Aksar 2

2.5
Aksar 2
「Aksar 2」

 ヒンディー語映画界では、「~2」などと、あたかも続編であるかのように見せ掛けておいて、蓋を開けてみると実は全く別の映画ということが慣習化している。2017年11月17日に公開された「Aksar 2」も、一見すると「Aksar」(2006年)の続編だが、実際はほとんど関連性のない映画である。

 ただし、共通点がないこともない。例えば、「Aksar」も「Aksar 2」も監督はアナント・マハーデーヴァンである。また、一部の登場人物の名前も同じだ。さらに、エロティックなスリラー映画という点も共通している。よって、「Aksar」を観た人ならば、同じようなジャンルの映画を期待して「Aksar 2」を観ても、その点では大きな期待外れを抱くことはないだろう。ちなみに、「Aksar」はヒメーシュ・レーシャミヤーが作曲し自ら歌う「Jhalak Dikhlaja」が大ヒットしたことで、映画本体もセミヒットになった。「Aksar 2」の題名は、その成功にあやかっての命名であろう。

 「Aksar 2」の主演はザリーン・カーン。カトリーナ・カイフのそっくりさんとして華々しくデビューし、「Veer」(2010年)や「Housefull 2」(2012年)に出演したが、カトリーナの10分の1の成功にも到達できなかった。「Hate Story 3」(2015年)辺りからセクシー路線に活路を見出すようになり、「Aksar 2」での出演もその路線の延長である。

 実はザリーンよりも注目のキャスティングがシュリーサントである。シュリーサントはインド代表まで務めた人気クリケット選手である。だが、2013年に八百長に関わったとして逮捕され、試合出場を禁止された。「Aksar 2」での撮影は彼の出場禁止期間に行われている。これが彼にとって俳優デビューの作品となる。不正によりクリケットを失ったシュリーサントが活路を見出すために映画に出て演技をしているのだ。

 他に、リレット・ドゥベーやデンジル・スミスといったベテラン俳優の名前も見受けられるが、主な役を演じるガウタム・ローデー、アビナヴ・シュクラー、モーヒト・マダーンといった若い俳優たちはほとんど無名である。

 独身の資産家女性ドリー・カンバーター(リレット・ドゥベー)は糖尿病を患っていた。彼女は身の回りの世話をするガヴァネスの前任者を交通事故で失い、新しいガヴァネスを探していた。カンバーターの財務顧問を務めていたパトリック・シャルマー(ガウタム・ローデー)は、シーナー・ロイ(ザリーン・カーン)を紹介する。カンバーターは50歳以上の女性を募集していたが、彼女はまだ若かった。しかしながら、カンバーターはシーナーを気に入り、彼女を雇う。

 女好きのパトリックはシーナーの美貌に魅了され、彼女を誘惑する。そしてある日彼女をリゾートホテルの一室に呼び、セックスをする。だが、パトリックはシーナーが会話を盗聴していることに気付く。問いつめられたシーナーは、カンバーターが遺書に遺産の相続人の一人として彼の名前を入れていることを明かす。信じられなかったパトリックは金庫から遺書を盗み出し確認するが、確かにロンドンの不動産の相続人が彼の名前になっていた。

 ところで、カンバーターの元で長年ハウスマネージャーを務めるバッチャン・スィン(モーヒト・マダーン)は密かにカンバーターの資産を狙っていた。バッチャンはいつの間にかシーナーを丸め込んでおり、盗聴器によってパトリックに探りを入れていたのだった。盗聴器にはパトリックが発言したカンバーターに対する悪口が録音されていた。バッチャンはそれを使ってパトリックを脅し、遺書の書き換えに協力させる。ロンドンの不動産以外は、カンバーターの甥リッキー(アビナヴ・シュクラー)が相続することになった。バッチャンはカンバーターの遺産を山分けする条件でリッキーに協力していたのである。また、リッキーはシーナーと同棲していた。

 遺書の書き換えが完了したことで、バッチャンはいよいよカンバーターを殺そうとする。バッチャンはリッキーを誘拐し、シーナーに無理矢理カンバーター暗殺に協力させようとする。バッチャンが雇った殺し屋(デンジル・スミス)がシーナーの協力によりカンバーターの家に入り、正に彼女を殺そうとしたとき、バッチャンは一報を受ける。なんと幽閉していたリッキーが逃げ出し、途中で交通事故に遭って死んでしまったのである。リッキーが死んだことで書き換えた遺書は意味を成さなくなる。バッチャンは暗殺を中止させる。

 だが、実はシーナーはリッキーと密かに結婚していた。カンバーターの相続人であるリッキーが死んだ今、リッキーの妻であるシーナーが相続の資格を持つことに気付いたバッチャンは、それを利用することにする。殺し屋から毒を受け取ったバッチャンはそれをシーナーに渡し、カンバーターを暗殺させようとする。だが、リッキーの死にショックを受けたシーナーはその毒を使ってバッチャンを殺す。

 パトリックは、カンバーターの死後に受け取るはずのロンドンの遺産を山分けすることを提示し、シーナーに盗聴した音声データの譲渡を要求する。だが、シーナーはカンバーターの前でその音声を再生し、彼女のパトリックに対する信頼を失わせる。

 シーナーはカンバーターのガヴァネスを辞するが、実は彼女はカンバーターの弁護士ガウラヴ(シュリーサント)とも通じていた。ガウラヴはわざとカンバーターに薬を与えず、彼女を病死させる。これでリッキーが受け取るはずだった遺産はシーナーの手に移った。だが、盗聴器によりその企みを知ったパトリックは再びシーナーを脅そうとする。シンガポールに高飛びしていたシーナーをパトリックは追ってくるが、シーナーは彼の乗る自動車のブレーキを故障させていた。パトリックは崖から落ちて死ぬ。

 映画開始当初は純真な女性に思えた主人公シーナーが徐々に本性を明らかにしていき、実は全てが彼女の掌の中で動いていたことが分かる。そして最後には彼女がカンバーターの資産を手に入れるという筋書きの映画だった。シーナーは一連の出来事の中で夫のリッキーを失うが、彼女を使って私欲を肥やそうとしたパトリックとバッチャンは彼女の謀略によって命を落とす。しかも、もっとも中立に見えた弁護士ガウラヴが最終的にシーナーのパートナーになっており、カンバーターの遺産はこの二人の間で山分けされることになった。

 意外性のあるどんでん返しをいくつも用意して、それを反復することで観客に数度のサプライズを提供していた。しかしながら、「実はこの人が!」という各山場に持って行くまでの緻密さが残念ながら足りず、まるで成り行き次第の思い付きで書かれた脚本を元に撮影されたかのようである。何でもかんでもサプライズをすればいいというわけではなく、そこにはキチンとした論理性が必要だ。それが欠けていた映画だった。

 その一方で、カンバーターの住むアパートの警備員が、登場するたびに何とも思わせぶりな表情を見せるのだが、結局彼がストーリーに関わってくることはなく、ただのエキストラだった。せっかく張っておいた伏線を回収しないというのも気持ちが悪いものだ。

 主演ザリーン・カーンにとっては見せ場たっぷりの映画であったが、もはや業界内で彼女が再評価されるような余地が残っているとは思えず、せっかくの熱演にも何か空しさが漂っていた。ガウタム・ローデー、アビナヴ・シュクラー、モーヒト・マダーンも悪い演技ではなかったが、似たような風貌の男優を3人並べられても困るというのが正直な印象だ。シュリーサントに至っては完全に畑違いである。ベテラン女優リレット・ドゥベーはさすがの演技で、経験未熟な若い俳優が多いこの映画を何とか下支えしていた。

 「Aksar 2」は、10年前にセミヒットした「Aksar」の続編を標榜する映画で、監督や、エロティック・スリラーというジャンルの共通点はあるものの、つながりは全くない。「Aksar」はヒメーシュ・レーシャミヤーによる音楽が受けたが、「Aksar 2」にはその要素もない。無理して観る必要のない映画である。