ヒンディー語の数詞には、1.5と2.5を表す特殊な単語がある。
- 1.5 डेढ़ Dedh
- 2.5 ढाई Dhaai
例えば「1時半」という時刻を言いたい場合は、「Dedh Baje(डेढ़ बजे)」という言い方が普通である。「Baje(बजे)」は「~時に」という意味だ。同じく、「2時半」の一般的な言い方は「Dhaai Baje(ढाई बजे)」になる。
これらの数詞は、時刻のみならず、金額などの数字にもよく使われる。例えば、「Dedh Lakh(डेढ़ लाख)」と言った場合は、「15万」という意味になる。「Lakh(लाख)」は「10万」という意味の数詞である。「1.5×10万=15万」という計算だ。
ヒンディー語映画「Dedh Ishqiya」(2014年)の題名にある「Dedh」もこの単語である。これより前に「Ishqiya」(2010年)という映画があり、そのパート2が「Dedh Ishqiya」なのだが、「パート1.5」と少し洒落た言い方をしたくて「Dedh Ishqiya」としたのだと思われる。これは一般的な使い方ではないが、「Dedh」という単語にはどこか普通ではない斜に構えたイメージがあり、それを活用した題名だと言える。
ちなみに、ムンバイーの売春街カマーティープラーには、「Dedh Gully(डेढ़ गली)」という通りがある。「Gully(गली)」は「路地」という意味であり、敢えて訳すならば「1.5番通り」になる。この通りは、盗品が売られる泥棒市場であったり、ヒジュラーの売春部屋が集まっていたりすると言われており、やはり普通ではない通りとなっている。
そういえば、「Dedh Ishqiya」ではレズの描写がある。1でも2でもない1.5は、半陰陽的なイメージを喚起するのであろう。
「Dhaai Akshar Prem Ke」(2000年)という映画の題名には「Dhaai(ढाई)」が使われている。題名を直訳すると、「愛の2.5文字」になる。「Akshar(अक्षर)」は「文字」、「Prem(प्रेम)」は「愛」、「Ke(के)」は「~の」という意味の格助詞である。何が「2.5文字」なのか、ヒンディー語が分からない人にはチンプンカンプンであろうが、ヒンディー語の「愛」という単語「प्रेम」は、「Pa(प)」と「Ra(र)」と「Ma(म)」の3文字から成っており、その内の「Pa」が、いわゆる半子音字という形になっていて、母音が落ちて「P」となり、後に続く「Ra」と結合している。つまり、「Pa+Ra+Ma」が「P+Ra+Ma」になり、「Pra+Ma」になっている。それをもって2.5文字としているのである。さらに、母音記号が加わって「Pre+Ma」となり、語末の母音が落ちているのだが、そこまで理解したければ、ヒンディー語の表記に使われるデーヴァナーガリー文字の構造を勉強するしかない。
「Kaminey」(2009年)というヒンディー語映画には、歌詞のサビの中に「Dhaai(ढाई)」が使われる「Raat Ke Dhai Baje」という曲がある。
रात के ढाई बजे कोई शहनाई बजे
दिल का बाज़ार लगा धेला टका पाई बजे
夜の2時半、笛が鳴り始める
心が売られ、硬貨の音がする
「Dedh(डेढ़)」と「Dhaai(ढाई)」と併せて、この記事で解説している「Saadhe(साढ़े)」、「Sawa(सवा)」、「Paune(पौने)」の使い方もマスターすることを推奨する。