Magadheera (Telugu)

4.0
Magadheera

 2009年7月31日公開の「Magadheera(勇者)」は、テルグ語映画界のヒットメーカー、SSラージャマウリ監督の時代劇アクション映画である。このとき既にSSラージャマウリ監督は多くのヒット作を作っていたが、当時テルグ語映画としては最大の製作費を費やして作られたこの映画の大ヒットにより、後の「Baahubali: The Beginning」(2015年/バーフバリ 伝説誕生)や「Baahubali 2: The Conclusion」(2017年/バーフバリ 王の凱旋)のような大作を送り出すことができた。彼のフィルモグラフィーの中でも重要な作品である。日本でも「Baahubali」シリーズは劇場公開され、カルト的なヒットになったことで、「Magadheera」も2018年8月31日に劇場公開された。邦題は「マガディーラ 勇者転生」である。2022年11月9日に改めて鑑賞し、このレビューを書いている。

 主演はラーム・チャランとカージャル・アガルワール。他に、シュリーハリ、デーヴ・ギル、スーリヤ、ラーオ・ラメーシュ、サラト・バーブーなどが出演している。また、ラーム・チャランの父親でメガスターのチランジーヴィー、ムマイト・カーン、サローニー・アスワーニー、キム・シャルマーが特別出演している。

 時は2009年、舞台はハイダラーバード。バイクレーサーのハルシャ(ラーム・チャラン)は、たまたまインドゥ(カージャル・アガルワール)という女性の手に触れたところ電撃を感じ、不思議な感覚に襲われた。運命を感じたハルシャはインドゥを探し求め、彼女と恋仲になる。だが、ラージャスターン州ウダイガルの王族ラグヴィール(デーヴ・ギル)も、たまたま訪れたハイダラーバードでインドゥと出会い、彼女に無性に惹かれる。呪術師アゴーラー(ラーオ・ラメーシュ)に相談したことで、彼はインドゥと過去の因縁があることを知る。400年前、ラグヴィールの前世の姿であるラナデーヴ(デーヴ・ギル)は、インドゥの前世の姿であるミトラヴィンダー姫(カージャル・アガルワール)を手に入れようとし、叶わずに命を落としていた。記憶を取り戻したラグヴィールは何としてでもインドゥを自分のものにしようとするが、彼女がハルシャと結婚しようとしているのを知り、彼女の父親プラタープ・ヴァルマー(スーリヤ)を殺す。そしてその罪をハルシャになすりつける。ハルシャはヘリコプターでインドゥを連れて逃亡しようとするラグヴィールを必死に追い掛け、インドゥを取り戻そうとするが、ヘリコプターから落下する。湖に落ちたために死ななかったが、この衝撃により彼は完全に前世の記憶を取り戻す。

 1609年、ウダイガル王国は繁栄を極めていたが、不吉な惑星集合が起こっており、強大な勢力を誇るシェール・カーン(シュリーハリ)の攻撃にさらされようとしていた。ウダイガル王国の将軍ラナデーヴは、ヴィクラム・スィン国王(サラト・バーブー)の娘ミトラヴィンダー姫に恋していたが、彼女は王国の英雄カーラ・バイラヴァ(ラーム・チャラン)に惚れていた。ミトラヴィンダー姫を巡ってラナデーヴとカーラ・バイラヴァの間で競走が行われ、カーラ・バイラヴァが勝つ。だが、国王から命令されたことで、カーラ・バイラヴァはミトラヴィンダー姫との結婚を諦める。王国を追放されたラナデーヴはシェール・カーンを城に招き入れ、国王を殺す。そのときカーラ・バイラヴァはバイラヴァコーナと呼ばれる僻地で王国の災厄を払うため、ミトラヴィンダー姫と共に儀式を行っていた。そこへシェール・カーンの軍勢とラナデーヴが押し寄せる。シェール・カーンは100人斬りの伝説を持つカーラ・バイラヴァに100人の兵士を差し向けるが、カーラ・バイラヴァは見事に全員をなぎ倒す。シェール・カーンはカーラ・バイラヴァの武勇を認めるが、ラナデーヴはカーラ・バイラヴァに襲い掛かり、負けそうになるとミトラヴィンダー姫をナイフで刺す。ミトラヴィンダー姫は崖から落ちるが、カーラ・バイラヴァはラナデーヴの首を切り落とした後に自ら崖に身を投げ、ミトラヴィンダー姫の後を追う。

 時は2009年に戻る。シェール・カーンの生まれ変わりである漁師ソロモン(シュリーハリ)に助けられたハルシャは目を覚まし、インドゥを追ってウダイガルまで行く。インドゥはまだハルシャが父親を殺したと勘違いしていたが、ハルシャは彼女を無理矢理連れ出す。このときも惑星集合が起こっており、それが終わるまでにインドゥが前世の記憶を取り戻さなければ、その記憶は永遠に失われるとハルシャは知る。そこで彼はインドゥをバイラヴァコーナへ連れて行く。ラグヴィールが追って来てインドゥを連れ戻そうとするが、インドゥは前世の記憶を取り戻す。ハルシャはソロモンの助けもあって、ラグヴィールを崖の下に突き落として殺すことに成功する。

 インド映画には、輪廻転生の生死観を持つヒンドゥー教の強い影響から、輪廻転生をストーリーに盛り込んだ物語が少なくない。ヒンディー語映画では「Om Shanti Om」(2007年/恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム)が代表例だが、テルグ語映画の代表的な輪廻転生映画というと、この「Magadheera」になる。「Om Shanti Om」では前半が過去、後半が現代という単純な構成だったが、「Magadheera」では現代と過去の間を往き来し、登場人物たちの因縁が徐々に明らかになっていくより複雑でサスペンス性のある作りになっている。また、現代劇と時代劇のミックスになっているのも、輪廻転生映画ならではの効果である。

 17世紀を生き、因縁を持った人物たちが、21世紀に生まれ変わって、前世に成し遂げられなかったことを成し遂げようとするという流れになっており、主要な役を演じる俳優たちは一人で現代のキャラと過去のキャラの二役を演じている。ウダイガル王国最強の兵士だったカーラ・バイラヴァはハイダラーバード在住バイクレーサーのハルシャに生まれ変わり、ウダイガル王国のミトラヴィンダー姫はハイダラーバードに住む普通の女の子インドゥになっていた。また、ウダイガル王国の将軍でありながら宿敵シェール・カーンと手を結んで国王を殺し、ミトラヴィンダー姫を何としてでも手にしようとしたラナデーヴ将軍は、ラグヴィールとしてラージャスターン州の架空の町ウダイガルに生まれ、インドゥを執拗に狙う。面白いのはシェール・カーンだ。400年前には、ムガル帝国をモデルにしていると思われるイスラーム教外来勢力の首領であり、ウダイガル王国の脅威になっていた。だが、カーラ・バイラヴァの見事な100人斬りを目の当たりにして彼のファンになり、無二の親友となる。現代に生まれ変わった彼は漁師ソロモンとなり、ハルシャの命を救う役割を担う。

 荒唐無稽と断じてしまえば荒唐無稽な映画だし、作りも大味で細かいところは突っ込み所満載なのだが、終始サービス精神盛りだくさんで次から次へ山場が巡ってきて、退屈する暇がない。「Baahubali」シリーズや「RRR」(2022年/邦題:RRR)で完成形に達したラージャマウリ映画の原型がこの「Magadheera」にはそこかしこに見受けられる。しかも、バイクでスタントをしていたと思ったらいつの間にか剣を振るって100人の敵と単身戦っているなど、ひとつの映画の鑑賞体験とは思えないほど、ジャンルや次元を越えた多様な佳境が詰め込まれている。まるで娯楽の錬金術師のようだ。

 基本的にはドラマやアクションが主体なのだが、全体のバランスを崩すほどコメディーシーンの数が多い。一番の見所は、ラーム・チャランが父親チランジーヴィーとダンスバトルを繰り広げる冒頭のシーンであろう。全く映画の文脈から外れているのだが、この二人が父子であることを知っている現地ファンたちにとっては、嬉しくてたまらないシーンなのだと思われる。

 父親との共演があることからも分かるように、基本的にはラーム・チャランが絶対的な中心であり、彼のヒーロー振りを礼賛するための映画である。戦えばめっぽう強く、踊ればスーパーダンサー、そして女性を口説くのもお手の物ということで、過去に現在にと縦横無尽の活躍をする。

 ヒロインのカージャル・アガルワールは、この映画の大ヒットがきっかけで南インド映画界に定着した女優だ。元々ムンバイーで生まれており、彼女はテルグ語が話せない。「Magadheera」での彼女の声は他の声優による吹き替えである。しかしながら、特に過去のシーンにおいて、王国の姫として威厳のある演技をしており、彼女が作り上げた女性像は、その後の「Baahubali」シリーズのヒロインにつながっていったと評価することができる。

 「Magadheera」は、テルグ語映画界が誇るヒットメーカー、SSラージャマウリ監督が作風を確立する中で重要な地位を占める作品である。インド映画固有の仕掛けである輪廻転生をうまくストーリーに組み込み、テルグ語映画界のスターであるラーム・チャランを引き立てて、飽きの来ない娯楽大作を作り上げている。過去に日本で劇場公開されており、日本語字幕や日本語吹替と共に楽しむこともできるので、「Baahubali」シリーズや「RRR」などでインド映画の世界に入った人のネクストステップとしてもいい作品だ。