Khamoshiyan

2.5
Khamoshiyan

 2015年1月30日公開の「Khamoshiyan(沈黙)」は、B級映画の雄、マヘーシュ・バット、ムケーシュ・バット、ヴィクラム・バットの一族によって作られたホラー映画である。

 監督は新人のカラン・ダッラー。主要キャストはアリー・ファザル、グルミート・チャウダリー、そして新人サプナー・パッビーの3人である。他に、デービナー・バナルジー、ヴィノード・ラーワトなどが出演している。また、この映画の脚本を担当したヴィクラム・バットが特別出演している。

 スランプで小説を完成できずにいた作家カビール(アリー・ファザル)は、恋人が他の男性と結婚してしまったことを機に、心を入れ替えて新作に取り組むことを決める。執筆のため、カビールはシュリーナガル近くの山奥にあるホテルに滞在する。そのホテルは、ミーラー(サプナー・パッビー)という女性が一人で切り盛りしていた。ミーラーの夫ジャイデーヴ(グルミート・チャウダリー)は病気とのことだった。

 しかし、カビールはホテルで怪奇現象に遭遇するようになる。ミーラーに恋するようになったカビールは彼女を連れてホテルを出ようとするが、交通事故に遭ってホテルに引き戻される。カビールは霊媒師(ヴィノード・ラーワト)を呼んでホテルに取り憑いている悪霊について調べてもらう。霊媒師によると、ミーラーに殺されたジャイデーヴの霊が怪奇現象を起こしているとのことだった。カビールは、ジャイデーヴの寝室に潜入するが、そこにはちゃんとジャイデープがいた。ジャイデーヴの部屋にカビールが侵入したことを知ったミーラーは彼を追い出そうとするが、ミーラーもカビールに恋しており、彼を引き戻す。二人は情事に耽るが、カビールはやはりジャイデーヴがかなり前に死んでいたことを知ってしまう。薬草によって腐敗が止められていただけだった。真実を知られてしまったミーラーは睡眠薬を大量に摂取して自殺を図ろうとするが、カビールに止められる。

 ミーラーによると、彼女は元々ムンバイーでモデルを目指していた。だが、州議会議員の息子を自動車でひき殺してしまい、シュリーナガルまで逃げて来たのだった。そこで出会ったホテル経営者のジャイデーヴと結婚するが、彼は悪魔の信仰者だった。逃げようとするミーラーをジャイデーヴは殺そうとするが、逆にジャイデーヴが2階から落ちて半身不随となってしまう。ミーラーは、ジャイデーヴが集めていた蝶を逃がす。ジャイデーヴは睡眠薬を飲んで自殺するが、ミーラーが逃げられないように手を打ってあった。もし彼が死んでいることが弁護士に分かれば、ミーラーのひき逃げが明らかになり、しかも彼を殺したのはミーラーであることも公表されることになっていた。よって、ミーラーはホテルに留まり、ジャイデーヴは生きていることにして暮らしていたのだった。

 二人は霊媒師の助言に従って特別な方法でジャイデーヴの遺体を火葬するが、ジャイデーヴの霊はまだ存在していた。ミーラーはジャイデーヴに捕まって絵の中に閉じ込められてしまう。カビールは、ジャイデーヴを成仏させるため、彼の遺灰を彼の霊が乗り移った蝶に振りかけようとするが、ジャイデーヴの霊は様々な姿形に変化しカビールに襲い掛かる。カビールはジャイデーヴの霊を自分の身体に取り込んで遺灰を飲み、彼を成仏させる。ミーラーは戻って来て、二人は結婚し、カビールは新しい小説「Khamoshiyan」を上梓した。

 「沈黙」という題名の映画であったが、後半はとても騒々しい展開だった。ホラー映画に緻密なロジックを求めるのは間違いだが、それでも一定のロジックがないとストーリーに入りこむことは難しい。「Khamoshiyan」のストーリーにはほとんどロジックが感じられず、行き当たりばったりの展開が続き、観ていると疲れてくる。ヴィクラム・バットが書いた物語にはよくあることなのだが、それでも整っている映画はある。その中で「Khamoshiyan」は完成度の低い映画に数えられるだろう。ホラー映画としてもあまり怖くない。

 人間関係で興味深いのは、主要キャラが堂々と不倫関係またはそれに近い関係を結ぶことである。ジャイデーヴがミーラーに会ったとき、彼は前の妻と死別していた。前妻の死の原因は不明だが、ジャイデーヴが殺した可能性はある。ミーラーにも恋人がいたはずだが、ひき逃げ事故を起こしてシュリーナガルまで逃げて来た彼女はもう恋人と連絡を取ろうとしない。こうしてジャイデーヴとミーラーは結婚する。カビールがミーラーに会ったとき、ミーラーは既婚であった。実際にはジャイデーヴは死んでいたが、ミーラーは表向きは夫が存命であるとしていた。しかしながら、カビールとミーラーは恋仲になり、身体関係にもなる。カビールは独身ではあったが、恋人との別れを経験していた。「Khamoshiyan」を観ていると、不倫が否定的な倫理観で語られることは全くない。もはや自然の成り行き扱いになっている。

 ジャイデーヴは悪魔を信仰する者であったが、この悪魔教の実態はほとんど明らかにならない。「Ek Thi Daayan…」(2013年)などと似たイメージではあったが、ジャイデーヴ自身が悪魔のような力を得ていただけで、悪魔自体が登場する訳ではなかった。死後も悪霊となってミーラーを悩ませ、血を浴びた事物に乗り移ることができるという特殊能力を持っていた。また、なぜか夜中に鶏を生け贄に捧げると蝶を手に入れることができていた。蝶をくれる悪魔というのは本当に悪魔なのだろうか。

 カビールを演じたアリー・ファザルは「3 Idiots」(2009年/邦題:きっと、うまくいく)で端役ながらも印象的な演技をした俳優で、その後「Fukrey」(2013年)などに出演している。ジャイデーヴを演じたグルミート・チャウダリーはTVドラマやリアリティーショー出演などで名が売れた俳優である。カビールの元恋人スィムランを演じたデービナー・バナルジーは彼の妻である。ミーラーを演じたサプナー・パッビーは英国人モデルである。

 「Khamoshiyan」は、いかにもバット一族が好んで作りそうな、エロティックなホラー映画である。だが、ロジックが崩壊しており、完成度は低い。無理して観るような映画ではない。