疑問詞

　文章の書き方や情報の伝え方などのコツとして「5W1H」ということがよくいわれる。5W1Hとは、「When（いつ）、Where（どこで）、Who（誰が）、What（何を）、Why（なぜ）、How（どのように）」のことで、時間、場所、主体、対象、理由、手段を示す。他人に情報を伝達するときは、これらの情報が必須とよくいわれる。ただ、これらは主に英文法の疑問詞を元にした考え方だ。これらに加えて「Which（どちら）」、「Whom（誰を）」、「How Much（どれだけ）」を加えたものを7W2Hということもある。ヒンディー語では、状態、方向、量を示す指示語や疑問詞が別にあるため、7W2Hになると考えていいだろう。

　ここではヒンディー語の疑問詞を中心に、ついでにそれに対応する単語を関係代名詞を含めて紹介する。これらの単語が分かるだけでも、ヒンディー語話者と最低限のコミュニケーションがとれるようになるため、ヒンディー語圏を旅行するときなどには是非覚えておきたい。

時間

　時間を問う疑問詞は「कबカブ」だ。また、「～から」という意味の後置詞「सेセ」を伴った「कब सेカブ セ」は「いつから」、「～まで」という意味の後置詞「तकタク」を伴った「कब तकカブ タク」は「いつまで」という意味になる。

　例として「Gully Boy」（2019年／邦題：ガリーボーイ）の「Kab Se Kab Tak」を挙げる。

場所

　場所を問う疑問詞は「कहाँカハーン」である。「どこから」は後置詞「सेセ」を伴って「कहाँ सेカハーン セ」、「どこまで」は後置詞「तकタク」を伴って「कहाँ तकカハーン タク」である。

　「यहाँヤハーン」「वहाँワハーン」「कहाँカハーン」「जहाँジャハーン」を一度に学べる歌がある。「Baghban」（2003年）の「Main Yahan Tu Wahan」である。

主体

　ヒンディー語で「誰」を示す疑問詞は「कौनカォン」である。文の主語になることもある。後置形は「किसキス」である。「誰の？」と言いたいときには「किसकाキスカ」、「誰を？」と言いたいときには「किसकोキスコ」または「किसेキセー」になる。「कौनカォン」は基本的に単数だが、後置形には複数形「किनキン」もある。

　「कौनカォン」は形容詞的に使われることもあるが、そのときは「どちらの」「どの」という意味になり、物体にも使われる。「कौन साカォン サ」も「どの」という意味になる。

　「कौनカォン」については、日常生活において相手や第三者について「誰」と問い掛ける使われ方が大半だが、哲学先進国のインドでは「私は誰？」という問いもよく行われる。「ここはどこ、私は誰？」の記憶喪失ではなく、自分の実在を自分自身に問い掛ける内面的な思考だ。「Secret Superstar」（2017年／邦題：シークレット・スーパースター）の「Main Kaun Hoon」の歌詞はその典型例である。抜粋した箇所には、後述する2つの疑問詞「क्योंキョーン」と「क्याキャー」も使われている。

対象

　ヒンディー語で「何」を示す疑問詞は「क्याキャー」である。ヒンディー語でもっともよく使われる単語のひとつであり、これを知っているだけでインド人に事物の名前を聞いたりすることができるようになる。また、疑問文のマーカーにもなっており、文頭や文末に付け加えることで、その文が疑問文であることが明確になる。ただし、ヒンディー語では、「क्याキャー」を使わなくても、イントネーションで疑問文を示すことはできる。

　「और क्या?アォル キャー」というフレーズもよく聞く。直訳すれば「だから何？」になる。正にそういう意味で使われることもあれば、もっと幅広く「当然だろ？」「分かってるだろ？」「それ以外にないだろ？」みたいな意味で使われることもあり、便利なフレーズだ。ただ、多少ぶっきらぼうな印象も与える。

　「क्याキャー」が使われている映画音楽の歌詞は数え切れないほどあるのだが、まずはもっともシンプルなものを選んでみた。「Barfi!」（2012年／邦題：バルフィ！人生に唄えば）から「Main Kya Karoon」である。

　もうひとつ例を挙げる。少し古い映画だが、「Ghulam」（1998年）の人気曲「Aati Hai Khandala」である。アーミル・カーン（青字）がラーニー・ムカルジー（赤字）をカンダーラーにデートに誘っているシーンだ。カンダーラーとはムンバイー近くにある避暑地である。この歌は「क्याキャー」のオンパレードだ。

　少し解説すると、1行目、2行目、6行目、9行目の「क्याキャー」は「何」という意味の疑問詞だと考えていい。一方、5行目の「क्याキャー」は疑問文のマーカーであり、「何」という意味はない。また、8行目の「और क्याアォル キャー」は上で説明したフレーズである。

理由

　ヒンディー語で「なぜ」を意味する疑問詞は「क्योंキョーン」である。「क्यूँキューン」や「क्योंकरキョーンカル」という言い方もある。「なぜなら」という言い方にも、「क्योंकिキョーンキ」「क्यूँकिキューンキ」「चूँकिチューンキ」など複数ある。

　「क्योंキョーン」の例もそれこそ星の数ほどあるのだが、ここでは「Hum Tum」（2004年）の「Ladki Kyon」を挙げておく。

状態

　次に紹介するものと似ているのだが、これらのセットは形容詞として名詞の修飾に使われ、修飾する名詞の状態を問う役割を果たす。語尾は修飾する名詞の性・数・格に合わせて形容詞変化する。

　「कैसाカェサー」が出て来る歌の例として、「Mere Brother Ki Dulhan」（2011年）の「Isq Risk」を挙げる。

手段

　上で紹介した「कैसाカェサー」が基本的に形容詞であるのに対し、こちらは副詞的に使われる疑問詞である。主に手段を問う場面で使われる。

　例として「Ajab Prem Ki Ghazab Kahani」（2009年）から「Tu Jaane Na」を挙げる。

方向

　ヒンディー語には単独で方向を問う疑問詞「किधरキダル」が用意されている。だが、場所を問う疑問詞「कहाँカハーン」との使い分けが厳密に行われているわけではなく、「कहाँカハーン」で方向を問う場面も多々ある。

　「Tarkieb」（2000年）の「Dupatte Ka Pallu」には、「इधरイダル」「उधरウダル」「जिधरジダル」「किधरキダル」の全てが使われており、これらで脚韻も踏まれている。

分量

　「どのくらい」という分量を聞く疑問詞は「कितनाキトナー」である。形容詞的にも副詞的にも使われる。店などで値段を聞くときによく使う。また、「何時？」は「कितने बजेキトネー バジェー」、「何回？」は「कितनी बारキトニー バール」などになる。ただし、「何歳？」のときは「何」という意味の「क्याキャー」を使うことが多い。「आपकी उम्र क्या है?アープキ ウムル キャー ハェ」（あなたの年齢は何ですか？）など。

　「कितनाキトナー」も頻出単語であるが、「Kabir Singh」（2019年）の名曲「Tujhe Kitna Chahne Lage」を紹介する。