Everybody Loves Sohrab Handa

3.5
Everybody Loves Sohrab Handa
「Everybody Loves Sohrab Handa」

 2026年4月10日からZee5で配信開始された「Everybody Loves Sohrab Handa」は、かつて一世を風靡したヒングリッシュ映画の伝統を受け継ぐ、インテリ層向けのサスペンス映画である。

 監督は、2000年代からヒングリッシュ映画の潮流を牽引してきたラジャト・カプール。彼は映画の中で登場人物の一人も演じている。

 他に、ヴィナイ・パータク、コーエル・プリー、ニール・ブーパーラム、パーローミー・ゴーシュ、シャラト・カターリヤー、サーディヤー・スィッディーキー、ランヴィール・シャウリー、ダーニシュ・フサイン、ワルシャー・デスーザ、チャンドラチュール・ラーイ、MKラーイナー、カンカナー・チャクラボルティー、エルギン・デスーザ、サウラブ・シュクラー、サウラブ・ナイヤル、マヘーシュ・シャルマー、マッリカー・スィンなどが出演している。キャストの多くはヒングリッシュ映画の常連である。

 ラマン(ニール・ブーパーラム)とジャヤンティ(パーローミー・ゴーシュ)夫妻の結婚10周年を祝い、森林の中のコテージに家族や友人が集まった。ジャヤンティの姉スマン(サーディヤー・スィッディーキー)とその夫サンディープ(シャラト・カターリヤー)、サンディープの兄ソーラブ・ハーンダー(ヴィナイ・パータク)とその妻イシャー(コーエル・プリー)、サンディープの弟アルン(チャンドラチュール・ラーイ)、サンディープの父親(MKラーイナー)、医者のチャンドラ(ラジャト・カプール)、教授のマーダヴァン(ランヴィール・シャウリー)と恋人ナズィヤー、タレントのクマール(ダーニシュ・フサイン)とマネージャーのナイナー(ワルシャー・デスーザ)などである。また、ソーラブの会社でラマンやサンディープが働いていた。コテージの管理人はサティヤという名前だった。

 パーティーが終わり、ほとんどの参加者が寝ていた真夜中、ジャヤンティがソーラブの遺体を発見する。ソーラブは鋭利な刃物で首を切られ、ソファーに横たわっていた。通報を受けコテージにやって来たのがアフザル・クライシー巡査(サウラブ・シュクラー)だった。クライシー巡査は、そこにいる全員が容疑者だと宣言し、捜査を始める。

 凶器が見当たらなかったため、クライシー巡査はまず凶器の捜索から始める。ケーキカットに使ったナイフがなくなっており、それが凶器と思われた。凶器はダイニングルームの棚の裏から見つかった。次に犯人の特定に移った。まず疑われたのは管理人のサティヤだった。スマンのハンドバッグから2万ルピーが消えており、それが彼の部屋から見つかったからだ。だが、サティヤはその金をサンディープから受け取ったと証言する。サティヤは昨晩、サンディープが手に付いた血を洗い流しているのを目撃し、サンディープは口止め料としてその金を渡したのだった。一気にサンディープが容疑者として浮上する。

 だが、クライシー巡査は、サンディープが左利きであることに気付き、彼は犯人ではないと断定する。なぜならソーラブの切り傷は右利きの者によるものだったからだ。その直後、ラマンがナイナーと結託してソーラブを会社から追い出そうとしていたことが発覚し、人々は疑心暗鬼に包まれる。

 口論が激化する中でソーラブの父親が、自分がやったと自供する。だが、チャンドラは彼が誰かを守るために嘘を言っていると見抜いた。その誰かとは、彼の息子アルンだった。アルンはソーラブに憧れており、ソーラブになりたいと強く思っていた。この晩、彼はソーラブになりきってしまい、本物のソーラブをアルンだと考え、殺してしまったのだった。クライシー巡査はアルンを逮捕し連行する。

 結婚10周年を祝うパーティーに集った仲間たち。久々に顔を合わせたメンバーもおり、彼らの間では、浮かれたインド人たちが本当に発しそうな言葉の数々がやり取りされていた。その言語は英語ヒンディー語の絶妙なミックスであり、都市在住上位中産階級らしいウィットに富んだ表現が多用されていた。まるでインド人のパーティーの中に迷い込んだような錯覚を覚えた。このようなインテリ層の集う生き生きとしたパーティーの描写は「Monsoon Wedding」(2001年/邦題:モンスーン・ウェディング)などでも見られたものである。

 パーティー参加者の一人、ソーラブ・ハーンダーが死んだことで物語が始まる。まずは冒頭に彼の死を持って来て、その後、クライシー巡査の捜査が進むごとに、回想シーンが挟まれて、何があったかが明らかになっていくスタイルになっていた。時系列でパーティーを映し出し、その後に殺人現場を持って来るよりはサスペンスが長く続き、観客の好奇心をつなぎ止めることができる。サスペンス映画にはよくある手法ではあるが、この構成は成功していた。

 さて、一連の回想シーンによってソーラブの人柄も明らかになる。社交的かつおしゃべりな人間であり、たまにおしゃべりが過ぎて心ない言葉が口から出てしまい、人の心を傷付ける傾向があった。このパーティー中にも彼の言葉に傷付けられた人は複数おり、誰でも容疑者になりえる状況であった。

 多くの登場人物がおり、相互の関係は、家族であったり友人であったりする。監督が下手だと、名前と顔が一致せず関係性もよく分からない内に映画が終わってしまうものだが、「Everybody Loves Sohrab Handa」については、観ている内に自然と顔と名前を覚え、苦労しなくても関係性も大体把握できた。これは監督が上手な証拠だ。

 一見、パーティーに集った人々の仲は良さそうなのだが、徐々にドロドロした関係性が明るみに出て来て、決して見た目ほど良好な関係ではないことが分かってくる。

 だが、犯人は意外なところから現れる。それは、ソーラブの弟アルンだった。しかも、兄に恨みがあったわけではなく、むしろ憧れの兄になりたくて殺してしまったという、精神異常の一種だった。確かに序盤からアルンの言動に違和感があり、それが伏線になっていた。

 俳優としても出演していたラジャト・カプール、タイトルロールのソーラブ役を演じたヴィナイ・パータク、端役ながらピリ辛出演のランヴィール・シャウリー、そしてソーラブの死を受け入れられないヒステリックな妻を演じたコーエル・プリーなど、ヒングリッシュ映画全盛期に名を馳せた俳優たちが、今も健在であることをアピールするかのように勢揃いし、競演している。特にヴィナイの見せ場は多く、憎しみを煽る演技を上手にこなしていた。

 「Everybody Loves Sohrab Handa」は、結婚記念を祝うために気の置けない仲間たちが集った人里離れたコテージで起こった殺人事件を巡る上質なサスペンス映画である。派手さはないが、登場人物同士のウィットに富んだ会話の中からヒントを読み取り積み重ねて犯人を知的に推理していく楽しみがある。刺さる人には刺さるだろう。