Attack: Part 1

4.0
Attack: Part 1

 2022年4月1日公開のヒンディー語映画「Attack: Part 1」は、ジョン・アブラハム主演のSFアクション映画である。新型コロナウイルスの影響で撮影がストップしたり、公開が延期したりして、苦労して公開まで漕ぎ着けた作品のひとつだ。

 監督はラクシャ・ラージ・アーナンド。今までTVドラマを撮ってきた監督で、映画はこれが初である。主演のジョン・アブラハム自身がプロデューサーの一人も務めている。ヒロインはジャクリーン・フェルナンデスとラクル・プリート・スィン。他に、プラカーシュ・ラージ、ラトナー・パータク・シャー、エルハム・エヘサース、ラジト・カプールなどが出演している。

 アルジュン・シェールギル(ジョン・アブラハム)は有能な軍人で、2010年にはテロリストのレヘマーン・グルを捕らえるのに成功した。2022年、アルジュンは客室乗務員のアーイシャー(ジャクリーン・フェルナンデス)と出会い、恋に落ちる。だが、空港で発生したテロ事件によりアーイシャーは殺され、アルジュンも重傷を負って下半身不随になる。

 一方、インド陸軍はスブラマニアム(プラカーシュ・ラージ)を中心にスーパーソルジャー計画を立てており、科学者サバー・クライシー(ラクル・プリート・スィン)の協力を得て、アルジュンにチップを埋め込んでスーパーソルジャーにする。アルジュンは驚異的な身体能力を得ると同時に、イラーという名のAIアシスタントを得た。

 その頃、ハミード・グル(エルハム・エヘサース)率いるテロリスト集団がデリーの国会議事堂を襲撃し、首相と350人の国会議員を人質に取った。また、ちょうどサバーも国会議事堂におり、人質となる。ハミードは、代理の首相になったディグヴィジャイ・スィン内相(ラジト・カプール)に3つの要求を突き付ける。コマンドー部隊の撤退、レヘマーン・グルの釈放、そして安全な脱出であった。

 ハミードとは因縁のあったアルジュンは、イラーの指摘により事前にテロリスト襲撃を予想していた。スブラマニアムに召集されたアルジュンは単身、国会議事堂に送り込まれる。だが、乱暴されそうになったサバーを助けるためにアルジュンが表立って行動したためにハミードにも彼の存在が知られてしまう。ハミードはアルジュンの降伏も要求したため、アルジュンは投降する。そのとき、弱点である後頭部に打撃を受けたため、イラーがシャットダウンしてしまう。しかし、サバーが再起動に成功し、アルジュンは起き上がってテロリストたちを一網打尽にする。

 ハミードは国会議事堂の地下ルートを通って密かに脱出し、空路で逃げようとしていた。また、国会議事堂には化学爆弾を仕掛けており、それが爆発したらデリー中の市民が死ぬ可能性があった。アルジュンは彼を追い掛け、離陸中だった飛行機にバイクで突っ込んで、ハミードが持っていた起爆装置を解除し、インドを救う。

 映画開始20分でヒロインが死に、ヒーローが下半身不随になってしまうという衝撃的な幕開けだった。主人公のアルジュンは、科学者アーイシャーが開発した、障害者支援システムを組み込まれ、スーパーソルジャーに生まれ変わる。そして、国家を揺るがすテロ事件にたった一人で立ち向かう。

 インド映画のヒーローは、インド映画のヒーローというだけで、デフォルトで無双状態になるものだ。なぜヒーローがこんなに強いのか、ほとんど説明らしい説明もなく、とにかく強い。そしてインド映画ファンはそれを当然のように受け止め、喝采を送る。だが、「Attack: Part 1」の主人公アルジュンも無敵といえるくらい強い。だが、その強さには論理的な説明が加えられていた。彼にはイラーというパーソナルAIアシスタントが付いており、驚異的な演算能力で彼をサポートすると同時に、様々なモードによって、ただでさえ軍人として強いアルジュンに圧倒的な攻撃能力を付加していた。

 しかし、全くの無敵であったら映画は面白くない。アルジュンにも弱点はあった。ひとつは、死んでしまった恋人アーイシャーの記憶である。アルジュンは、最新技術により身体能力を回復するものの、アーイシャーを失ったトラウマからは回復していなかった。そして、それがイラーとの100%シンクロを阻害していた。もうひとつは、チップが埋め込まれた後頭部である。ここを攻撃されると弱いのである。

 映画はハイペースで進み、VFXを多用したアクションシーンの質も非常に高い。また、国会議事堂がテロリストに占拠されるという、インドにとって最大級の危機を描いており、スケールも大きい。アルジュンを演じたジョン・アブラハムの演技や身のこなしも素晴らしかった。

 しかし、残念ながら興行的には全く振るわなかったようである。近年のアクション映画の中ではかなり楽しく観賞できた部類なのだが、インド人観客に受けなかったのが不思議でならない。南インド映画界をベースとするプラカーシュ・ラージを起用していることからも分かるように、インド全土でのヒットを狙った作品であろうが、失敗に終わってしまった。

 「Attack: Part 1」は、ジョン・アブラハム渾身のSFアクション映画である。ストーリーは単純ながら面白く、アクションシーンに非常に力が込められており、完成度の高い映画だと感じたが、大フロップに終わってしまった。しかしながら、観て損はない映画である。