Bade Miyan Chote Miyan (1998)

2.5
Bade Miyan Chote Miyan
「Bade Miyan Chote Miyan」

 デーヴィッド・ダワン監督のコメディー映画「Bade Miyan Chote Miyan(大きな旦那、小さな旦那)」は1998年の大ヒット作である。なんとカラン・ジョーハル監督のロマンス映画「Kuch Kuch Hota Hai」(1998年)と同日の1998年10月16日に公開された。

 主演はアミターブ・バッチャンとゴーヴィンダー。この二人がそれぞれ一人二役を演じるのがこの映画の最大のポイントとなる。

 ヒロインはラヴィーナー・タンダンとラミヤー・クリシュナン。他に、アヌパム・ケール、パレーシュ・ラーワル、シャラト・サクセーナー、カーダル・カーン、ディヴィヤー・ダッター、アスラーニー、アヴタール・ギル、ラザーク・カーン、ティークー・タルサーニヤーなどが出演している。また、マードゥリー・ディークシトが本人役で特別出演している上に、デーヴィッド・ダワン監督自身もカメオ出演している。

 作曲はヴィジュー・シャー、作詞はサミールである。2024年7月9日に鑑賞し、このレビューを書いている。

 アルジュン・スィン警部補(アミターブ・バッチャン)とピャーレー・モーハン警部補(ゴーヴィンダー)は相棒同士だった。密輸王ゾーラーワル・スィッディーキー(パレーシュ・ラーワル)の警官殺しを目撃したマドゥ(ディヴィヤー・ダッター)はゾーラーワルに殺されてしまうが、マドゥの友人ネーハー(ラミヤー・クリシュナン)がその場面に出くわし、ゾーラーワルに命を狙われることになる。アルジュン警部補はネーハーを守る内に彼女と恋仲になる。また、アルジュン警部補の妹スィーマー(ラヴィーナー・タンダン)はピャーレー警部補と恋仲になる。

 アルジュン警部補に瓜二つのバレー・ミヤーン(アミターブ・バッチャン)と、ピャーレー警部補に瓜二つのチョーテー・ミヤーン(ゴーヴィンダー)は泥棒仲間だった。バレーとチョーテーはアルジュン警部補とピャーレー警部補に間違われ、周囲に混乱を巻き起こす。最初に相手の存在を知ったのはバレーとチョーテーの方だった。アルジュン警部補とピャーレー警部補がシャームラール・トリパーティー警視総監(アヌパム・ケール)から貴重なダイヤモンドの護衛を指示されたとき、バレーとチョーテーは彼らになりすましてダイヤモンドを盗み出した。おかげでアルジュン警部補とピャーレー警部補は逮捕されてしまう。

 ゾーラーワルはスィーマーを誘拐する。それを知ったバレーとチョーテーは、アルジュン警部補とピャーレー警部補の前に姿を現し、共にスィーマーを助け出すことを約束する。そしてゾーラーワルのアジトに潜入し、彼らを油断させる。その隙にアルジュン警部補とピャーレー警部補は警察を突入させ、ゾーラーワルたちを逮捕し、スィーマーを救出する。ゾーラーワルたちは脱走に成功するが、バレーとチョーテーが彼らを再び捕まえる。シャームラールはアルジュン警部補とピャーレー警部補を交通警察に左遷し、バレーとチョーテーを警察官に採用する。

 瓜二つの別人が引き起こす古典的なドタバタ劇である。アミターブ・バッチャンが警官のアルジュンと泥棒のバレーを、ゴーヴィンダーが警官のピャーレーと泥棒のチョーテーを一人二役で演じる。なぜアルジュンとバレー、ピャーレーとチョーテーが瓜二つなのかについては特に説明がなかった。彼らが生き別れの双子の兄弟というわけでもなさそうである。よって、偶然に瓜二つの二人組が二組現れたという設定だと受け止めればいいだろう。

 お互いがお互いのことを知らずに同じ場に現れるので、当然のことながら周囲と彼ら自身に大きな混乱をもたらす。ただし、泥棒のバレーとチョーテーが登場するのは中盤に入ってからで、それまでは警官のアルジュンとピャーレーを中心としたコメディー劇が続く。序盤の笑いを演出する主な要素は、アルジュンがシャームラール警視総監の指示に従ってピャーレーの振りをして殺人事件の目撃者ネーハーと接することだ。ネーハーはしばらくアルジュンをピャーレーだと思っており、ピャーレーと恋仲になったスィーマーと偶然出会うことで、浮気を疑うという流れになっている。

 ただし、やはり序盤は若干退屈だった。ダンスシーンが多めで、歌と踊りの力でストーリーを強引に前に進めていることもあった。「Bade Miyan Chote Miyan」が本領を発揮するのは泥棒のバレーとチョーテーが登場してからだ。彼らがやっと登場する場面では人気女優マードゥリー・ディークシトもサプライズ出演しており、豪華な演出が施されている。その後、瓜二つの二人組二組が巻き起こす混乱が面白おかしく描かれると同時に、悪役ゾーラーワルの魔の手が忍び寄るのである。

 演技面でいえば、断然、泥棒のバレーとチョーテーを演じているアミターブ・バッチャンとゴーヴィンダーの方が生き生きしていた。ケバい衣装を身に付け、低俗な言葉遣いをし、隙あらば金品をかすめ取ろうとする輩振りを楽しんで演じていた。逆に、バレーとチョーテーが登場してからのアルジュンとピャーレーは堅気さが強調され、お笑いに絡んでこなくなり、コメディー映画のキャラとしては完全に脇に追いやられてしまっていた。

 前述の通り、ストーリー部分からダンスシーンへの接続にシームレスさを欠くことが多かった。それでも、音楽自体はキャッチーな出来映えで、テーマソングの「Bade Miyan Chote Miyan」などは映画の雰囲気ととてもよく合っていて、頭にこびりつくタイプのメロディーだ。踊りの名手ゴーヴィンダーのダンスムーブを楽しめる映画でもある。

 「Bade Miyan Chote Miyan」は、アミターブ・バッチャンとゴーヴィンダーが共演し、それぞれ一人二役を演じるコメディー映画だ。今観ると安っぽい映画に映るが、当時は細かいことは気にされなかったのか、不朽の名作「Kuch Kuch Hota Hai」と同日公開というハンデがありながらも大ヒットになった。