Chandramukhi 2 (Tamil)

1.5
Chandramukhi 2
「Chandramukhi 2」

 21世紀に入ると、ヒンディー語映画界をはじめとした各インド映画界は、多かれ少なかれ、ハリウッドを模したジャンルの映画作りを始める。その中でも、インド映画のフォーマット上で料理するのが難しかったのがホラー映画だ。あらゆる娯楽要素が詰め込まれ、明るさが欠かせないマサーラー映画のスタイルは、観客を徹底的に怖がらせなければならないホラー映画と相性が悪く、なかなかいい妥協点を見つけられなかった。ラジニーカーント主演のタミル語映画「Chandramukhi」(2005年/邦題:チャンドラムキ 踊る!アメリカ帰りのゴーストバスター)は、いち早くホラーとコメディーの融合に成功し、インド映画との相性が抜群なスタイルのホラー映画様式を確立した大ヒット作で、金字塔的作品だ。

 「Chandramukhi」自体がマラヤーラム語映画「Apthamitra」(2004年)のリメイクであり、「Chanramukhi」の大ヒットを受けて、ヒンディー語でもアクシャイ・クマールを主演に据えてリメイク作品「Bhool Bhulaiyaa」(2007年)が作られた。これも大ヒットし、続編の「Bhool Bhulaiyaa 2」(2022年)も作られたが、前作とのつながりはほとんどなかった。

 ヒンディー語版の「Bhool Bhulaiyaa 2」とは別に、タミル語版「Chandramukhi」の続編が作られることになった。それが2023年9月28日公開の「Chandramukhi 2」である。監督は「Apthamitra」や「Chandramukhi」を監督したP・ヴァースであり、正統な続編と呼ぶこともできるだろう。ただし、主演はラジニーカーントからラーガヴァ・ローレンスにバトンタッチしている。また、ヒンディー語映画女優カンガナー・ラーナーウトが出演していることも注目される。

 他には、ラクシュミー・メーナン、ラーディカー・サラトクマール、マヒマー・ナーンビヤール、ヴァディヴェール、シュルティ・ダンゲー、スビクシャー・クリシュナン、スレーシュ・チャンドラ・メーナン、ヴィグネーシュ、ラーオ・ラメーシュ、シャトル、ミトゥン・シャームなどが出演している。

 「Chandramukhi 2」は前作「Chandramukhi」から17年後という設定になっており、ストーリー上のつながりが存在する。よって、前作を観てから鑑賞するのが適切である。

 タミル語版に加えて、テルグ語版、マラヤーラム語版、カンナダ語版、ヒンディー語版も同時リリースされた。鑑賞したのはヒンディー語版である。

 ランガナーヤキ(ラーディカー・サラトクマール)の家庭で不幸が続いた。経営する工場が焼失したり、娘のディヴィヤー(ラクシュミー・メーナン)が交通事故で半身不随になったりしたのである。その原因は氏神であるドゥルガー女神の寺院を蔑ろにしたからだと聞き、ランガナーヤキの一家は故郷に向かう。そして、ドゥルガー寺院の近くにある邸宅を借りる。

 ランガナーヤキの娘の一人は駆け落ちして事故に遭い夫と共に死んでいた。その2人の子供も一緒にドゥルガー女神で祭礼を行わなければならず、呼び寄せる。その子供たちの世話役になっていたのがパーンディヤン(ラーガヴァ・ローレンス)であった。当初、ランガナーヤキの一家は彼らを受け入れなかったが、パーンディヤンの努力もあり、家族は一体となる。また、パーンディヤンは隣に住む牛飼いの娘ガージャ・ラクシュミー(マヒマー・ナーンビヤール)と仲良くなる。

 ランガナーヤキの一家が宿泊した邸宅には禁忌の間があった。そこにはチャンドラムキー(カンガナー・ラーナーウト)の亡霊が住み着いていた。チャンドラムキーはディヴィヤーに憑依する。チャンドラムキーに憑依されたディヴィヤーは歩けるようになる。また、パーンディヤンにはヴェッタイヤン(ラーガヴァ・ローレンス)の霊が取り憑く。

 ヴェッタイヤンはかつてヴィジャヤナガラム王国を支配した王だった。彼は踊り子チャンドラムキーに一目惚れし我が物にするが、彼女にグナシェーカラン(ミトゥン・シャーム)という恋人がいるのを知ると、彼女の目の前でグナシェーカランの首をはね、チャンドラムキーも焼き殺してしまった。それ以来、チャンドラムキーの亡霊はヴェッタイヤンへの復讐に燃えていた。パーンディヤンにヴェッタイヤンが憑依したことで、ドゥルガー・プージャー祭の日に彼を殺そうとする。

 パーンディヤンはヴェッタイヤンの振りをしてチャンドラムキーが憑依したディヴィヤーと戦う。そして途中でグルジー(ラーオ・ラメーシュ)と入れ替わり、彼が代わりに殺される。チャンドラムキーはヴェッタイヤンを殺したと勘違いし、ディヴィヤーの身体から出ていく。一方、ランガナーヤキの一家はドゥルガー寺院で祭礼を行うことができた。

 前作「Chandramukhi」では、ガンガーという女性が、150年前にヴェッタイヤンに殺されたチャンドラムキーという踊り子と自分を同一視してしまい、奇行をし出すと同時に、ヴェッタイヤンへの復讐に燃えるようになるという設定だった。ホラー映画ではあったが、ガンガーにはチャンドラムキーの霊が取り憑いたわけではなく、それは精神疾患の一種として科学的に扱われていた。

 だが、この「Chandramukhi 2」では、ディヴィヤーに取り憑いたのは本物のチャンドラムキーの霊という設定になっていた。よって、完全なる幽霊映画になっていた。だが、それ故につまらなくなっていた。前作と同じ監督が撮った続編にもかかわらず、前作の劣化コピーのような作品になっていた。古今東西、続編映画には失敗例が多いのだが、この「Chandramukhi 2」はその筆頭に挙げてもいいくらいの大失敗作である。

 また、前作はタミル語映画界のスーパースター、ラジニーカーントが主演であり、圧倒的なスターパワーがあった。今回はラーガヴァ・ローレンスが主演の座を引き継いだわけだが、残念ながらそのカリスマ性はラジニーカーントの足元にも及ばない。前作で人気になった「ラカラカラカ・・・」という禍々しい決め台詞も、ラーガヴァの口から聞くと拍子抜けだ。

 ヒンディー語映画をメインフィールドとする者としては、カンガナー・ラーナーウトの使い方が気になって鑑賞に至ったわけだが、やはり彼女がチャンドラムキー役であった。意外に登場シーンは少なかったが、切り札として取っておいたような印象だ。いうまでもなく非常に重要な役であり、終盤は彼女の迫力で押し切っているといっても過言ではない。

 ヴェッタイヤンとチャンドラムキーの因縁を説明する過去のシーンでは、SSラージャモウリ監督の「Magadheera」(2009年)や「Baahubali」シリーズ(2015年2017年)を意識しているようにも感じられた。だが、これも劣化コピーの印象は拭えなかった。CGが多用されていたが、それらの質も一時代前のものであった。とにかく2020年代の映画としてはあらゆる面でチープすぎた。

 「Chandramukhi 2」は、大ヒットしたタミル語映画「Chandramukhi」の続編であり、前作の監督が自ら撮った作品でもあるが、前作でうまくはまっていた要素がことごとく失われ、続編映画の典型的な失敗例になってしまっていた。前作を気に入っている人ほど落胆は大きくなるだろう。観ない方が吉である。