インドの通貨はルピー(Rupee/Rupees)である。略称では、単数形が「Re.」、複数形が「Rs.」と書かれる。「Indian Rupees」の略で「INR」と書かれることもある。2010年からはルピー記号「₹」が制定され、使われるようになった。ヒンディー語では「रुपया」という。補助通貨単位は「パイサー/Paisa/पैसा」で、100パイサー=1ルピーとなる。
インド映画はインドを舞台にすることが大半であり、そうであるからには、映画の中に出て来る通貨の単位はルピーとなる。
映画評などでお金の話題が出て来たときに、いちいち円換算して提示していないが、特にインドを旅行したことのない人は、その額が日本円でいくらぐらいのことなのか、知りたいと思うことがあるだろう。
Filmsaagarで取り上げている映画は、21世紀の映画がほとんどであることから、21世紀にルピーの価値がどのように変化したのかを、IMFのデータを基にグラフでまとめてみた。
このグラフはあくまで為替市場の相場であり、実際に両替店で日本円をルピーに両替をするときには、もう少し手に入るルピーの額は少なくなる。筆者が2001年にインドで住み始めたとき、「1ルピー=3円」の肌感覚があった。1万円を両替して、3,000ルピーはまず手に入るとして、それ以上もらえる端数分はボーナスだと考え、ついつい散財してしまうこともあった。
それがインド留学時代終盤の2010-13年頃には、1万円を両替すると4,000ルピー以上に換金されるようになっていた。リーマンショックを契機にルピーの価値が下落したのである。2020年代には「1ルピー=1.5~2円」に落ち着いているので、1万円は5,000ルピー以上に換金されることになる。「1ルピー=3円」時代を生きてきた筆者の目から見たら大変お得に感じる。
よって、ルピーの価値を知りたいときは、映画の公開時期や、その映画の時間軸に合わせて「1ルピー=1.5~3円」の範囲で計算してもらえば、そのときの日本円での価値を算出することができるだろう。
もっと遡ってルピー円換算の推移を見てみると、1980年には1ルピー=28.8円、1985年には19.3円、1990年には8.29円、1995年には2.90円となっており、より急速なルピーの下落が見られる。それを思うと、21世紀に入ってからの変動は大したことがないといえるかもしれない。
なお、お金に関してインドで最近あった大事件と言えば、2016年の高額紙幣廃止である。それまでインドで流通していた1,000ルピー札と500ルピー札の高額紙幣が突如使用禁止となったのである。そのときの混乱はいくつかのヒンディー語映画でも描写されている。「Shubh Mangal Saavdhan」(2017年)、「Choked: Paisa Bolta Hai」(2020年)、「Cash」(2021年)、「Kuttey」(2023年)などである。逆に、高額紙幣廃止の話題が映画の中で出て来たら、それは2016年のことだと受け止めればよい。
通貨単位の話と併せて、「10万と1,000万」も併せて読むとさらに理解が深まるだろう。