)を紹介してもらう。カムラーはバワーニーの前でラームプラサードとラクシュマンプラサードの母親ヴィムラーを演じる。その後、バワーニーはパーティーで着飾ったカムラーの姿を見るが、カムラーは双子を理由に言い逃れる。

 そうこうしている内にラクシュマンプラサードとウルミラーは恋仲になる。それを知ったバワーニーはラームプラサードに言ってラクシュマンプラサードを解雇するが、それでもウルミラーはラクシュマンプラサードとデートをしていた。バワーニーは娘をラームプラサードと結婚させようと考えていた。そこで、ラームプラサードをウルミラーの家庭教師にする。だが、ウルミラーは退屈なラームプラサードを嫌っていた。

 娘の抵抗はあったものの、バワーニーは無理やり彼女をラームプラサードと結婚させようとする。その夜、ウルミラーは家出し、シャンカル家を訪ね、ラトナーに手紙を渡す。彼女は手紙の中でラクシュマンプラサードに駆け落ちを求めた。翌朝、バワーニーもシャンカル家にやって来て、ラクシュマンプラサードの居場所を聞く。ラームプラサードは、通報されては困るため、バワーニーに対し3時間以内にウルミラーを連れ戻すと約束する。

 ラームプラサードはウルミラーに会い、ラームプラサードとラクシュマンプラサードは同一人物だと明かす。ウルミラーは自宅に戻り、父親に謝って、ラームプラサードとの結婚を承諾する。ところが、その後にバワーニーはラームプラサードの髭が付け髭であることに気付き、ラクシュマンプラサードがラームプラサードを殺してラームプラサードに成りすましていると考える。そして拳銃を取り出して彼を撃とうとする。ラームプラサードはウルミラーを連れて自動車で逃げる。バワーニーも自動車に乗って追いかけるが、誤って警察の車両にぶつかってしまい、しかも拳銃が発見され、逮捕されてしまう。警察官(オーム・プラカーシュ)から泥棒扱いされるが、彼を知っている別の警察官が現れ、何とか釈放される。

 バワーニーが自宅に戻ると、ラームプラサードとウルミラーの婚姻の儀式が終わっていた。ケーダールはバワーニーに、ラームプラサードとラクシュマンプラサードが同一人物であることを明かし、一件落着となる。

 「Chupke Chupke」は悪ふざけで正体を隠して相手をだますような物語だったが、「Gol Maal」はより仕方のない状況から付いた嘘から物語が始まっており、悪意は少なかった分、より良心の呵責なく鑑賞することができた。双子でない人物が一人二役で双子を装うプロットや、付け髭などのちょっとした小道具でアイデンティティーを変えるギミックなど、古典的なコメディーの王道を行ってはいるが、リシケーシュ・ムカルジー監督のまとめ方がとてもうまく、健康的なコメディー映画に仕上がっていた。

 主人公のラームプラサードは、大のスポーツ好きだったが、バワーニーの会社に就職するため、あえてスポーツ好きを隠し、面接を受けていた。なぜならバワーニーはスポーツにうつつを抜かす若者を嫌っていたからだ。首尾良く就職できたラームプラサードは、会社を早退してホッケーの試合を観戦に行くが、そこでバワーニーに見つかってしまう。彼はクビを逃れるため、ホッケーの試合でバワーニーが見たのは双子の弟ラクシュマンプラサードだと口から出任せを言う。口から出任せではあったが、バワーニーが想定外に真剣に信じてしまったため、ラームプラサードはラクシュマンプラサードを演じなければならなくなってしまう。それが物語の導入になっている。決して悪意で嘘を付いたわけではなく、保身のために咄嗟に付いた嘘が雪だるま式に大きくなっていってしまったのだ。

 「Gol Maal」の笑いが健康的だった理由は、嘘を信じ込まされているバワーニーが決して清廉潔白ではなく、むしろダブルスタンダードな偽善者だったからでもある。新入社員にスポーツを禁じておきながら、自身はホッケーの試合を観戦しに行っていた。なぜ彼が表の顔と裏の顔を使い分けていたのかはよく分からなかったが、バワーニーが聖人君子ではなかったことで、素直に彼がだまされる様子を笑うことができるようになっていた。

 リシケーシュ・ムカルジー監督のコメディー映画に特徴的なのは、だまされた人物がだまされたことが分かったときに、割と素直にそれを受け入れることだ。おかげで一悶着なくハッピーエンドに移行する。バワーニーもラームプラサードとラクシュマンプラサードが同一人物であることを知って、変に憤ることなく了承する。しかも、髭の有無にこだわりすぎていたことを反省し、自らの髭も剃ってしまう。外見で人を判断することの愚かさを戒めるメッセージになっていたが、素直すぎる終わり方だとも感じた。

 音楽の使い方も相変わらずうまい。まずはタイトル曲「Gol Maal Hai Bhai Sab Gol Maal Hai」で心を掴んでくる。この曲が流れただけで、これから何か面白いことが起こりそうな気がしてくる。1990年代を代表するコメディー映画「Hera Pheri」(2000年)でもこの曲が引用されていた。また、「Aanewala Pal Jane Wala Hai」は、映画の中で2回使われ、それぞれ深い意味が込められている。直訳すると「やがてやって来る瞬間はすぐに過ぎていってしまうだろう」だが、これには偽のアイデンティティーを持ってウルミラーに会ったラームプラサードの気持ちが込められている。

 「Chupke Chupke」に引き続き、セリフでも遊んでいる。ラームプラサードはバワーニーの前でわざと「純ヒンディー語」を話すが、これは「Chupke Chupke」の主人公パリマル・トリパーティーが運転手ピャーレーを装っているときにやっていたことと似ている。

 「Gol Maal」が後世のインド映画に与えた影響は大きい。他言語でリメイクがされた他、ヒンディー語のコメディー映画でも何度も参照されてきた。たとえばデーヴィッド・ダワン監督の「Chor Machaaye Shor」(2002年)やローヒト・シェッティー監督の「Bol Bachchan」(2012年)などに「Gol Maal」の影響を見出すことができる。

 「Gol Maal」は、巨匠リシケーシュ・ムカルジーが才能を遺憾なく発揮したコメディー映画のひとつであり、インドのコメディー映画に多大な影響を与えた名作である。嘘を付いたりだましたりすることで成立する笑いではあるが、見事に健康的で上品なコメディー映画に仕上がっている。必見のコメディー映画だ。


Golmaal ( गोलमाल ) Hindi Comedy Full Movie | Amol Palekar, Bindiya Goswami, Hema Malini