Khwahish

3.0
Khwahish

 マッリカー・シェーラーワトは一世を風靡した女優だ。肌見せやベッドシーンを厭わないセクシーな女優として2000年代に活躍し、インド人男性のセックスファンタジーを満たしてきた。ただ、本人はちゃんとした女優として演技をしたかったようだ。ヒンディー語映画界では、一回、セクシー要員として評価が定着してしまうと、それを拭い去るのは難しく、同じような役柄のみがオファーされることになる。

 2003年6月6日公開の「Khwahish」は、マッリカー・シェーラーワトの本格デビュー作として記録されている映画である。彼女はこれ以前に「Jeena Sirf Merre Liye」(2002年)に出演していたが、端役であるため、こちらの方をデビュー作とすることの方が多い。公開当時は日本に一時帰国中だったため見逃していたが、YouTubeでShemarooが配信してくれているため、2022年8月4日にようやく観ることができた。よって、2022年現在の視点からのレビューになる。

 監督はゴーヴィンド・メーナン。過去に「Danger」(2002年)という映画を一本撮っているが全く知らない。この「Khwahish」が彼にとって監督第2作になる。キャストは、マッリカー・シェーラーワトの他は、ヒマーンシュ・マリク、シヴァージー・サタム、アムリター・サートバーイー、マハムード・ババーイーなど。マッリカーの相手役を務めるヒマーンシュ・マリクは「Tum Bin」(2002年)で注目を集めた男優だが、俳優としては大成せず、監督に回った。

 舞台はプネー。大学最終年のアマル・ラーナーワト(ヒマーンシュ・マリク)は同じ大学に通うレーカー・コールズヴェーカル(マッリカー・シェーラーワト)と出会い、恋に落ちる。アマルはラージャスターン州の大富豪の御曹司であったが、父親のプリトヴィーラージ(シヴァージー・サタム)と折り合いが悪く、対立してばかりいた。一方、レーカーはマハーラーシュトラ州の田舎町に住む貧しい養鶏家ウッラース(マハムード・ババーイー)の娘であった。

 全く社会階層が異なったが、アマルはレーカーとの結婚を決意し、まずはウッラースに挨拶に行く。ウッラースはアマルを歓迎し、二人の結婚を認める。プリトヴィーラージとその妻ショーバー(アムリター・サートバーイー)はレーカーの出自を知って躊躇するが、アマルは両親の承認を得ずにレーカーと結婚してしまう。

 結婚した二人はプネーの下町にあるアパートに居を定める。アマルは奨学金を得て大学院で学び、レーカーは近所の子供たちに音楽を教えた。二人は仲睦まじく暮らしていた。アマルはMBAを取得して働き出し、子供を作ろうとするが、なかなか子供ができなかった。二人は病院へ行って検査を受ける。それによってアマルはレーカーが白血病を患っていること、そして余命あと少しであることを知らされる。

 アマルは父親から借金をしてレーカーを、夢だったパリやロンドンに連れて行こうとする。だが、レーカーはケーララ州に行きたいと言い、二人はケーララ州を訪れる。そこで楽しい時間を過ごすが、レーカーは倒れ、自分の病気を既に知っていたことをアマルに明かす。

 レーカーは入院し、アマルに抱きしめられながら息を引き取る。だが、レーカーの努力により、アマルとプリトヴィーラージの不仲は改善されたのだった。

 後にセックスシンボルとしてもてはやされるマッリカー・シェーラーワトが主演であること、コンドームを風船にして遊ぶヴィジュアルのポスターが印象に残っていたこと、そして映画の年齢認証がA(成人向け)であることなどから、勝手にエッチなコメディー映画を想像していたが、実際はシリアスな悲恋物語だった。確かにマッリカーのキスシーンがあったり、露出度が高かったりするが、成人向け映画にするほど過激なシーンはなく、マッリカーは悲劇のヒロインを精いっぱい演じていた。声が彼女自身のものではないようにも感じ、しかも台詞棒読みのシーンも多かったが、後に彼女のイメージとは180度異なる姿が彼女のデビュー作で見られたのは意外であった。

 露出度で言えば、相手役のヒマーンシュ・マリクもかなり露出していた。なぜかパンツ一丁になるシーンがいくつかあったが、これは監督の趣味であろうか。

 物語の主な軸になっているのは、マッリカー演じるレーカーとヒマーンシュ演じるアマルの男女関係と、アマルと父親プリトビーラージの父子関係の2つだ。レーカーとアマルは、多少の仲違いはあるものの、基本的に仲睦まじく、理想のカップルである。二人の間には社会的・経済的な格差や、出身地の違いなどもあったが、それらはほとんど障害にならなかった。アマルとプリトヴィーラージが最初から不仲だったため、彼は両親の承認を得ずにレーカーとの結婚を断行するし、それを両親から死に物狂いで止められることもなかった。また、アマルは裕福な育ちをしていたが、父親の経済的な援助を受けず、自分で奨学金を得て、自分で仕事を探し、自立しようともがいていた。レーカーにも金銭欲はなく、アマルが常にそばにいてくれることのみが彼女の願望だった。こんな二人が喧嘩別れするはずがない。

 中盤では、子作りを始めてもレーカーがなかなか妊娠しないことが問題として浮上する。インドでも不妊カップルは多く、不妊問題を膨らませて社会問題に切り込む映画にしても面白かったとは思うが、結局それはレーカーの白血病発覚によって塗りつぶされてしまう。以降、物語は、愛する人の死で幕切れする悲劇映画の定番フォーマットに落ち着く。

 この映画でもっとも印象に残るのは、ハネムーン先でアマルとレーカーがコンドームを買うシーンではなかろうか。結婚までお預けを食らっていたアマルは、結婚していよいよレーカーと事を致そうとするが、まだアマルは学生であり、しばらく子供を作るわけにはいかず、避妊をすることになる。コンドームを持っていなかったため、二人は薬局にコンドームを買いに出掛ける。インドの薬局は、店主に商品名を言って棚から出してもらう方式のため、コンドームを買うのはハードルが高い。アマルは恥ずかしくてなかなか「コンドーム」と言い出せず、違う商品を買ってきてしまう。それを見たレーカーは自らズカズカと薬局へ行って、堂々と「コンドームちょうだい」と言い切るのである。

 インドは避妊や性病予防のためにコンドームの使用を呼び掛けているが、コンドームの買いにくさもあって、なかなか普及しない。そんな問題を突いた作品に「Helmet」(2021年)があるし、女性がコンドームの営業をする「Janhit Mein Jaari」(2022年)という変わり種の映画もあった。だが、「Khwahish」はそれらより20年前に公開された映画だ。その着眼点は時代を先取っていたと評価できる。

 「Khwahish」は、後にヒンディー語映画界のセックスシンボルとして君臨することになるマッリカー・シェーラーワトのデビュー作である。意外にもセクシーなシーンは控えめで、悲しい結末を迎えるしんみりとした映画だ。とにかく仲睦まじい主演のカップルが印象的である。


Khwahish - Hindi Full Movie - Himanshu Malik - Mallika Sherawat - Latest Bollywood Movie