Ungli

3.5
Ungli
「Ungli」

 2011年に社会活動家アンナー・ハザーレーによって主導された汚職撲滅運動はインドの政界に様々な余波をもたらしたが、ヒンディー語映画界も影響を受けた。汚職を取り上げた映画が増えたのである。2014年11月28日公開の「Ungli(指)」も、汚職撲滅をテーマにした映画だ。

 プロデューサーはカラン・ジョーハルなど。監督は「Kurbaan」(2009年)のレンジル・デシルヴァ。オールスターキャストの映画であり、サンジャイ・ダット、イムラーン・ハーシュミー、ランディープ・フッダー、カンガナー・ラーナーウト、ネーハー・ドゥーピヤー、ニール・ブーパーラム、アンガド・ベーディー、アルノーダイ・スィン、マヘーシュ・マーンジュレーカルなどが出演している。また、シュラッダー・カプールがアイテムソング「Dance Basanti」でアイテムガール出演している。

 題名の「指」とは、「中指を立てる」の「指」と理解すれば、当たらずとも遠からずだ。ヒンディー語では「उंगली करनाウングリー カルナー」、直訳すると「指する」という慣用句があり、「非難する」という意味になる。その意味での「指」である。

 舞台はムンバイー。アバイ(ランディープ・フッダー)、マーヤー(カンガナー・ラーナーウト)、カリーム(アンガド・ベーディー)、ガウタム(ニール・ブーパーラム)は、マーヤーの兄リッキー(アルノーダイ・スィン)の経営するジムに通う仲間だった。ある日、リッキーは、マフィアのドン、BRダヤール(マヘーシュ・マーンジュレーカル)の息子に絡まれていた老人を助けるが、クリケットバットで頭を殴打され、昏睡状態になってしまう。しかも、ダヤールは警察に多大な影響力を持っており、圧力によって事件はもみ消された。

 アバイ、マーヤー、カリーム、ガウタムの四人は、非合法的な手段で社会の不正を暴く活動を始める。腐敗した役人や政治家に罰を与え、その様子を録画したものをニュースに流して汚職に手を染める人々に忠告を与えた。いつしか彼らはムンバイー市民から「ウングリー・ギャング」と呼ばれるようになった。

 アショーク・カーレー警部(サンジャイ・ダット)はウングリー・ギャング逮捕の任務を受け、死んだ友人の息子ニキル(イムラーン・ハーシュミー)に捜査をさせる。ニキルはウングリー・ギャングの手口を真似て汚職した役人などを罰し、ニュース番組に情報提供した。それを見たウングリー・ギャングのメンバーはニキルにアプローチしてくる。ニキルは仲間に入りたいと言い、認められる。

 ニキルはウングリー・ギャングのメンバーと過ごし、彼らがこのような活動を始めたきっかけを聞く内に、彼らに同情してくる。ニキルは彼らの行動をカーレー警部に通報し、アバイがカーレー警部に撃たれて怪我をするが、自分は警察であることを自ら明かし、ギャングを去る。

 ところでカーレー警部は、警視総監から警察人事のフィクサーであるダヤールに賄賂を渡すように強要されていた。さもなければ左遷されると脅されていた。それを知ったニキルはカーレー警部にウングリー・ギャングを紹介する。彼らは力を合わせて警察の汚職を暴く。カーレー警部は警視総監に就任し、ムンバイーから汚職を一掃しようとする。

 分かりやすい筋書きの映画で、ムンバイー市民が日頃感じているような鬱憤をよく取り上げ、その撲滅を訴える内容になっていた。定年退職して年金を受け取ろうとしても役人に賄賂を渡さなければ受け取れないとか、賄賂を渡すことで何の試験も受けずに運転免許証を取得できてしまうことなど、インドの社会に蔓延する数々の汚職が白日の下にさらされていた。ただ、あまりに物事を単純化しすぎているきらいはあった。

 オールスターキャストの映画だったために見所が分散していたようにも感じた。サンジャイ・ダット、イムラーン・ハーシュミー、ランディープ・フッダーが主役級だったが、それぞれがヒーローを担っており、映画の焦点がぼやけてしまっていた。また、ヒロインもカンガナー・ラーナーウトとネーハー・ドゥーピヤーに分散されていたが、どちらも大した出番はなかった。ちなみに「連続キス魔」として知られるイムラーンには今回もキスシーンが用意されているが、両ヒロインとではなかった。お約束として、彼とキスする要員の女優を引っ張って来たような感じだった。

 「Ungli」は、汚職撲滅運動から生まれた汚職テーマの映画の一本である。サンジャイ・ダット、イムラーン・ハーシュミー、ランディープ・フッダー、カンガナー・ラーナーウトなど、オールスターキャストの映画ではあるが、それらを上手に使いこなせていなかった。筋書きも分かりやすいのだが単純すぎる。それでも娯楽作としてはまとまっている。