Hulchul

3.0
Hulchul
「Hulchul」

 今日は、2004年11月26日公開のヒンディー語映画「Hulchul」をPVRアヌパム4で観た。「Hulchul」は「ハルチャル」と読み、「混乱」みたいな意味だ。監督は、去年公開されてヒットしたコメディー映画「Hungama」(2003年)のプリヤダルシャン、音楽はヴィディヤサーガル。前作と同じく多くの人物が複雑に絡み合うため、キャストの数が多い。主演はアクシャイ・カンナーとカリーナー・カプールで、他にアムリーシュ・プリー、パレーシュ・ラーワル、ジャッキー・シュロフ、スニール・シェッティー、ラクシュミー、アルシャド・ワールスィー、シャクティ・カプール、アルバーズ・カーン、アキレーンドラ・ミシュラー、ディープ・ディロン、マノージ・ジョーシー、ファルハーなどが脇役を務めていた。

 地元の名士アンガルチャンド(アムリーシュ・プリー)家には4人の息子がいた。上から順にバルラーム(ジャッキー・シュロフ)、キシャン(パレーシュ・ラーワル)、シャクティ(アルバーズ・カーン)そしてジャイ(アクシャイ・カンナー)である。アンガルチャンドの妻はバルラームの結婚を巡る不幸な事件により死去しており、以後、四兄弟は一生独身を通すことが決められ、アンガルチャンド家の門の前には「女人禁制」の札が掲げられることになった。

 一方、隣村に住むラクシュミーデーヴィー(ラクシュミー)の家は、過去の遺恨からアンガルチャンド家を敵視しており、ラクシュミーデーヴィーは何とかアンガルチャンドに復讐する機会を伺っていた。ラクシュミーデーヴィーの家には、義理の息子のカーシーナート(シャクティ・カプール)、その娘のアンジャリー(カリーナー・カプール)、ラクシュミーデーヴィーの3人の息子、スーリヤ(アキレーンドラ・ミシュラー)、プラタープ(ディープ・ディロン)、ヴィール(スニール・シェッティー)がいた。

 アンガルチャンド家の末っ子ジャイと、ラクシュミーデーヴィーの孫娘アンジャリーは同じ大学の法学部に通っていた。アンジャリーは結婚が決まって一度退学したのだが、その結婚はアンガルチャンドの妨害により中止となってしまった。再びアンジャリーは大学に戻って来た。ジャイとアンジャリーは、お互いの家に復讐をするため、恋に落ちた振りをして接近する。相手を恋に狂わして苦しめてやろうという魂胆だった。ところが2人は本当に恋してしまう。

 ジャイは自身の結婚を実現させるため、まずは3人の兄たちを結婚させようとするが、三人とも結婚には全く興味がなかった。そのとき、ジャイの親友のラッキー(アルシャド・ワールスィー)が大ニュースを持って来た。なんとジャイの兄のキシャンが実は内緒で結婚しており、子供もいるというのだ。早速ジャイとラッキーはキシャンの妻ゴーピー(ファルハー)の元を訪れる。そこへキシャンもやって来て大変なことに。もしこの結婚がばれたらキシャンは父親に殺されてしまう。キシャンはジャイとアンジャリーの結婚を助けることを約束させられるが、キシャンの結婚はアンガルチャンドの耳にも入ってしまった。おまけにジャイとアンジャリーが恋仲にあることもばれてしまう。アンガルチャンドは激怒してジャイとキシャンを家から追い出す。

 アンガルチャンド家の仲間割れに高笑いをするラクシュミーデーヴィーは、さらに敵の内部分裂を誘うため一計を案じる。ラクシュミーデーヴィーはアンジャリーの結婚を強引に決め、その結婚式にアンガルチャンドを招待した。アンガルチャンド、バルラーム、シャクティはその結婚式に出席する一方、ジャイはキシャン、ラッキーらと共に結婚式場に忍び込み、花婿と摩り替わってアンジャリーと結婚の儀式を行う。儀式の最後を飾る、マンガルスートラ(既婚の印の首飾り)の着装の段になり、ラクシュミーデーヴィーは花婿がジャイであることを見抜く。マンガルスートラは結婚の証であるため、何としてでもジャイの手からマンガルスートラを奪わなければならなかった。マンガルスートラを巡ってアンガルチャンド家とラクシュミーデーヴィー家の間で大混乱が起きるが、最後にはジャイはアンジャリーの首にマンガルスートラをかけることに成功し、二人の結婚は成立した。アンガルチャンドも遂にジャイとキシャンの結婚を認め、家の門から「女人禁制」の札を外した。

 「Hungama」に引き続き、無数の登場人物が最後で大混乱を起こすコメディー映画。これがプリヤダルシャン監督の独特の手法なのだろうか?細かいところでチョコチョコと笑わせてくれる映画だったが、展開があまりにハチャメチャすぎて、一本の映画を観ているというよりは、コント集を見ているようだった。まずはコメディーありきで、その笑いを味付けするためにストーリーらしきものをくっ付けているように思える。だが、最後にジャイとアンジャリーが結婚を認められるときには観客から拍手が沸き起こるほど、二人の結婚を応援したくなる映画だった。

 何しろ登場人物が多いので、ヒンディー語映画初心者には顔と名前を一致させるのが大変だろう。だが、出演している俳優のほとんどはけっこう名の知れた人たちなので、普通のインド人には全く問題ない。

 主演はアクシャイ・カンナーとカリーナー・カプールだったが、脇役陣の方が元気がよかった。アムリーシュ・プリー、ラクシュミー、アルシャド・ワールスィー、パレーシュ・ラーワル、スニール・シェッティー、ジャッキー・シュロフ、シャクティ・カプールなどなど好演が目立った。悪役ではアムリーシュ・プリーとラクシュミーが観客を恐怖のどん底に突き落とし、アルシャド・ワールスィーやパレーシュ・ラーワルが観客の腹を爆笑でよじらせた。余計なお世話だが、前々から前髪が危機的な状況に陥っていたアクシャイ・カンナーの髪の毛が増えたような気がする。

 ジャイとラッキーが牛の剥製を獅子舞のようにかぶってラクシュミーデーヴィーの屋敷に侵入するシーンがあった。酔っ払った牛飼いが牛の乳を搾ろうとすると、ジャイは手袋を膨らませて乳のようにし、それを牛飼いに絞らせた。これら一連のギャグはどこかで見たことがある。多分昔のインドのコメディー映画にあったように思う。

 インド人庶民はこういうお気楽なコメディー映画が好きなので、現在「Hulchul」はけっこうヒットしている。だが、日本人の鑑賞に耐えうる作品ではないように思う。細かい笑いはけっこういいセンスしていると思うのだが、全体的なまとめ方は雑としか言いようがない。