2007年に「Dhamaal」と言うコメディー映画がありセミヒットとなった。2007年のヒンディー語映画界は「Om Shanti Om」、「Chak De! India」、「Jab We Met」などに代表されるように当たり年で、コメディー映画だけを取ってみても、「Welcome」、「Partner」、「Heyy Babyy」など名作揃いである。その中で「Dhamaal」は影が薄い存在であったのだが、監督・プロデューサーのインドラ・クマールは「Dhamaal」の成功に気を良くして、主要キャストそのままに続編を制作することを決めた。本日(2011年6月24日)、続編「Double Dhamaal」が公開された。前作同様ドタバタコメディー劇で、サンジャイ・ダット、リテーシュ・デーシュムク、アルシャド・ワールスィー、ジャーヴェード・ジャーフリー、アーシーシュ・チャウダリーと言ったキャストに変化はない。また、前作とストーリー的なつながりがある続編映画となっている。
監督:インドラ・クマール
制作:インドラ・クマール、アショーク・ターケリヤー
音楽:アーナンド・ラージ・アーナンド
歌詞:アーナンド・ラージ・アーナンド
振付:ガネーシュ・アーチャーリヤ、レモ・ディスーザ
出演:サンジャイ・ダット、リテーシュ・デーシュムク、アルシャド・ワールスィー、ジャーヴェード・ジャーフリー、アーシーシュ・チャウダリー、マッリカー・シェーラーワト、カンガナー・ラーナーウト、サティーシュ・カウシク、ザーキル・フサイン、ハリー・ジョーシュ
備考:PVRプリヤーで鑑賞。
前作で1億ルピーを逃した怠け者四人組、ロイ(リテーシュ・デーシュムク)、アディ(アルシャド・ワールスィー)、ボーマン(アーシーシュ・チャウダリー)、マーナヴ(ジャーヴェード・ジャーフリー)は、共に1億ルピーを追ったライバルのカビール(サンジャイ・ダット)が大金持ちになっているのを見て驚き、偵察し始める。カビールは大会社の社長になっており、高級車に乗り、大豪邸に住み、カーミニー(マッリカー・シェーラーワト)という美しい妻がいた。また、キヤー(カンガナー・ラーナーウト)という美しい秘書までいた。 しかし、四人は偵察の結果、カビールが妻の資産のおかげでここまで裕福になれたと考える。また、カビールにはグラーボーという愛人がいることまで発覚する。四人はそれをネタにしてカビールを脅迫する。仕方なくカビールは四人を会社のパートナーにする。ところがこれは全てカビール、カーミニー、キヤーの策略であった。実はカーミニーはカビールの許嫁で、キヤーは彼の妹であった。 カビールの会社はとある土地の買収し、その地鎮祭を行った。四人が地面を掘ると、そこから原油が湧き出た。実はそれは予め隠しておいたタンクローリーから流れ出たものであったが、単純な四人は石油を掘り当てたと大喜び。カビールはその土地に精油所を建設することを決める。だが、そのためには25億ルピーの投資が必要だった。四人は報酬目当てで投資者を探す。 四人が目を付けたのがマフィアのドン、バーターバーイー(サティーシュ・カウシク)であった。バーターバーイーを例の土地に案内し、原油が吹き出ている様を見せる。目の色を変えたバーターバーイーは即座に25億ルピーを用意し、四人に渡す。四人は早速その金をカビールに渡す。 ところがその日からカビール、カーミニー、キヤーは姿をくらましてしまう。オフィスだった場所はもぬけの殻となっており、原油が吹き出ていた土地にはただの更地となっていた。四人は騙されたことに気付く。怒ったバーターバーイーとその部下たちは4人を追いかけるが、四人は逃げる途中でモースィン(ザーキル・フサイン)と言う別のマフィアをたまたま助けることになる。逃げ切った四人はモースィンに謝礼として20万ルピーを渡される。また、モースィンはこれから船でマカオへ向かうところであった。四人はこのままインドに留まるよりも一緒にマカオへ高飛びすべきだと考え、無理を言ってモースィンに同行する。 マカオに上陸する前に警察に見つかって船を飛び降りることになったが、そのとき泳げないモースィンは溺れてしまう。四人はそんなことは気にせずマカオを楽しもうとするが、そのときカビール、カーミニー、キヤーがリムジンに乗って颯爽とカジノへ降り立つのを目撃する。どうやらカビールは四人から騙し取った25億ルピーを使ってカジノのオーナーになったようであった。四人はカビール、カーミニー、キヤーに復讐することを誓う。 まずアディはスィク教徒の扮装をし、ガンター・スィンを名乗ってカビールに近づいて秘書の座を得る。次に、ロイはインド系黒人トゥキヤー・カーレーに扮してキヤーに近づき、彼女の心を掴む。また、ボーマンとマーナヴはトゥキヤーの哀れな弟たちを演じた。さらに、カビールのカジノがニューイヤー・パーティーのために100億ルピーを必要としていることを知ったロイは、大富豪ヒーラーバーイーに扮してカビールに近づき、投資を持ち掛ける。ヒーラー・バーイーはカビールの信頼を勝ち取る。同時にヒーラーバーイーの妻に扮したボーマンは事あるごとにカビールを誘惑する。 準備が整ったところで四人は本格的に復讐を開始する。まずロイはキヤーの心をうまく誘導し、カビールと絶縁させ、彼女と結婚式を挙げる。そして洋上で初夜を迎えようと言うとき、カビールから送られた刺客に扮したアディによって殺される演技をする。また、アディはカビールの飲む酒に薬を混ぜ、ヒーラーバーイーの妻と一夜を過ごしたことにし、それをカーミニーに密告する。カーミニーは怒って家を出て行ってしまう。最後に、ヒーラー・バーイーからの投資話が破綻したことでカビールはライバル・カジノのオーナー、ジョニー・バンゾラ(ハリー・ジョーシュ)から1千億ルピーを借りることになるが、四人は協力してその金を盗み出す。 全てを失ったカビールは自宅で打ちひしがれていた。そこへ四人が現れ、今までの種明かしをする。ところがペテンにかけてはカビールの方が何枚も上手であった。実はモースィンから彼の息の掛かった手下であり、4人をマカオに連れて来るのもカビールの計画の一部であった。四人の行動は全て筒抜けで、今までカビール、カーミニー、キヤーは四人に騙された振りをしていたのだった。当然1千億ルピーは既に四人の手中にはなかった。しかもジョニーが四人のところへ1千億ルピーを取り返しに向かっているところだった。カビールはせめてもの情けとして四人のためにタクシーを用意する。ところがそのタクシー運転手はバーターバーイーであった。250億ルピーを騙し取られてマフィアの道から足を洗わざるえ得なくなったバーターバーイーはカビールの誘いでマカオへ来てタクシー運転手をしていたのだった。ちょうどそこにはジョニーも到着する。四人は一目散に逃げ出し、次作での復讐を誓う。
前作「Dhamaal」は安っぽさが残るコテコテのコント劇映画であったが、続編となる本作「Double Dhamaal」は、前作のヒットのおかげで資金が集まりやすかったのか、海外ロケあり、アイテムナンバーあり、何よりヒロインありと、派手さがあった(前作にはヒロインすらいなかった!)。インドのコメディー映画は、ひとつひとつのコメディーシーンに力を入れすぎて全体のストーリーがおざなりになってしまうことが多々見られるのだが、「Dhamaal」と同様に「Double Dhamaal」も一応ストーリーの流れに大きな破綻はなく、スッキリしない部分は少なかった。あとは、主演の四人が中心となって織り成す余りに騒々しく馬鹿馬鹿しい笑いを受け容れられるかどうかである。僕は大いに楽しめた。
主演四人組の中ではリテーシュ・デーシュムク、アルシャド・ワールスィー、ジャーヴェード・ジャーフリーの三人が文句なく好演していた。これら三人と比べると数段格の落ちる男優アーシーシュ・チャウダリーは、女装までしてチャンスを物にしようとしていたが、気味が悪いだけだった。はっきり言って彼がいなくても十分成り立つ映画である。サンジャイ・ダットは貫禄の演技。演技力を要するようなシーンは少なかったが、存在感で押し通していた。また、サンジャイ・ダットとアルシャド・ワールスィーと言えば「Munna Bhai」シリーズでのゴールデンコンビが有名だが、それを意識してか本作では二人が絡むシーンが多かった。
ヒロインは2人。マッリカー・シェーラーワトとカンガナー・ラーナーウトである。この二人は意外にもスクリーン上で相性が良かった。マッリカーは抑え気味の、カンガナーは派手気味の演出でバランスが保たれていたように感じる。マッリカーはアイテムナンバー「Jalebi Bai」でアイテムガール出演も。「Dabangg」(2010年)の「Munna Badnaam」(踊り:マラーイカー・アローラー・カーン)と「Tees Maar Khan」(2010年)の「Sheila Ki Jawani」(踊り:カトリーナ・カイフ)に続く、女性名がタイトルに入ったアイテムソングである。マッリカーも上記の二人に負けじと誘惑的なダンスを踊っていた。二番煎じの雰囲気は否めないが、「Jalebi Bai」は単体でも映画中の見所のひとつであるし、このダンス中にストーリー上重要な出来事も起こるので見逃せない。また、一瞬だがマッリカーが「Munna Badnaam」を踊るシーンもある。
音楽はアーナンド・ラージ・アーナンド。既に「Jalebi Bai」については触れた。それ以外でもパワフルなダンスナンバーが多く、映画に派手さを加えていた。だが、印象に残る曲は少ない。ちなみに「Oye Oye」における「オェ、オェ」というコーラスは「Tridev」(1989年)の「Tirchi Topiwale」からの流用である。映画中には過去のヒット映画から映画音楽が流用されているシーンがいくつかあった。「Munni Badnaam」については触れたが、他には例えば、マッリカー・シェーラーワトの出世作「Murder」(2004年)から「Bheege Honth Tere」が使われたりしていた。
「Double Dhamaal」は、題名が示すように前作「Dhamaal」から2倍かそれ以上パワーアップしたコメディー映画。サンジャイ・ダット、リテーシュ・デーシュムク、アルシャド・ワールスィー、マッリカー・シェーラーワト、カンガナー・ラーナーウトなど、スターパワーもあるし、ストーリーも意外に破綻が少ない。コテコテのギャグが多いので言語が分からなくてもある程度楽しめるだろう。前作から一応ストーリーがつながっているので、前作を観てから本作を観た方がより楽しめるかもしれない。