ヒンディー語の数詞と共に使われ、基本単位の「+1/2」、「+1/4」、「-1/4」を表す特殊な形容詞がある。
- साढ़े Saadhe 基本単位の+1/2
- सवा Sawa 基本単位の+1/4
- पौने Paune 基本単位の-1/4
基本単位とは、桁の単位と考えるといいだろう。どういうことかというと、例えば「750」と言いたいとき、ヒンディー語には「Saat Sau Pachaas(सात सौ पचास)」、つまり「7, 100, 50」と言う言い方もあるが、それとは別に「Saadhe Saat Sau(साढ़े सात सौ)」と言う言い方もあるということである。「750」は3桁の数字になるので、基本単位は100となり、その1/2は50となる。よって、「Saadhe Saat Sau」と言った場合、「700」に「50」を足した数となって、「750」が算出される。
「Saadhe(साढ़े)」は時刻にも多用される。例えば「7時半」と言いたい場合は、「Saadhe Saat Baje(साढ़े सात बजे)」となる。「Baje(बजे)」は「~時に」という意味である。時刻の場合は、基本単位が60分なので、その1/2は30分という計算である。
ただし、ヒンディー語には、「1.5」と「2.5」を示す独立した数詞が存在し(参照)、数詞の方が優先して使用されるので、形容詞「Saadhe(साढ़े)」が使われるのは「3.5」や「3時半」以上となる。
ヒンディー語ボージプリー方言の有名な民謡に「Saadhe Teen Baje(साढ़े तीन बजे)」があり、サビの中に「Saadhe(साढ़े)」が使われている。いくつかの映画がこの民謡をリメイクして使っているのだが、ここではヒンディー語映画「Mukkabaaz」(2018年)の「Saade Teen Baje」を挙げておく。
साढ़े तीन साढ़े तीन साढ़े तीन बजे
साढ़े तीन बजे रानी जरूर मिलना
साढ़े तीन बजे
3時半、3時半、3時半
3時半、愛しい人よ、是非会ってくれ
3時半
ここで言う「3時半」とは、日中の「3時半」ではなく、夜中の「3時半」だ。つまりは非常にセクシャルな歌である。
それと同じく、「Sawa(सवा)」は「基本単位の+1/4」を表す。「Sawa Saat Sau(सवा सात सौ)」と言った場合、100の1/4は25なので、「700+25」で、「725」となる。
時刻に使われた場合は、60分の1/4は15分であるため、「+15分」となる。「Sawa Saat Baje(सवा सात बजे)」は「7時15分」という意味である。
「Aiyyaa」(2012年)の挿入歌「Sava Dollar」は、「1ドル」とその「+1/4」、つまりは「1.25ドル」、もしくは「1ドル25セント」となる。
हिरोइन मुझे बना देना
सवा डॉलर चढ़ाऊँगी बदले में
私をヒロインにして
代わりに1.25ドルあげるから
ジャイプル王国の創始者ジャイ・スィン2世国王(1688-1743年)は、ムガル朝皇帝から「サワーイー」の称号を受けた。この「サワーイー」は「Sawa(सवा)」の名詞形であり、「他人よりも1/4優れた者」という意味になる。ジャイ・スィンは、ジャイプルなどにある天文台ジャンタル・マンタルを建造した学者肌の統治者として知られている。
上記の2つに比べると、日本人にとっては「Paune(पौने)」が一番分かりにくいのだが、これは基本単位の1/4を、後に続く数から引くことを示す形容詞となる。つまり、「Paune Saat Sau(पौने सात सौ)」と言った場合、基本単位100の1/4は25であるため、後に続く700から25を差し引き、「675」となる。
時刻についても使われる。「Paune Saat Baje(पौने सात बजे)」と言った場合、基本単位60分の1/4は15分なので、後に続く7時から15分を差し引き、「6時45分」となる。
「Salaam Namaste」(2005年)の「What’s Goin’ On」では、歌詞の中に「Paune(पौने)」が出て来る。
पौने बारह बजे दोनों घर से चले
What’s Goin’ On?
What’s Goin’ On?
11時45分、二人とも家から出掛けた
何が起こっているの?
何が起こっているの?
単に「1/4の」、「半分の」という形容詞もある。「1/4の」は「Paav(पाव)」、「半分の」は「Aadha(आधा)」である。これらの形容詞は、金額や時刻にはあまり使われないのだが、市場での買い物の場面ではよく使われる。例えば、野菜や肉を250g買いたいときは「Paav Kilo(पाव किलो)」、500g買いたいときは「Aadha Kilo(आधा किलो)」と言う。750gを表現するためには、「Paune Kilo(पौने किलो)」という言い方に加えて、「Teen Paav Kilo(तीन पाव किलो)」、つまり、「3x250g」という言い方もある。
歌詞の中で 「Paav(पाव)」 が使われることは少ないのだが、 「Aadha(आधा)」 は基本語彙であり、多用される。例えば、「Band Baaja Baaraat」(2010年)には「Aadha Ishq」という曲があった。
आधा इश्क़, आधा है, आधा हो जाएगा
क़दमों से मीलों का वादा हो जाएगा
恋はまだ半分、残り半分はきっとこれから
ずっと共に歩む約束もきっとこれから
基本語彙「Aadha(आधा)」、日本人には少し馴染みの薄い1/4単位の形容詞「Paav(पाव)」、そして特殊な数詞「Dedh(डेढ़)」、「Dhaai(ढाई)」に加えて、数詞と共に使われる特殊な形容詞「Saadhe(साढ़े)」、「Sawa(सवा)」、「Paune(पौने)」を使いこなすことで、ヒンディー語が急にうまくなった気分になれる。意識的に使うといいだろう。