韓国映画を公式・非公式にリメイクしたヒンディー語映画は意外と多い。有名なところでは、「オールド・ボーイ」(2003年)のリメイクの「Zinda」(2006年)や「猟奇的な彼女」(2001年)のリメイクの「Ugly Aur Pagli」(2008年)、「国際市場で逢いましょう」(2014年)のリメイクの「Bharat」(2019年)だが、他にも多くの映画の類似が指摘されている。「Prem Ratan Dhan Payo」(2015年)も、「王になった男」(2012年)のリメイクとされている。2016年6月10日公開の、リブ・ダースグプター監督によるスリラー映画「Te3n」も、韓国映画「悪魔は誰だ」(2013年)の公式リメイクである。
変わった題名だが、ヒンディー語で「3」を意味する「Teen」の変形のようだ。何が「Teen」なのかはよく分からなかった。アミターブ・バッチャン、ナワーズッディーン・スィッディーキー、ヴィディヤー・バーラン、サビヤサーチー・チャクラバルティー、パドマーヴァティー・ラーオなどが出演している。
舞台はコルカタ。70歳のジョン(アミターブ・バッチャン)は、8年前に誘拐され殺害された孫娘アンジャリの誘拐・殺人犯を未だに探していた。当時、事件を担当していた誘拐事件スペシャリストのマーティン(ナワーズッディーン・スィッディーキー)は既に警察官を引退し神父になっていた。 そんなある日、ロニーという少年が誘拐される事件が発生する。手口が8年前のアンジャリ誘拐事件と似ていた。事件を担当することになった女性警察官サリター(ヴィディヤー・バーラン)はマーティンに助言を求める。サリターとマーティンは身代金の受け渡し場所で犯人らしき男を捕まえるが、それはロニーの祖父マノーハル(サビヤサーチー・チャクラバルティー)であった。サリターはマノーハルこそが犯人だと信じて疑わないが、マーティンには腑に落ちないところがあった。
まずは脚本が優れており、意外性のある結末が待っている。サリターとマーティンが犯人を追ったりマノーハルの尋問をしたりする裏で、ジョンが独自に捜査を進めるシーンがカットバックで所々に挿入される。それらが実は同じ時間軸になったことが最後に明かされ、それが結末につながっているという構造である。
ダースグプター監督にはまだ多くの実績がある訳ではないが、アミターブ・バッチャン、ナワーズッディーン・スィッディーキー、ヴィディヤー・バーランなど、一級の俳優がキャスティングされている。彼はアヌラーグ・カシヤプ監督の助監督を務めており、これはカシヤプ監督の人脈が成せる業かもしれない。どの俳優も確かな演技力を持っており、「Te3n」でも全く手を抜いていなかったが、特に印象的だったのはアミターブの演技である。一見、とぼけた老人ながら、目的を達成するために知略の限りを尽くしていた。
ダースグプター監督はコルカタ生まれであり、コルカタを舞台にした作品を好んで作っている。ただ、言語はヒンディー語である。コルカタのランドマークであるヴィクトリア記念堂や路面電車などがさりげなく映像の中に溶かし込まれていた。
「Te3n」は、スリラー映画を得意とするリブ・ダースグプター監督の作品で、アミターブ・バッチャン、ナワーズッディーン・スィッディーキー、ヴィディヤー・バーランなど、演技力のある俳優たちが多数キャスティングされている。韓国映画の公式リメイクだが、脚本がしっかりしており、先の読めない展開を楽しむことができる。