リアルな軍隊映画

 国境で国を守る兵士たちを主人公にした映画は、容易に愛国主義を喚起することができ、興行的に有利に働くことが多いため、ヒンディー語映画界では好んで作られている。戦争を題材にした映画については既に戦争の映画にまとめている。

 2022年1月15日付けのデリー・タイムスに、退役軍人から見たリアルな軍隊映画について特集がされていた。実際に軍人生活を送った人々の目に、ヒンディー語の軍隊映画はどう映るのだろうか。

 記事では、数人の退役軍人が思い思いに軍隊映画について語っているのだが、彼らが共通して注目するのは、武器、装備、制服の細部や、部隊の動きなどのようである。これらを基準にして、極力リアルな軍隊生活や戦争の様子が再現された映画を挙げると、以下のものになるようだ。

 これらの中で、軍人の目からもリアルな軍隊生活が描かれているのは、「Lakhsya」と「Uri」だという。「Uri」では軍事作戦の様子もかなり緻密に描写されていたが、それも現実にかなり近いようである。また、かなり昔の映画にはなるが、中印戦争での敗戦直後に作られた「Haqeeqat」が戦争映画として非常に高い評価を受けている。

 ところで、ヒンディー語の軍隊映画では、軍人たちが酒を飲んで歌って踊ったりする場面がよく出て来るが、実際の軍人に言わせれば、軍人たちは普段そんなことはしていないという。映画では国境や戦場で宴会を開いているシーンまであるが、それは絶対にないようだ。ヒンディー語映画を観ていると、確かにインドの軍人というのは、明日をも知れない我が身を一時でも忘れるために毎晩酒を飲んで過ごしているような印象を持ってしまう。それは映画が勝手に作り出した虚像のようだ。

 また、ヒンディー語の軍隊映画を観ていると、軍人は戦争しかしていないように感じられてしまうのだが、実際の軍人は、戦ったり訓練したりするだけでなく、勉強や研究もしっかりしているという。残念ながら、ヒンディー語映画では、軍人のこういう側面はほとんど取り上げられない。映画として映えないからであろう。

 とはいっても、近年のヒンディー語映画界では軍隊映画や戦争映画を作る際に、退役軍人などを国防コンサルタントとして雇う慣習が定着しつつあるようである。近年公開された「Uri」や「Shershaah」がリアルな軍隊映画として挙げられているが、これらは国防コンサルタントの助言の賜物なのかもしれない。