Kis Kisko Pyaar Karoon

3.5
Kis Kisko Pyaar Karoon
「Kis Kisko Pyaar Karoon」

 2015年9月25日公開の「Kis Kisko Pyaar Karoon(誰と誰を愛そうか)」は、人気コメディアン、カピル・シャルマー主演のコメディー映画である。カピルは過去に映画に出演したことがあるが、この作品は彼の本格的な俳優デビューになる。

 監督はB級映画を得意とする兄弟デュオ、アッバース・マスターン。キャストは、主演カピル・シャルマーの他には、ヴァルン・シャルマー、マンジャリー・ファドニス、サーイー・ロークール、スィムラン・カウル・ムンディー、エリ・アヴラーム、ジェイミー・リーヴァル、アルバーズ・カーン、スプリヤー・パータク、シャラト・サクセーナー、マノージ・ジョーシーなどである。

 舞台はムンバイー。クマール・シヴ・ラーム・キシャン(カピル・シャルマー)は、ひょんなことから3人の女性と結婚することになってしまう。ジューヒー(マンジャリー・ファドニス)とは、たまたま彼女の父親の死に際に立ち会ったことから結婚することになった。アンジャリ(サーイー・ロークール)とは、彼女が結婚相手に逃げられたところにたまたま遭遇し、彼女の兄で、耳に障害のあるマフィアのドン、タイガー・バーイー(アルバーズ・カーン)に強要されて結婚することになった。スィムラン(スィムラン・カウル・ムンディー)とは、やはり彼女の結婚相手に騙されて花婿にされ、結婚することになった。ジューヒーの前ではキシャン・クマール、アンジャリの前ではラーム・クマール、スィムランの前ではシヴ・クマールという名前を使っていた。クマールは、親友の弁護士カラン・メヘター(ヴァルン・シャルマー)の助言に従って、3人を同じアパートの異なる階に住まわせる。そして、3日に1日、それぞれの家で過ごすことにする。

 さらに、クマールにはディーピカー・コーターリー(エリ・アヴラーム)という恋人もいた。クマールはディーピカーとの結婚を望んでおり、彼女の父親グラーブチャンド(マノージ・ジョーシー)にも気に入られていた。

 クマールは、3人の妻をお互いに合わせないように苦心するが、3人とも自然に会って仲良くなってしまう。また、クマールの父ブリジモーハン(シャラト・サクセーナー)と母ルクマニー(スプリヤー・パータク)は15年前に離婚していたが、たまたま二人とも息子に会いにムンバイーにやって来る。ブリジモーハンはアンジャリの家に、ルクマニーはジューヒーの家に滞在する。

 クマールは、既婚であることを隠しながらディーピカーと結婚しようとする。だが、実はディーピカーはスィムランの友人であり、彼女を通してジューヒーやアンジャリとも仲良くなっていた。ジューヒー、アンジャリ、スィムランが結婚式に来ることになり、クマールは最大のピンチを迎えるが、参列者に花嫁花婿のドレスコードを設けたテーマ結婚式を発案し、何とか危機を乗り切ろうとする。だが、とうとうクマールの正体がばれてしまう。それでもクマールは、ジューヒー、アンジャリ、スィムランとは望まない結婚をすることになったものの、本当に結婚したかったのはディーピカーだと涙ながらに訴える。

 結局、クマールとディーピカーの結婚式が行われ、ジューヒー、アンジャリ、スィムランはディーピカーと一緒に住むことになった。

 3人の妻を持ち、それに懲りずに恋人と4回目の結婚をしようとする男性の物語である。ただ、主人公のクマールは裕福であったが必ずしもプレイボーイではなかった。3人の女性と結婚したのもアクシデントであり、決して彼女たちを騙そうとして結婚したのではなかった。それぞれにどうしようもない事情があったのである。インドでは浮気を主題にしたコメディー映画が人気なのだが、厳密な意味ではこの「Kis Kisko Pyaar Karoon」は浮気モノに分類できないだろう。むしろ、純愛の要素もあり、それ故に最後のハッピーエンドも心地よいものに仕上がっていた。さすが、ベテランのアッバース・マスターン監督である。

 この映画の最大の見所は、TV番組で面白おかしく司会を務め人気を博しているコメディアン、カピル・シャルマーがどこまで役柄を演じることができるかである。TVで魅せているマシンガントークは映画でも変わらず健在で、長い台詞を淀みなく発することができていたし、なかなかどうして演技も良かった。マルチタレント振りを証明したといっていい。

 ヒロインの数は多いが、有名な女優はいない。もっとも名が知れているのは、ディーピカー役を演じていたスウェーデン人女優エリ・アヴラームであろう。「Mickey Virus」(2013年)でヒンディー語映画デビューし、本作が2作目になる。ジューヒー役を演じたマンジャリー・ファドニスは「Jaane Tu… Ya Jaane Na」(2008年)などに出演していた女優だ。アンジャリ役を演じたサーイー・ロークールは主にマラーティー語映画に出演経験のある女優だ。スィムラン役を演じたスィムラン・カウル・ムンディーは2008年のミス・インディアで、「Jo Hum Chahein」(2011年)などに出演していた。これらの中で突出して将来性のある女優はいなかったが、ルックスとスタイルの良さだけで見たら、さすがにミス・インディアのスィムラン・カウル・ムンディーに軍配が上がる。

 もう一人、特筆すべきは、コメディアン俳優として人気のジョニー・リーヴァルの娘ジェイミー・リーヴァルだ。カピル・シャルマーと共に彼女もこの映画でデビューした。スィムランの家で働くメイド、チャンパー役を演じていた。重要な役ではなかったが、出番はきっちりとこなしていた。

 アルバーズ・カーンの出演は異色であったが、シャラト・サクセーナー、スプリヤー・パータク、マノージ・ジョーシーなどベテラン陣がよく若手俳優たちを支え、映画を盛り上げていた。

 同時に複数の妻を持った男性にとって、インドのカルワー・チャウト祭は鬼門だ。この日、既婚女性は日中断食し、月が出ると夫の顔を見て断食を止める。どのように切り抜けるのかと思って見ていたら、3人の妻をベランダに呼び寄せて、向かいの建物の屋上に現れ、一気にカルワー・チャウト祭を済ませてしまっていた。カルワー・チャウト祭が分かっていると秀逸なシーンである。

 「Kis Kisko Pyaar Karoon」は、人気コメディアンのカピル・シャルマーが映画俳優デビューした記念碑的作品である。ジャンルはもちろんコメディー。カピルを含めて経験の浅い若手俳優が多く起用されていたものの、B級映画を撮らせたら右に出る者はいないアッバース・マスターンが上手に組み立て、抱腹絶倒のコメディー映画に仕上がっていた。興行的にもヒットしたようだ。


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