Awara Paagal Deewana

2.0
Awara Paagal Deewana

 2002年6月20日公開の「Aawara Paagal Deewana」は、マルチスターキャストのコメディー映画である。題名に並ぶ3つの単語はどれも頭のおかしい人を示す言葉であるが、その題名の通り、映画の登場人物は皆どこか異常である。おかしさは登場人物のみならず、映画全体にも及ぶ。この映画は「フェイス/オフ」(1997年)、「マトリックス」(1999年)、「隣のヒットマン」(2000年)など、ハリウッドのヒット作をいくつも切り貼りして作っており、どこかで観たようなシーンばかりなのである。2022年6月23日に鑑賞した。

 監督はヴィクラム・バット。音楽はアヌ・マリク。キャストは、スニール・シェッティー、アクシャイ・クマール、アーフターブ・シヴダーサーニー、パレーシュ・ラーワル、ジョニー・リーヴァル、アールティ・チャーブリヤー、プリーティ・ジャーンギヤーニー、アムリター・アローラー、ラーフル・デーヴ、スプリヤー・ピルガオーオンカル、オーム・プリー、アスラーニーなど。

 マフィアのドン、バルデーヴ・プラサード(オーム・プリー)が急死した。バルデーヴには息子のヴィクラーント(ラーフル・デーヴ)、娘のプリーティ(アールティ・チャーブリヤー)、そして娘婿のグル・グラーブ・カトリー(アクシャイ・クマール)に100億ルピー相当のダイヤモンドを遺す。ヴィクラーントはダイヤモンドを独占しようと、グルの振りをして犯罪を犯す。グルは警察に追われる身になるが、既にインドを出国していた。ヴィクラーントはグルの首に2千万ルピーの賞金を掛ける。

 グルはニューヨークに家を買って住み始める。その隣人がアンモール・アーチャーリヤ(アーフターブ・シヴダーサーニー)であった。アンモールは、妻モナ(アムリター・アローラー)の家に住んでおり、妻の父親マニラール・パテール(パレーシュ・ラーワル)と母親パラムジート(スプリヤー・ピルガーオンカル)と同居していた。だが、この家では女性の方が偉く、アンモールとマニラールは奴隷のような生活をしていた。

 アンモールとマニラールは、賞金首のグルが隣に住んでいることをモナとパラムジートに伝える。彼女たちはグルの居場所をヴィクラーントに教えて賞金を得ようとし、アンモールとマニラールをインドに送り込む。だが、インドではヴィクラーントの手下であるイェーラー・アンナー(スニール・シェッティー)と相棒チョーター・チャトリー(ジョニー・リーヴァル)が待ち構えていた。イェーラーとチャトリーはアンモールとマニラールを拉致し、一緒にニューヨークに行く。

 だが、今度はニューヨークではグルが待ち構えていた。イェーラーとグルは銃を突き付け合うが、次の瞬間二人は抱き合って笑う。グルはイェーラーに5千万ルピーを約束し買収したのだった。今度はヴィクラーントをニューヨークで待ち構えることになる。それまでイェーラーとチャトリーはアンモールとマニラールの家に住むことになるが、そこでイェーラーはモナに、パラムジートはチャトリーに惹かれる。また、アンモールはプリーティに恋してしまっていた。さらに、アンモールが経営する歯科クリニックの受付ティナ(アールティ・チャーブリヤー)はグルの大ファンで、グルと意気投合する。

 ヴィクラーントはニューヨークにやって来るが、すぐに中国人ギャングに誘拐されてしまう。だが、イェーラーはそれが偽物だと聞く。イェーラーは本物のヴィクラーントを出迎え、彼をグルのところへ連れて行く。グルはヴィクラーントを暗殺する。こうしてグルはダイヤモンドを手に入れ、プリーティと山分けする。だが、暗殺されたヴィクラーントの方が実は偽物だった。本物のヴィクラーントは警察に変装してイェーラー、チャトリー、アンモール、マニラール、プリーティ、モナ、パラムジート、ティナを連れ去る。そこで激しい戦いになるが、結局ヴィクラーントは倒される。

 乱闘の最中、ダイヤモンドはアンモールとプリーティが持って行ってしまう。だが、アンモールはグルに、プリーティと離婚したらダイヤモンドを渡すと約束する。グルはプリーティと離婚し、ダイヤモンドを受け取る。イェーラーが裏切ってグルからダイヤモンドを奪おうとするが、チャトリー共々捕まってしまい、ダイヤモンドを失う。グルは情けで5千万ルピー分のダイヤモンドを残して行く。また、グルはマニラールにダイヤモンドを渡し、それをインドで新しい生活を送ろうとするアンモールとプリーティに届けさせる。

 一応ストーリーらしきものはあるが、とても大雑把な作りの映画で、知性を働かせて観る種類の映画ではない。アクションシーンやダンスシーンも冗長で盛り上がりに欠ける。だが、こんな映画でもまあまあの興行成績を上げたのは、コメディー部分に見るべきものがあったからである。

 登場人物はどこかしらネジが外れており、それぞれ笑いの要素を提供する。パレーシュ・ラーワル演じるマニラールは人の名前を覚えることができず、時には自分の名前すらも忘れてしまう。ジョニー・リーヴァル演じるチョーター・チャトリーはどもり症で、そのボスのイェーラー・アンナーは物の名前がなかなか口から出て来ない。また、マニラールは、アーフターブ・シヴダーサーニー演じるアンモールと共に、妻たちから酷い扱いを受けている。スプリヤー・ピルガーオンカル演じるパラムジートとアムリター・アローラー演じるモナの母娘は、全ての家事を夫に押しつけて生活しているのである。また、アンモールが経営する歯科クリニックの受付ティナはマフィア好きで、アクシャイ・クマール演じるグルに恋してしまうが、実は彼女はグルの師匠の娘であった。まともなのはラーフル・デーヴ演じる悪役ヴィクラーントくらいだ。

 こんな変なキャラたちがそれぞれの変さを前面に押し出してぶつかり合うので、カオスなおかしさがある。ストーリーは決して褒められたものではなかったが、部分部分のコント劇には大いに笑わせてもらった。

 基本的にはコメディー映画で、ロマンスは副次的だったが、ラディカルな斬新さがあった。なんと途中でカップルのスワッピングが行われるのである。ティナはグルとくっ付き、グルの妻プリーティはアンモールとくっ付き、アンモールの妻モナはイェーラーとくっ付き、マニラールの妻パラムジートはチョーター・チャトリーとくっ付く。コメディー映画だからこのスワッピングはサラリと流されていたが、よく見るととんでもないことをしていることが分かる。また、グルとプリーティがなぜこんなに不仲なのか、よく分からなかった。

 主要キャラであるグルとアンモールがガル・ジャマーイー状態だったことも特筆すべきであろう。ガル・ジャマーイーとは、夫が妻の実家に住み着くことを指す。グルは妻プリーティの家に住み、アンモールは妻モナの家に住んでいた。これもなぜこうなっているのかよく説明がなかったが、変わった設定である。

 舞台の大部分はニューヨークだったが、9/11事件で破壊されたワールドトレードセンターが風景の中にまだ残っていたので、ロケは2001年9月11日以前に行われたのだと推測できる。9/11事件前のニューヨークの最後の姿を映した映画の一本かもしれない。

 「Awara Paagal Deewana」は、観ている方が頭がおかしくなるような混沌としたコメディー映画である。まずまずの興行成績を収めているものの、2002年はヒンディー語映画の外れ年であり、過剰評価である。決して作品の質に期待してはいけない。だが、コメディー要素だけは秀逸であり、一時の笑いを求めるならば観る選択肢もありだろう。