Om Jai Jagadish

3.5
Om Jai Jagadish
「Om Jai Jagadish」

 今日は久しぶりにコンノートプレイスを訪れた。その目的は、本当はオデオン・シネマで「Humraaz」(2002年)を観るためだったのだが、昨日から上映作品が変わっていて「Om Jai Jagadish」になっていた。まあこれでもいいか、と思い、この映画を観ることにした。2002年7月8日公開のヒンディー語映画である。

 「Om Jai Jagadish」は、タイトルだけ見るとヒンドゥー教の宗教映画に思える。意味は「世界の主(ヴィシュヌ神)万歳」みたいな意味だ。しかし実際は、オーム、ジャイ、ジャグディーシュという3人の兄弟愛を描いたホーム・ドラマだった。主演はアニル・カプール、ファルディーン・カーン、アビシェーク・バッチャン、マヒマー・チャウダリー、ウルミラー・マートーンドカルなど。ターラー・シャルマーという新人女優や、ワヒーダー・レヘマーンというベテラン女優も出ていた。監督は名優アヌパム・ケールである。

 バトゥラー家のオーム(アニル・カプール)、ジャイ(ファルディーン・カーン)、ジャグディーシュ(アビシェーク・バッチャン)は仲良し三人兄弟だった。長男のオームは敬虔なヒンドゥー教徒で、音楽会社に勤めて若手音楽家の発掘にいそしんでいた。次男ジャイは野心的な男で、アメリカに留学し、世界一早い自動車を造ることに執念を燃やしていた。このジャイの留学のためにオームは同僚から多額の借金をしていたことが物語の伏線となる。三男のジャグディーシュは若々しい大学生で、コンピューターの天才だった。

  オームはアーイシャー(マヒマー・チャウダリー)と結婚する。ジャイはアメリカの大学を首席で卒業し、アメリカの企業に就職しそうになるが、オームの言葉に従ってインドに帰ってくる。そしてアメリカで出会ったNRI(海外在住インド人)のニートゥー(ウルミラー・マートーンドカル)と結婚し、彼女もバトゥラー家の家に住むことになる。しかしニートゥーはアメリカナイズされた性格で、厳格なバトゥラー家の伝統に耐えられず、絶えず家族と衝突する。そしてジャイはアメリカで就職するためにニートゥーを連れて渡米してしまう。また、ジャグディーシュは少し前に、頭の悪い友人のために大学のコンピューターをハッキングしてテスト問題をダウンロードしたことがあった。それがばれてしまい、退学処分となってしまう。これに怒ったオームはジャグディーシュを叱責し、ジャグディーシュは家を出奔してしまう。一方、ジャイのアメリカ留学の費用を出してくれていたオームの同僚が実はとんでもない奴で、借金の抵当となっていたバトゥラー家の伝統ある家を勝手に自分の物にしてしまっていた。そしてオームたちは住みなれた我が家を立ち去らなければならなくなる。こうしてバトゥラー一家はバラバラになってしまったのだった。

  パートナーの裏切りに遭い、家も失ったオームは、仕事もうまくいかなくなる。オームのおかげでスターとなったミュージシャンも、窮地に陥ったオームを助けようとはしなかった。アメリカに渡ったジャイも仕事が見つからずに仕方なく自動車の廃棄工場で働くことになる。ジャグディーシュはピザハットでバイトをしながらなんとか生活をしていた。

  しかし、次第に三人の運が上昇し始める。オームは自分の会社を立ち上げて、落ちぶれたミュージシャンをプロデュースしたのだが、そのCDが大ヒットし、まとまった金が手に入る。ジャイもアメリカの自動車会社に、自分が設計した世界一早い自動車の設計図を売り、大金を手に入れる。ジャグディーシュもソフトウェア会社に実力を認めてもらい、ハッキング防止のソフトウェアを開発した。そんなとき、バトゥラー家の家が競売にかけられることとなった。

  オームは競売会場に駆けつけ、なんとか我が家を取り戻すためにオークションに参加する。しかし値段は釣り上がっていき、オームの手に届かない額となる。諦めかけたそのとき、ジャイが駆けつけてさらに金額を積み上げる。ジャグディーシュも駆けつけ、三兄弟が久しぶりに揃うものの、家の値段はどんどん上昇していき、遂に別の人間のものとなってしまう。打ちひしがれるオームたち一家だったが、そのとき家を手に入れたはずの人が驚くべきことを口にする。「この家はオームたちのものだ」と。実はその人物はジャグディーシュの関係者だった。ジャグディーシュは自分が開発したソフトウェアを、自分の家の値段で売るという契約を取り交わしていた。こうして競売にかかっていたバトゥラー家の家は、めでたく再び彼らのものとなり、三人兄弟も再び一緒に住むことになったのだった。

 定石通りのストーリー展開だったが、ホロリとする良作だった。音楽とダンスにあまり気合が入っていなかったが、その分ストーリーがちょうどいいテンポで進んでいって、かなりスッキリした。なんとあのアビシェーク・バッチャンが、リティク・ローシャンばりのダンスを踊っていたのには驚いた。相当練習を積んだと思われる。これから踊れるスターに成長するだろうか?マヒマー・チャウダリーとウルミラー・マートーンドカルが共演していたが、この2人、どうも僕は見分けがつかない。どっちがどっちだったっけ・・・と常に考えながら見なければならない。新人のターラー・シャルマーは、ちょっとスターのオーラが見えなかったので、何事もなければ(大ヒット作品に恵まれなければ)すぐに消えると思われる。