Ab Tak Chhappan 2

3.0
Ab Tak Chhappan 2

 「Ab Tak Chhappan」(2004年)は、ラーム・ゴーパール・ヴァルマーがプロデュースした、ムンバイー警察のエンカウンター・スペシャリストを主人公にしたハードボイルドなクライムサスペンス映画だった。評論家から高い評価を受け、興行的にもヒットした。それからおよそ10年後となる2015年2月27日に、その続編となる「Ab Tak Chhappan 2」が公開された。前作からストーリー上のつながりがある続編である。

 前作の監督はシーミト・アミーンだったが、今回はスタントマン出身のイージャーズ・グラーブに交替している。彼が映画を撮るのは初めてである。主演サードゥ・アーガーシェー警部補を演じるのは変わらずナーナー・パーテーカル。他に、サードゥの上司で警視総監のプラダーンを演じたモーハン・アーガーシェーと、息子アマンを演じたタンマイ・ジャハギールダールが前作から引き続き主演し、同じ役を演じている。前作でサードゥの妻ナミーターを演じたレーヴァティーは回想シーンにのみ出演。一方、今回から新しく起用されたのは、グル・パナーグ、ゴーヴィンド・ナームデーヴ、ラージ・ズトシー、ヴィクラム・ゴーカレー、ディリープ・プラバーヴァールカル、アーシュトーシュ・ラーナーなどである。

 ちなみに、今回ラーム・ゴーパール・ヴァルマーはプロデューサーに名前を連ねていない。

 前作での事件の後、サードゥ・アーガーシェー警部補(ナーナー・パーテーカル)は逮捕され、現在は保釈中の身だった。サードゥは息子のアマン(タンマイ・ジャハギールダール)と共にゴアで悠々自適の生活を送っていた。だが、マハーラーシュトラ州ではアンダーワールドの抗争が激化していた。特に、ラーウレー(ラージ・ズトシー)とラウフという2人のドンの間で対立が続いていた。

 そこで、州首相のアンナー・サーハブ(ディリープ・プラバーヴァールカル)は内相のジャナルダン・ジャーギールダール(ヴィクラム・ゴーカレー)に対策を命じる。ジャーギールダール内相は、元警視総監のプラダーン(モーハン・アーガーシェー)に相談し、かつてエンカウンター部隊を率いていたサードゥを呼び戻すことにする。

 サードゥに掛けられていた容疑は全て取り下げられ、サードゥはムンバイー警察で再びエンカウンター部隊を率いることになった。早速、彼はターゲットにするマフィアのリストを作り、海外に住むラーウレーと連絡を取りながらも、ラーウレーとラウフのマフィアに属する下っ端たちを一人一人抹殺を始める。また、サードゥの元には、ムンバイーのアンダーワールドを取材するジャーナリスト、シャールー・ディークシト(グル・パナーグ)が訪れる。

 サードゥが現役に復帰したことで、サードゥ自身もマフィアに狙われるようになる。そして、まずはアマンが殺されてしまう。ラーウレーは、ラウフが黒幕だと密告する。サードゥはラウフを捕まえるが、彼はラーウレーがアンナー州首相を暗殺しようとしているとほのめかす。だが、サードゥの部下のスーリヤカーント・トーラト(アーシュトーシュ・ラーナー)に殺されてしまう。その直後、アンナー州首相が本当に暗殺される。

 サードゥは、アンナー州首相暗殺の黒幕がジャーギールダール内相であると察知する。ジャーギールダール内相はそれを認め、アンナーの後は自分が州首相になること、そして自分の味方になった方が得であることをサードゥに言う。一方、シャールーは、ジャーギールダール内相とラーウレーが内通している証拠を手にするが、スーリヤカーントに撃たれる。サードゥはスーリヤカーントを殺す。また、ラーウレーはインドに戻ってきて逮捕される。

 アンナー州首相の追悼集会においてジャーギールダール内相が演説をしているとき、サードゥは会場に現れ、公衆の面前で内相を殺し、逮捕される。尋問室でサードゥは全てをプラダーンに明かす。

 ラーム・ゴーパール・ヴァルマー、自身の監督作において、奇をてらったカメラワークに凝っていた時代があった。普通では考えられないようなアングルからわざわざ撮影するのである。当初は目新しさがあったが、それが繰り返されると、だんだんくどくなってきた。「Ab Tak Chhappan 2」は、ラーム・ゴーパール・ヴァルマーの関与がないはずだが、彼のスタイルを真似たようなカメラワークが見られた。きっと、イージャーズ・グラーブ監督がラーム・ゴーパール・ヴァルマーへのオマージュとしてわざと真似してやっているのだろうが、本家ほど効果的にカメラワークを活用しているわけではなく、邪魔に思えた。

 「Ab Tak Chhappan」という題名は「これまでは56人」という意味で、56人の犯罪者をエンカウンターで殺した警察官の行状を示していた。だが、既に56人を超える犯罪者を殺しているサードゥにとって、この題名をいつまでも使うのは適切ではないように思えた。サードゥのモデルになった、ムンバイー警察のダヤー・ナーヤク警部補は、既に80人以上の犯罪者をエンカウンターで殺している。今回、サードゥは、マフィアを殺すだけでなく、内務大臣を殺すという大胆な行動を起こしており、数ではなく質で勝負でもあった。もっといい題名があったのではないかと思う。

 ラージ・ズトシーが演じたラーウレーは、車椅子に座り、海外からムンバイーのアンダーワールドを支配するドンであった。車椅子に乗ったドンというと、アシュウィン・ナーイクがいるし、海外を拠点にしたドンというとダーウード・イブラーヒームがいる。その辺りのドンを融合させたのがラーウレーのキャラクターであろう。

 前作でサードゥは妻のナミーターを亡くすが、今回は一人息子のアマンを亡くす。サードゥは、アマンを守るために現役復帰をためらっていたが、アマンの後押しがあって、ムンバイー警察に戻ってきた。その当の本人が死んでしまうのはサードゥの悲しみを増大させた。だが、映画の冒頭でアマンの死は半ば予想できたものであるし、悲哀を強調するために家族の死を演出する手法は前作を踏襲するもので目新しさもなかった。

 主演ナーナー・パーテーカルの演技は素晴らしく、いくつかの台詞回しに彼の持ち味が発揮されていたが、全体的に前作「Ab Tak Chhappan」を超えるような要素が何一つ見つからず、残念な続編になってしまっていた。興行的にも大失敗に終わり、「3」が作られることはないのではないかと思われる。

 「Ab Tak Chhappan 2」は、10年前に作られたヒット作「Ab Tak Chhappan」の続編である。マフィアを一網打尽にするためにインドの警察が採る究極の手段「エンカウンター」を題材にした映画は当時は目新しさがあったのだが、それからエンカウンター・スペシャリストを主人公にした映画が雨後の竹の子のように作られるようになり、もはやエンカウンターだけでは何の新鮮さもない。主演を含め、数人のキャストは前作から引き継がれているものの、監督をはじめとした製作陣は全く別であり、前作と同様の緊迫感や、前作を超える出来は期待してはならない。


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