Commando 2: The Black Money Trail

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Commando 2: The Black Money Trail
「Commando 2: The Black Money Trail」

 ヴィデュト・ジャームワールはインド武術カラリパヤットゥなど、マーシャルアーツの使い手で、スタントマン出身の俳優として、主にヒンディー語映画界で活躍する真正のアクションスターである。ヴィデュトが初めて主演を務めた映画が「Commando: A One Man Army」(2013年)であった。インド陸軍コマンドーのカランが主人公のアクション映画であり、彼のスキルが最大限に活かされた作品だった。

 「Commando」がまずまずの成功を収めたことで、続編が作られることになった。2017年3月3日公開の「Commando 2: The Black Money Trail」である。主演はもちろんヴィデュト・ジャームワール。監督は新人のデーヴェーン・ボージャーニーに交替しているが、プロデューサーはヴィプル・アムルトラール・シャーで変わらない。他に、アダー・シャルマー、イーシャー・グプター、フレディー・ダールーワーラー、シェーファーリー・シャー、アーディル・フサイン、サティーシュ・カウシクなどが出演している。

 2016年の高額紙幣廃止の後、インドはブラックマネーの取り締まりを強化した。海外にはインド人資産家が隠し持っている合計10兆ルピーものブラックマネーがあるとされており、それを取り仕切っていたのがヴィッキー・チャッダーであった。カランはヴィッキーの行方を追って台湾へ渡り、そこで彼がマレーシアにいることを突き止める。ヴィッキーはマレーシアで逮捕される。

 ヴィッキー逮捕のニュースは、ブラックマニーを海外に隠し持つインド人たちに衝撃を与えた。その内の一人が、リーナー・チャウダリー内相(シェーファーリー・シャー)の息子だった。リーナー内相はヴィッキーをインドに移送するために特別チームをマレーシアに派遣する。チームは、バクタワール・カーン警部(フレディー・ダールーワーラー)、バーヴナー・レッディー警部補(アダー・シャルマー)、ザファル・フサインとカランで構成されていた。

 マレーシアに着いた四人はヴィッキーとその妻マリア(イーシャー・グプター)と会い、翌日護送するが、武装集団に襲撃を受け、タイに逃れる。だが、実は本物のヴィッキーはマリアの方であった。ヴィッキー(=マリア)は夫(偽のヴィッキー)を殺し、逃亡する。ヴィッキーは10兆ルピーを安全な口座に分散して移そうとしていた。

 カランはヴィッキーを追い、あと少しで捕まえそうになるが、バクタワールがヴィッキー側に寝返り、また逃げられてしまう。カランはバーヴナーと共にヴィッキーの協力者であるジミーを見つけ出し、ヴィッキーを罠に掛ける。ヴィッキーが10兆ルピーを移すと、その振込先はインドの貧しい農民の口座になっていた。また、実はバクタワールの裏切りもカランの作戦であった。バーヴナーはヴィッキーを殺す。

 敢えて好意的に一言で評するならば、10代前半の少年向けアクション映画であった。ちょうど少年ジャンプの漫画を読んでいるような、深く考えずサクサク読み進めて行けるような、そしてアクションシーンを楽しむためだけにあるような映画であった。

 前作に引き続き、ヴィデュト・ジャームワールの独壇場であった。彼の極上の肉体美や華麗な身のこなしを最大限引き立てるために映画全体が存在する。アクションシーンでは、必要以上に動き回る。そして彼とまともに相見えることができる強さを誇るキャラは映画には他に登場しない。だから敵なしだ。しかも頭の回転が速く、映画を最後まで見ると、物語の大部分は彼の演じるカランの手のひらの上で起こっていたことだということが分かる。ヴィデュトのステップアップとしては最適の映画だ。

 ヴィデュトがあまりにスーパーヒーロー過ぎるため、他の登場人物はほとんど添え物だ。ヒロイン扱いのバーヴナーは、エンカウンター・スペシャリストとして華々しく登場する割には、場を掻き乱してばかりの道化役同然であり、久々にヒンディー語映画に復帰したアダー・シャルマーが憐れだ。しゃべり方も変で、テルグ語とマラーティー語を交ぜたような、たどたどしい台詞回しをする。

 イーシャー・グプター演じるヴィッキー・チャッダーは、セカンドヒロインと思いきや、まさかの悪役であった。もちろん、女性なので、筋肉隆々のカランとまともに戦うことはできない。その代わり、カランと頭脳戦を繰り広げる。だが、カランの方が一枚も二枚も上手で、彼の仕掛けた罠にはまって10兆ルピーの転送に失敗した上に、無慈悲に殺されてしまう。

 2016年11月8日に突如モーディー首相によって発表された高額紙幣廃止が、翌年3月3日公開のこの映画の冒頭で触れられていた。かなり早い反映だ。高額紙幣廃止に言及された最も早い例のひとつだと思われる。ただ、映画のテーマは、副題にもある通り、ブラックマネーの方である。

 「Commando 2: The Black Money Trail」は、前作に引き続き、ヒンディー語映画界切ってのアクションスター、ヴィデュト・ジャームワールを前面に押し出したアクション映画である。ストーリーは単純明快かつ大味で、大の大人がまともに鑑賞するような作品ではないが、少年ジャンプを読んでいるような年齢層の少年たちには響くのではなかろうか。