Hate Story 3

1.5

 2002-03年に公開された「Raaz」(2002年)や「Jism」(2003年)の成功によって、やたらと女優が肌の露出をするセクシーなホラー映画およびスリラー映画がこぞって作られるようになった。当時はそれらを「スキン・ショー」と呼んでいた。だが、いくらエロチックな映像をアピールしても、内容がなければ市場からは手厳しい評価を受けた。スキン・ショーはすぐに観客から飽きられた。それでも、当時のスキン・ショーの流れを汲む映画が絶滅したわけではない。「Hate Story」シリーズはその流れを汲むスリラー映画群であり、「Hate Story」(2012年)、「Hate Story 2」(2014年)と作られてきた。その題名の通り、憎悪や復讐をテーマにしたストーリーである点は一貫しているが、ストーリー上のつながりがあるシリーズではない。

 第3作「Hate Story 3」は2015年12月4日に公開された。監督は前作と同じヴィシャール・パンディヤー。主演にシャルマン・ジョーシーとザリーン・カーン、助演にカラン・スィン・グローヴァー、デイジー・シャーが起用されている。他に、プリトヴィー・ズトシー、プリヤーンシュ・チャタルジー、シャイニー・ディークシトが出演し、プージャー・グプターがアイテムナンバー「Neendein Khul Jaati Hain」でアイテムガール出演している。

 インドを代表する大企業ディーワーン・グループのアーディティヤ・ディーワーン社長(シャルマン・ジョーシー)は、飛行機事故で死んだ兄ヴィクラム(プリヤーンシュ・チャタルジー)の妻スィヤー(ザリーン・カーン)と結婚していた。アーディティヤは秘書として雇ったカーヤー・シャルマー(デイジー・シャー)を広報部長に抜擢し、カーヤーも見事に会社の売上を伸ばしていた。

 あるとき、アーディティヤはスィヤーと共に、サウラヴ・スィンガーニヤー(カラン・スィン・グローヴァー)という謎の実業家から招待を受ける。サウラヴは、スィヤーを一晩借りたいと申し出る。それを聞いたアーディティヤは激昂し、その場を立ち去る。

 その後、ディーワーン・グループが販売する飲料に農薬が混入するという事件が発生する。その責任をなすりつけられる形でカーヤーは会社を追い出されるが、実際にはサウラヴが画策したことだった。サウラヴはカーヤーに連絡を取り、彼女をマレーシアに呼ぶ。サウラヴはカーヤーに、自分の妹がアーディティヤのせいで自殺したため、彼を破滅させて復讐すると明かす。だが、カーヤーはまだアーディティヤと通じていた。カーヤーはサウラヴに同情する振りをして、その情報をアーディティヤに流す。

 カーヤーからの情報を受けたアーディティヤはサウラヴの正体を調べるが、偽のアイデンティティーであることが分かる。そのときアーディティヤは通信事業に進出しようとしていたが、サウラヴの妨害によって失敗する。しかもカーヤーが死体で見つかる。アーディティヤは殺人と贈賄の容疑で逮捕されてしまう。そこでスィヤーはサウラヴに接近し、一夜を共にする。スィヤーは、彼が飛行機事故で死んだはずのヴィクラムであると察する。

 実は、アーディティヤとスィヤーは以前から恋仲にあったが、ヴィクラムはスィヤーと結婚した。しかも、父親の遺書により、会社の社長の座は兄であるヴィクラムのものとなった。アーディティヤはスィヤーと共謀し、ヴィクラムの荷物に爆弾を仕掛けて、飛行機事故に見せかけて殺したのだった。

 だが、スィヤーはサウラヴに毒を盛って瀕死の状態にし、アーディティヤ無実の証拠を奪取する。おかげでアーディティヤは釈放される。回復したサウラヴはアーディティヤとスィヤーを殺す。

 実はサウラヴはヴィクラムではなく、彼の親友カランであった。しかもヴィクラムは生きており、裏からカランを操ってアーディティヤに復讐したのだった。

 スリラー映画らしく、いくつかのどんでん返しが用意されており、最後には善と悪の入れ替わりまである。当初は主人公であったシャルマン・ジョーシーとザリーン・カーンが演じるアーディティヤとスィヤーは、全ての謎が明かされた後は悪役に転落し、カラン・スィン・グローヴァーが演じていた人物が善玉に浮上するのである。だが、脚本や構成が稚拙であるため、ご都合主義の展開ばかりで盛り下がって行く。最後には、飛行機事故に遭って死んだはずの兄ヴィクラムまで生きていることになってしまっていた。いくら何でも上空で爆発した飛行機に乗っていた人間が生きていたという設定をそのまま受け止めることはできない。

 この映画のひとつの特徴は、女性キャラが復讐のために他の男と寝ることを厭わないことだ。デイジー・シャー演じるカーヤーは、ボスであるアーディティヤのために、彼を陥れようとするサウラヴに接近し、彼と何夜か過ごす。アーディティヤの妻スィヤーは、収監された夫を救うため、サウラヴに身体を捧げる。エロティック・サスペンスの名に恥じない展開である。とはいえ、インド映画であるため、度を過ぎた性表現は抑えられている。

 「Hate Story」シリーズでは、あまり有名ではない俳優を敢えて起用しているようなこだわりも感じられる。今回の主演はシャルマン・ジョーシーとザリーン・カーンだが、両人とも名前は知られているものの、A級のスターではない。カラン・スィン・グローヴァーはテレビドラマ俳優のイメージが強いし、デイジー・シャーもヒンディー語映画界ではまだまだ足場を固められていない。そして既にベテラン俳優に数えられるプリヤーンシュ・チャタルジーも意外な場面で出演していたが、端役に過ぎなかった。それぞれ精いっぱいの演技はしていたが、それぞれ何か足らないところがあった。スリラー映画というと、俳優たちの迫真の演技も見所となるのだが、「Hate Story 3」には演技による火花の散らし合いみたいなものが感じられなかった。

 サウラヴの画策によりアーディティヤの会社が直面することになった、飲料への農薬混入や、通信セクターの政策決定における多額の贈収賄などは、実際にインドで起こった事件を基にしている。大企業の中での兄弟の争いは、リライアンス・グループを想起させる。

 「Hate Story 3」は、B級映画を量産するヴィクラム・バットがプロデュースするエロティック・サスペンス映画「Hate Story」シリーズの第3作である。興行的には成功したとのことだが、とても外に出せるような出来ではない。観ない方が吉である。