Lucknow Central

3.5
Lucknow Central
「Lucknow Central」

 2017年9月15日公開のヒンディー語映画「Lucknow Central」は、いわゆる脱獄モノの映画に分類されるだろう。だが、音楽映画としての風味もミックスされており、ユニークな映画となっている。

 監督は「Katti Batti」(2015年)で助監督を務めたランジート・ティワーリーで、監督はこれが初となる。主演はファルハーン・アクタル。他に、ダイアナ・ペンティー、ローニト・ロイ、ジッピー・グレーワル、ディーパク・ドーブリヤール、ラージェーシュ・シャルマー、マーナヴ・ヴィジ、イナームルハク、ラヴィ・キシャン、ブリジェーンドラ・カーラー、ヴィーレーンドラ・サクセーナー、アーローク・パーンデーイなどが出演している。また、マノージ・ティワーリーが特別出演している。

 ウッタル・プラデーシュ州ムラーダーバード在住で、バンドを組んでミュージシャンになるのを夢見ていた青年キシャン(ファルハーン・アクタル)は、国家公務員殺人の濡れ衣を着せられて終身刑を言い渡される。遺族が死刑を求めて高等裁判所に告訴したことで、キシャンはラクナウー中央刑務所に移される。

 ガーヤトリー(ダイアナ・ペンティー)は囚人の人権保護のための活動をしていた。パワン・スィン・チャトゥルヴェーディー州首相(ラヴィ・キシャン)が囚人バンドのコンペティションを思いつき、ガーヤトリーにはラクナウー中央刑務所でバンドを作るように頼む。ガーヤトリーは当初それを拒否するのだが、ムラーダーバード刑務所で会ったキシャンに頼まれ、引き受ける。

 厳格なラージャー・シュリーヴァースタヴァ所長(ローニト・ロイ)の管理下にあるラクナウー中央刑務所に入ったキシャンは、ボス顔をするティラクダーリー(マーナヴ・ヴィジ)に目を付けられるものの、パーリー(ジッピー・グレーワル)、ヴィクター(ディーパク・ドーブリヤール)、プルショッタム(ラージェーシュ・シャルマー)、ディッカト(イナームルハク)と共にバンドを立ち上げる。だが、彼らはコンペティションの当日、8月15日に脱獄しようと計画していた。

 彼らの演奏がSNSで話題になったことで、チャトゥルヴェーディー州首相も喜び、バンドの5人に保釈を与える。キシャン以外の4人は一時的に外の空気を吸うが、家族や恋人から冷たくされたりして、脱獄しても何の得もないことを実感する。また、この間、ガーヤトリーはキシャンの事件について独自に調査をし、目撃者はバンティー(アーローク・パーンデーイ)しかいないことを突き止める。バンティーは、警察に脅迫されて嘘の供述をしていた。

 8月15日、キシャン、パーリー、ヴィクター、プルショッタム、ディッカトの5人は、ラクナウー中央刑務所でコンペティションが行われている間、脱獄をする。だが、キシャン以外の4人は既に脱獄を止めていた。キシャンも、観客からキシャン・コールが起こったことで、自分の夢は壁の外ではなく中にあると考え直す。シュリーヴァースタヴァ所長は5人が脱獄したと知って捜索させるが、5人はステージの上に現れた。そして最高のパフォーマンスをする。主賓として鑑賞していたチャトゥルヴェーディー州首相も彼らのパフォーマンスを賞賛する。バンティーが証言を翻したことでキシャンは無罪放免される。

 インド映画の最大の特徴は歌と踊りにあるが、ヒンディー語映画界でミュージシャンやバンドを主人公にした映画が作られるようになったのは意外に新しく、「Jhankaar Beats」(2003年)辺りがその走りといえるが、広範に知名度のある代表例といえば、「Rock On!!」(2008年)や「Rockstar」(2011年)などになる。「Lucknow Central」は、刑務所で組まれた囚人たちのバンドが物語の中心となる音楽映画である。

 物語のミソは、彼らが単に刑務所同士のコンペティションに出場したり優勝したりすることを目標としてバンド活動をしていたわけではないことだ。コンペティションの日、彼らは脱獄をしようとしていた。そういう意味では脱獄映画になる。

 だが、彼らは結局、脱獄を途中で止め、ステージに上がって演奏する。その理由は、主人公キシャンと、他のバンドメンバー四人とでは異なる。四人はそれぞれ外に家族などを持っており、脱獄の理由も彼らに会うことだった。だが、コンペティションの前に保釈が得られ、会いたかった人々に会ったことで、考えが変わった。家族から冷遇されたり、恋人が結婚したことが分かったり、娘の結婚式を邪魔したくなったりと、理由はそれぞれだったが、脱獄する意欲をなくしたのだった。

 キシャンについては、無実の罪で服役していたこともあったのだが、彼の夢はバンドを組んでステージでたくさんの観客の前で演奏することだった。脱獄の成功を目の前にして、自分の夢は壁の外ではなく内側にあることを悟る。そして、五人で引き返し、ステージの上に立ったのだった。

 いくら目的が正しくても、方法が間違っていれば、それは間違いになってしまう。もし脱獄していたら、五人には不幸な未来が待っていたことだろう。だが、彼らは直前で考え直し、自分に与えられた仕事を全うする道を選んだ。キシャン以外の四人のその後は描かれていなかったが、少なくともキシャンについては、裁判のやり直しにより無罪が確定し、自由の身になれた。どんな境遇に置かれても、自分のするべきことを真摯にするべきであるという教訓が映画から感じられた。

 主演のファルハーン・アクタルは多才な人物で、監督、俳優、プロデューサーの他、歌手としても活動している。音楽映画に好んで出演する傾向にあり、歌も自分で歌うことが多い。だが、「Lucknow Central」では彼が歌声を披露した曲はない。クライマックスのコンペティションで主人公たちが歌った「Kaavaan Kaavaan」はプレイバックシンガーのディヴィヤ・クマールが歌っているが、素人の歌唱力では到底歌えない曲だ。多分、ファルハーンが歌わなかったのはそういう理由であろう。

 ダイアナ・ペンティーは知的でモダンな女性役が似合う女優で、「Lucknow Central」では人権活動家としてイメージにピッタリの役だった。出番が多かったわけではないが、いい演技をしていた。

 主人公たちの脱獄の前に立ちはだかる、頭の切れる刑務所長シュリーヴァースタヴァを演じたローニト・ロイは、現在のヒンディー語映画界でもっとも悪役を演じるのがうまい俳優である。彼がいる限り、いつでも脱獄計画は潰されるという気にさせられ、スリルの醸成に多大な貢献をしていた。

 「Lucknow Central」は、音楽映画と脱獄映画の華麗なるミックスにより成立した娯楽作品である。逆境でも与えられた仕事を全うし正々堂々と立ち向かえば道が拓けるという教訓を教えてくれている。ファルハーン・アクタル、ダイアナ・ペンティー、ローニト・ロイなどの好演も見所である。