Jodi No.1

3.5
Jodi No.1
「Jodi No.1」

 2001年4月13日公開の「Jodi No.1(二人組ナンバー1)」は、コメディー映画を得意とするデーヴィッド・ダワン監督の「ナンバー1」シリーズの一作で、2001年の大ヒット作のひとつである。ダワン監督は「Coolie No.1」(1995年)、「Hero No.1」(1997年)、「Biwi No.1」(1999年)を当ててきており、その余勢を駆ってこのコメディー映画を送り出した。

 主演はサンジャイ・ダットとゴーヴィンダー。特にゴーヴィンダーはダワン監督のお気に入りで、彼の主演作をいくつも撮っている。この二人が共演するのは「Do Qaidi」(1989年)と「Haseena Maan Jaayegi」(1999年)に続き3本目で、「Jodi No.1」の後も「Ek Aur Ek Gyarah」(2003年)で共演している。この二人は相性が良く、特にコメディー映画に定評がある。

 ヒロインはトゥインクル・カンナーとモニカ・ベーディー。他にアヌパム・ケール、アーシーシュ・ヴィディヤールティー、サーヤージー・シンデー、アーシフ・シェーク、ティークー・タルサーニヤー、ムケーシュ・リシ、シャクティ・カプール、アヴタール・ギル、ヒマーニー・シヴプリー、ラジャト・ベーディー、ムシュターク・カーンなどが出演している。また、プージャー・バトラーが冒頭のダンスナンバー「Main Mast Kudi」でアイテムガール出演している。

 この映画の公開時にはまだインドに住み始めておらず、ずっと未見のままだった。2023年5月10日に鑑賞し、このレビューを書いている。

 ジャイ(サンジャイ・ダット)とヴィールー(ゴーヴィンダー)はお尋ね者の泥棒だった。ムンバイーにやって来たジャイとヴィールーは、マフィアのドン、サー・ジョン(アーシーシュ・ヴィディヤールティー)の弟タイガー(ラジャト・ベーディー)を誤って殺してしまい、ゴア州へ向かって逃げ出す。

 ゴア州へ向かう列車の中でジャイは米国帰りのヴィクラムジート・スィン(アーシフ・シェーク)と出会い、魔法のようなトリックを使って彼と入れ替わってしまう。また、ヴィールーはティナ(トゥインクル・カンナー)という女性と出会う。

 ゴア州に付いた途端、ヴィクラムジートと勘違いされたジャイは歓待され、裕福な実業家ラーイ・バハードゥル(アヌパム・ケール)の家に連れて行かれる。ヴィールーはジャイの秘書ということで付いていった。ヴィクラムジートはラーイの甥であり、米国から22年振りに帰ってきていた。ジャイとヴィールーはラーイの大豪邸に驚き、早めに金目の物を奪って逃げようと画策する。だが、ジャイはラーイから受けた愛情を忘れられず、そのまま彼の家に留まることになる。また、ラーイの娘リンキー(モニカ・ベーディー)から好意を寄せられていたこともあった。仕方なくヴィールーもジャイに付き合うことになる。

 実はラーイは破産の危機を迎えていたが、ジャイとヴィールーの活躍により彼の会社の業績は持ち直す。また、ラーイの兄弟たちは利己主義的な性格だったが、これもまたジャイとヴィールーのおかげで家族の結束が強まる。知らない内にジャイとヴィールーはラーイの家族にとって掛け替えのない存在になる。

 一方、サー・ジョンはジャイとヴィールーを追ってゴア州まで来ていた。しかし、ジャイとヴィールーは機転によって何度も危機を脱し、逆にサー・ジョンや彼の一味を痛い目に遭わせる。

 とうとうジャイとヴィールーの正体がラーイにばれてしまうが、このときには既にラーイの家族はジャイとヴィールーの味方になっていた。サー・ジョンはヴィールーを人質に取り、ジャイに2千万ルピーの身代金をラーイの金庫から奪ってくるように脅迫するが、ラーイは自ら身代金を差し出した。サー・ジョンは叔父のタクラール(サーヤージー・シンデー)と共に、自分で仕掛けた爆弾の爆発により死んでしまう。そしてジャイとヴィールーはそれぞれリンキー、ティナと結ばれる。

 デーヴィッド・ダワン監督のコメディー映画にありがちな、細かい部分の整合性を無視した大雑把なコメディー映画であるが、「Jodi No.1」についてはそれらが多くの場面でうまくはまっており、抱腹絶倒の優れたコメディー映画に仕上がっていた。その大部分はゴーヴィンダーの器用な演技のおかげであり、それをサンジャイ・ダットがうまく支えた構造になっている。

 主人公の二人組ジャイとヴィールーは泥棒であり、この映画はいわゆる「コン映画」に分類される。ただ、二人とも根っからの悪人ではなく、義理や人情に篤いところがある。特に、盗みに入った家の愛情に触れたことでその家の危機を救おうと努力する姿は、悪人といえど、観客の同情をうまく引き出してしまう。そして最終的には全てを円満に解決し、それぞれ恋人も手に入れて、大満足のエンディングとなる。彼らの名前の由来は、もちろん伝説の名作「Sholay」(1975年)の主人公二人組だ。

 映画中には多くの爆笑シーンがあるが、特に面白おかしいのは、本物のヴィクラムジートがなぜか偽物扱いされ、その父親まで牢屋に入れられてしまうシーンだ。ジャイとヴィールーの口八丁を周囲が信じ込んでしまい、本物の言い分は全く聞き入れられない。

 ダンスシーンが多かったが、ストーリー部分とダンス部分の切り替えは非常に雑である。ほとんど何の脈絡もなくダンスシーンに入り、邪魔に感じる部分もあるくらいだ。この辺りは1990年代を引きずっている。また、ロマンスもかなり雑で、特にヴィールーとティナの恋愛は「Dil Dhak Dhak Karta Hai」で片づけられてしまっている。ヴィールーを拒絶していたティナは、このダンスシーンを経て彼と恋仲になってしまうのである。

 映画公開時には既に「Kaho Naa… Pyaar Hai」(2000年)がリティク・ローシャンをデビューさせた後で、男優に要求されるダンスのレベルにコペルニクス的転回が起こってしまっていた。だが、本来ならばインド人が一番好むダンスはゴーヴィンダーの踊りのような、いかにも土臭いものだ。映画の中には「Kaho Naa… Pyaar Hai」のポスターも見えたが、ゴーヴィンダーは我が道を行き、リティクとは異なる踊りの技巧を観客に見せつけていた。

 「Jodi No.1」は、デーヴィッド・ダワン監督のコメディー映画の中では上位に入る出来の作品である。細かい部分に突っ込み所はあるが、ゴーヴィンダーの類い稀なセンスが全てを覆い隠しており、爆笑が保証された優れたコメディー映画に仕上がっている。また、2001年を代表するヒット作の一本である。