Rock On 2

4.5

 インド映画は常に歌と音楽と共にあったが、意外なことに、ロックを主題にした映画は作られて来なかった。初めて大々的かつ本格的に作られたロック映画は、アビシェーク・カプール監督のヒット作「Rock On!!」(2008年)だった。その後、「London Dreams」(2009年)や「Rockstar」(2011年)などのロック映画が続いた。

 2016年11月11日公開の「Rock On 2」は、その題名の通り、「Rock On!!」の続編である。インド映画では、「~2」と付いていても内容に連続性がないことが多いが、「Rock On 2」に関してはストーリーからキャラクターまで完全に連続している続編映画である。ただし、監督は新人のシュジャート・サウダーガルに交替しており、前作のアビシェーク・カプール監督はプロデューサーに回っている。音楽監督は前作から引き続きシャンカル・エヘサーン・ロイである。

 前作の主要キャストは今回も引き続き出演している。アルジュン・ラームパール、ファルハーン・アクタル、プーラブ・コーリー、ルーク・ケニー、プラーチー・デーサーイー、シャハーナー・ゴースワーミーである。ただし、プラーチーはセカンドヒロインに退き、ルークとシャハーナーはカメオ出演に留まっている。そして、今回のメインヒロインはシュラッダー・カプールに交替している。

 他に、シャシャーンク・アローラー、クムド・ミシュラー、プリヤーンシュ・パインユリ、ディネーシュ・クマールなどが出演している。また、プレイバックシンガーのスニディ・チャウハーンとウシャー・ウトゥプ、音楽監督デュオ、サリーム・スライマーンのサリーム・マーチャント、別の音楽監督でデュオ、ヴィシャール・シェーカルのヴィシャール・ダードラーニーが特別出演している。

 ジョー(アルジュン・ラームパール)、アーディ(ファルハーン・アクタル)、KD(プーラブ・コーリー)で構成された人気バンド、マジックは既に音楽活動を休止していた。ジョーはタレント発掘番組の審判として芸能活動をする傍ら、音楽バーも経営して成功していた。アーディは5年前に音楽を止め、ムンバイーを去って、メーガーラヤ州で農園を経営しながら学校で教える隠居生活を送っていた。彼の妻のサークシー(プラーチー・デーサーイー)は、息子のロブと共にムンバイーに住んでいた。

 アーディはこの5年間、悪夢にうなされていた。5年前、アーディのところにCDを売り込みに来ていた青年ラーフル(プリヤーンシュ・パインユリ)が、アーディから冷遇された挙げ句、自殺してしまい、それ以来、彼は罪の意識に苛まれていた。ラーフルの死後に彼はラーフルの音楽を聴き、その才能に気付いたのだった。あと1日早くCDを聴いていたら、自殺を止められたかもしれなかった。

 そんなある日、アーディの農園が火事になり、全てが焼失してしまった。傷心のアーディはムンバイーに戻る。そこで彼は、ジヤー(シュラッダー・カプール)と再会する。ジヤーとはメーガーラヤ州で会ったことがあり、彼の命の恩人であった。ジヤーは、サロード奏者ウダイ(シャシャーンク・アローラー)と共に曲を作っており、アーディはそれを気に入った。ところが、ジヤーはラーフルの妹であることが分かる。アーディは、自分がラーフルにした仕打ちを打ち明ける。以降、ジヤーはアーディと会わなくなる。

 ラーフルとジヤーは、著名な古典音楽家パンディト・ヴィブーティ・シャルマー(クムド・ミシュラー)の子供だった。ヴィブーティは古典音楽しか認めておらず、ラーフルやジヤーが傾倒するポピュラー音楽を毛嫌いしていた。ラーフルの自殺の原因も、父親から認められなかったことで、ジヤーも抑圧されて生きていたのだった。

 ところで、アーディの農園で働いていた労働者たちは、未だに避難民キャンプで避難生活を送っていた。政府からの支援金が出ていたが、州福祉局が止めていた。マヘーンドラ局長がアーディと対立していたからである。それを知ったアーディはメーガーラヤ州に戻り、何とかしようとする。マヘーンドラ局長とは話しても埒が明かなかったため、仲間を集めて救済コンサートをメーガーラヤ州で開催しようとする。マジックを再結成し、SNSを使って宣伝をしたことで、多くの客が集まる。マヘーンドラ局長は妨害しようとするが、アーディの仲間たちが窮地を救った。ジョー、アーディ、KDに加えて、ウダイとジヤーもステージに立ち、音楽を披露する。救済コンサートは大成功に終わった。

 これがきっかけでマジックは音楽活動を再開し、ジヤーは売れっ子ミュージシャンとなって国際的に活躍するようになった。

 まず興行的な結論から言えば、「Rock On 2」は大失敗に終わった。前作はヒットしたのだが、前作のヒットが続編の成功を保証しないのはどこの国でも同じである。ただ、ヒットしなかった映画が軒並み駄作でもない。「Rock On 2」に関してはタイミングが悪かった可能性がある。なぜなら、この映画が公開される直前にインドでは突然、高額紙幣廃止が行われ、のんびりと映画を鑑賞していられる状況ではなくなったのである。客観的に見て、「Rock On 2」は前作に勝るとも劣らない傑作であり、特に音楽好きにはたまらない作品になっている。

 やはり前作でお馴染みのキャラが今回も勢揃いしているのが強い。スケジュールの問題などから続編で一部のキャストが入れ替わることは少なくないのだが、「Rock On 2」ではキャストが完全に保たれている。また、前作で死んだ、ルーク・ケニー演じるロブまで、過去の回想シーンで出演しており、十分なファンサービスがなされている。

 音楽を中心にしたストーリーテーリングも前作から変わらず、期待通りだった。そして、音楽映画では音楽の質も映画の質に多大な影響を与えるが、音楽監督シャンカル・エヘサーン・ロイの作った挿入歌の数々は名曲ばかりだった。前作のタイトル曲「Rock On!!」もリメイクされて使われており、これもファンサービスをしっかり心得ていた。

 古典音楽とロックの対立が大きな議題となっていたのも、音楽映画としては興味深い点であった。今回から新たに加わったジヤー、ラーフル、そして彼らの父親ヴィブーティは、2つの異なる音楽の世界を象徴していた。両者の間で最後まではっきりとした和解は描かれなかったが、音楽映画として幅が出る設定だった。

 メーガーラヤ州が主な舞台になっていたが、これもいいチョイスだった。実は、インド東北部にあり、辺境の地のイメージが強いメーガーラヤ州は、「インドのロック首都」と呼ばれるほどロックが盛んという別の顔を持った州でもある。挿入歌の中には、メーガーラヤ州のバンド、サマーソルト(Summersalt)のキト・シャンプリャン(Kit Shangpliang)とピンスクリン・シエミョン(Pynsuklin Syiemiong)がウシャー・ウトゥプと歌う「Hoi Kiw / Chalo Chalo」があり、インドのロックシーンの多様性を強調していた。バングラデシュと接するメーガーラヤ州において、被災者の救済コンサートを開催するという筋書きは、1971年にジョージ・ハリスンが主催したバングラデシュ・コンサートを想起させる。

 バディーフィルム的な爽快な場面も多いのだが、全体的には、ラーフルの自殺を巡ってダークなトーンが続く映画でもある。しかも、ラーフルを巡って、アーディとジヤーが結び付く。二人の心情表現はとても繊細で、それをナーレションとして語るプーラブ・コーリーの語り口も良かった。また、前作ではアルジュン・ラームパール演じるジョーの比重が高かったが、「Rock On 2」の主演は完全にファルハーン・アクタル演じるアーディにシフトしていた。

 ファルハーン・アクタルは、監督としても知られるが、ミュージシャンもしており、自分で歌を歌うのが大好きだ。今回も5曲を自分で歌っている。それに対抗してか、ヒロインのシュラッダー・カプールも4曲を歌っている。実はシュラッダーは、インド映画界を代表するプレイバックシンガー、ラター・マンゲーシュカルやアーシャー・ボースレーの姪の娘に当たり、音楽的素養があるようだ。幼少時から歌唱の訓練も受けていたらしい。彼女は過去にも「Ek Villain」(2014年)などで歌声を披露しているが、ここまで多くの歌を歌ったのは、この映画が初めてだ。

 2008年のヒット作「Rock On!!」の続編「Rock On 2」は、興行的には振るわなかったものの、それは単にタイミングが悪かっただけで、作品の質は前作以上だと評価できる。キャスティング、ストーリー、音楽、全てが絶品だ。メーガーラヤ州を舞台にしたのもいいセンスをしている。必見の映画である。