Manorama Six Feet Under

4.0

 2007年9月21日公開の「Manorama Six Feet Under」は、ロマン・ポランスキー監督の米国映画「チャイナタウン」(1974年)の緩いリメイクである。

 監督は新人のナヴディープ・スィン。主演はアバイ・デーオール。他に、ラーイマー・セーン、グル・パナーグ、クルブーシャン・カルバンダー、サリカー、ヴィナイ・パータク、ブリジェーンドラ・カーラー、ナワーズッディーン・スィッディーキーなどが出演している。また、ヤナ・グプターが本人役で特別出演している。

 舞台はラージャスターン州にある架空の砂漠の町ラコート。サティヤヴィール・ランダーワー(アバイ・デーオール)は土木技術者だったが、贈収賄の容疑で停職中だった。彼は推理小説「Manorama」を出版した作家でもあったが、この処女作は全く売れなかった。サティヤヴィールは妻ニンミー(グル・パナーグ)と一人息子ラージューと共に公務員宿舎に住んでいた。

 ある晩、一人の女性が彼の家を訪ねてくる。灌漑大臣PPラートール(クルブーシャン・カルバンダー)の妻マノーラマーと名乗った。マノーラマーは夫の浮気を疑っており、彼に探偵を頼んだ。停職中で仕事がなかったサティヤヴィールはその仕事を引き受け、ラートールの家に忍び込んで、女性と密会している写真を盗撮する。そしてフィルムをマノーラマーに渡す。

 サティヤヴィールは、義兄で警官のブリジモーハン(ヴィナイ・パータク)と深酒して帰る途中、マノーラマーと再会する。そして彼女から「私の名前はマノーラマー。34歳」と言われる。サティヤヴィールは呆然とするが、翌日、マノーラマーがトラックに轢かれて死んだことを知る。新聞では自殺とされていた。また、マノーラマーは、ラートールの妻ではなく、NGOの職員だった。NGOは、ラートール大臣が関わる灌漑プロジェクトの不正を暴こうとしていた。

 事件に興味を持ったサティヤヴィールは、マノーラマーのルームメイト、シータル(ラーイマー・セーン)に会う。シータルはラートールの運営する孤児院で働いていた。また、サティヤヴィールはチンピラに暴行を受け、マノーラマーの最期の言葉を聞かれる。そして、何者かの襲撃を受けたシータルは、身を守るため、サティヤヴィールの家に転がり込んでくる。そのときちょうどニンミーとラージューはロータクの実家に帰っていた。

 サティヤヴィールは、ラートールが密会していた女性サミーラーと会う。彼女は、シータルと同じく、ラートールが運営する孤児院で働いていたが、実はラートールの妾の娘であった。サミーラーは、ラートールの主治医で恋人のアニル・ポッダールと共に、ラートールに自分が娘であることを認めさせようとしていた。だが、次のサティヤヴィールが彼らに会いに行ったとき、二人は殺された後だった。また、孤児院に問い合わせたところ、シータルという名の女性は数日前に死んだと言われる。サティヤヴィールが家に帰ると、シータルは、ラートールに会うように促す。

 ラートールはサティヤヴィールに、写真を渡すように言う。ラートールは、マノーラマーがジャイプルまで行って写真を現像していたのを思い出し、ジャイプルまで写真を撮りに行く。そしてそれをラートールに渡す。だが、それはラートールの求めるものではなかった。また、シータルを名乗っていた女性は、ラートールの妾ニートゥーであった。

 サティヤヴィールは、自分が書いた小説「Manorama」の32ページにヒントがあると思いつき、それを手掛かりにして、マノーラマーが生前に隠したもう1セットの写真を手にする。そこには、ラートールが孤児院の女児たちを性的に搾取する様子が写されていた。サティヤヴィールはそれをブリジモーハンに伝えるが、彼はサティヤヴィールを眠らせ、写真をラートールに渡す。だが、サティヤヴィールはラートールのもうひとつの秘密を知っていた。彼は肺癌に冒されており、余命あと少しだったのである。

 入り組んではいるがよく構成されたストーリーと、各世代の名優たちの絶妙な演技が織りなす、インド映画最高峰の犯罪映画である。長らく一滴も雨が降っていない渇いた大地で、うだつの上がらない主人公が大きな事件に巻き込まれるも、うまく切り抜けていく。一見、様々な要素がバラバラに散らばっているが、それらひとつひとつが結末への伏線になっており、最後にはひとつの束になって回収されるところは爽快だ。

 ただ、完全犯罪を描いた映画でもなく、追う側と追われる側の間で緊迫感ある頭脳戦が繰り広げられるわけでもない。主人公のサティヤヴィールは、推理小説を一冊出版しただけの土木技師であり、言わば素人だ。どちらかといえば、探偵ごっこをしている内に深みにはまっていってしまった感じである。また、それに対するラートールや、彼に遣わされた部下たちも、殺人こそすれ、サティヤヴィールをかなり自由に泳がせており、どこか牧歌的な印象を受ける。

 非常にいい俳優たちが揃っている映画だ。主演のアバイ・デーオールも良かったが、女優陣が豪華である。グル・パナーグは元ミス・インディアの女優だが、それ以上に知性と行動力で知られる女性で、ヒンディー語映画界で独自の地位を築いている。ラーイマー・セーンはベンガル・ビューティーの代表であり、ミステリアスな雰囲気のある女性役を演じさせたら右に出る者はいない。そしてサリカーは子役の頃から映画に出続けている息の長い女優だ。この3人の競演はそれだけで話題性がある。

 さらに、ヴィナイ・パータクやナワーズッディーン・スィッディーキーなどの個性派俳優が脇役として映画を盛り上げている。

 「Manorama Six Feet Under」は、よく練られた脚本と実力派俳優たちの演技が組み合わさった傑作犯罪映画である。興行的にはまずまずの成績だったようだが、評論家たちからは絶賛された。必見の映画である。