Running Shaadi

3.0

 インドでも結婚は巨大なビジネスであり、マッチメイキングからウェディングプラニングまで結婚を巡る様々な商売が存在する。結婚斡旋業者が出て来る映画は多いし、「Band Baaja Baaraat」(2010年)はウェディングプランナーを主人公にしたロマンス映画だった。

 2017年2月17日公開の「Running Shaadi」は、「駆け落ち結婚」という題名が示す通り、駆け落ち結婚が主題の映画だ。しかも、主人公が駆け落ち結婚コンサルタント会社を始めるという筋書きである。監督は「Nishabd」(2007年)や「Sarkar Raj」(2008年)などで撮影監督を務めて来たアミト・ロイ。長編映画は初となる。むしろプロデューサーに名を連ねているシュジト・サルカールの作風がよく出た映画になっている。主演はアミト・サードとタープスィー・パンヌー。他に、アールシュ・バージワー、ブリジェーンドラ・カーラー、リチャー・ミーナーなどが出演している。

 舞台はアムリトサル。ビハール州パトナーからアムリトサルに流れ着き、服飾店で働いていたラーム・バローセー(アミト・サード)は、店主の娘ニンミー(タープスィー・パンヌー)に恋していたが、ニンミーはラームを利用するだけで、彼には気がないそぶりをしていた。ニンミーを諦めたラームは、パトナーにいる叔父ウジャーラー(ブリジェーンドラ・カーラー)の勧めるお見合い結婚をすることにする。ラームの結婚相手はネーハー(リチャー・ミーナー)に決まった。

 ところが、ラームは店主と喧嘩をし、仕事を辞めてしまった。彼は親友のサイバージート(アールシュ・バージワー)と共に駆け落ち結婚専門のコンサルタント会社「ランニング・シャーディー」を立ち上げる。ニンミーはそれを手伝うようになる。ランニング・シャーディーは大成功し、数多くのカップルの駆け落ち結婚を成功させてきた。

 50番目の仕事になったのが、ニンミーと恋人シャンティーの駆け落ちだった。ラームは、かつて世話になった店主を裏切ることになるため、渋々この仕事を引き受けた。だが、実はシャンティーは存在しなかった。ニンミーは最初からラームと駆け落ち結婚することを画策していたのである。ニンミーを連れ出したラームは、そのまま彼女とサイバージートを連れて逃げ回ることになる。最終的に辿り着いたのが、ラームの故郷であるパトナーだった。

 パトナーではラームとネーハーの結婚式の準備が進んでいた。ニンミーはサイバージートの妹ということにした。ラームはネーハーと初めて顔を合わせたが、どうも浮かない顔をしていた。調べてみると、ネーハーには恋人がいた。そこでラームは、自分とネーハーの結婚式の日、ネーハーを恋人と駆け落ち結婚させる。

 ラームとニンミーはアムリトサルに戻り、ニンミーの家族に結婚を認めてもらおうとする。

 ヒンディー語映画において駆け落ち結婚は珍しくないが、駆け落ち結婚を専門に扱う業者の映画はユニークだった。事務所は置かず、全てネット上で完結させていたため、足は付きにくかった。だが、駆け落ち結婚をさせていた主人公ラーム自身が、半ばはめられる形でヒロインのニンミーと駆け落ち結婚をすることになったために、大きなトラブルに巻き込まれる。終盤では、自分のお見合い結婚相手であるネーハーを、彼女の恋人と駆け落ち結婚させるプロジェクトを主導するという斜め上の展開もあった。きれいにまとまった脚本だった。

 何と言っても、タープスィー・パンヌーが演じたニンミーのキャラが強烈だった。ニンミーは、学生の頃に恋人とセックスをし妊娠してしまう。それを家族に言えなかったニンミーが頼ったのが、家族が経営する服飾店で拾われて働いていたラームであった。ラームはニンミーを病院に連れて行き、中絶手術をさせる。大学生になると、ニンミーはますます男勝りの女性となる。一方、学歴の低いラームは、恩人である店主の娘ということもあって、ニンミーにはますます頭が上がらなくなる。ニンミーには恋心を抱いていたが、ラームのことを全く気に掛けないニンミーの態度に彼は次第に諦めの感情を抱くようになる。

 だが、ニンミーが駆け落ち結婚の相手に選んだのはラームであった。彼女は度々ラームに鎌を掛けるような発言をしていたのだが、鈍いラームは気付かなかった。彼がニンミーの本心に気付いたのは、既に駆け落ち結婚を実行に移し、引き返せなくなったタイミングだった。

 タープスィーの、ベラベラベラッとしゃべるしゃべり方や、肝の据わった態度など、映画を支配する迫力を持っており、同じ主演であるはずのアミト・サードを完全に食っていた。2010年代のヒンディー語映画界は女性中心映画の隆盛で特徴づけられるが、その象徴の一人がタープスィーであり、この「Running Shaadi」で彼女が演じたニンミーだといえる。

 序盤は、黄金寺院で有名な、パンジャーブ州のアムリトサルを舞台にしていたが、主人公自身が駆け落ち結婚をして逃亡の身となってしまってからは、インド各地を移動することになる。まずはアンバーラーへ行き、その後、ヒマーチャル・プラデーシュ州の避暑地ダルハウジーに移り、最後にビハール州のパトナーに辿り着く。実際に当地でロケが行われていると見られ、パンジャーブ州とビハール州の雰囲気の違いが分かる。

 ちなみに、この映画のタイトルは元々「Runningshaadi.com」であった。ラームとサイバージートが立ち上げた駆け落ち専門サイトの名前をそのまま題名にしていた。しかし、インドには「Shaadi.com」という結婚斡旋サイトがあり、この業者が映画の製作者を訴えて、名前の変更を求めた。その結果、題名は「Running Shaadi」となり、映画中でも「Runningshaadi.com」という台詞はカットされ、口にモザイクが掛けられている。

 「Running Shaadi」は、駆け落ち結婚を専門としたコンサルタント会社を立ち上げた若者たちを主人公にしたラブコメ映画である。プロデューサーのシュジト・サルカールのおかげではないかと思うが、新人監督の映画にしてはきれいにまとまった映画であった。タープスィー・パンヌーの演技も見事であった。ただ、興行的には失敗に終わっている。