Khel Khel Mein

3.5
Khel Khel Mein
「Khel Khel Mein」

 2024年8月15日公開の「Khel Khel Mein(遊びのつもりで)」は、準オールスターキャストの暴露系エンターテイメント映画である。イタリア映画「おとなの事情」(2016年)のリメイクだ。

 監督は「Happy Bhag Jayegi」(2016年)のムダッサル・アズィーズ。キャストは、アクシャイ・クマール、タープスィー・パンヌー、ファルディーン・カーン、ヴァーニー・カプール、アミー・ヴィルク、アーディティヤ・スィール、プラギャー・ジャイスワール、イシター・アルン、タラト・アズィーズ、キラン・クマール、アルカー・カウシャルなどが出演している。また、チトラーンガダー・スィンが特別出演している。

 「準」オールスターキャストと評したのは、アクシャイ・クマール以外は「トップスター」といえるほどの名声を勝ち得ていないからである。

 それ以外には声の出演が豪華だ。ジミー・シェールギル、アルジュン・カプール、ブーミ・ペードネーカル、アパールシャクティ・クラーナー、サニー・スィン、アナンニャー・パーンデーイが声のみの出演をしている。

 整形外科医のリシャブ・マリク(アクシャイ・クマール)は、元妻ラシュミーとの間にアナーヤーという娘がいたが、妻は事故で亡くなっていた。リシャブはロンドン在住の小説家ヴァルティカー(ヴァーニー・カプール)と再婚したが、アナーヤーは決してヴァルティカーを母親とは呼ばなかった。

 ヴァルティカーの妹ラーディカーの結婚式がジャイプルで行われることになり、リシャブも向かっていた。結婚式場のホテルで彼らは友人たちと再会する。ハルプリート・カウル、通称ハッピー(タープスィー・パンヌー)とその夫ハルプリート・スィン・サンドゥー(アミー・ヴィルク)、サマル・タンワル(アーディティヤ・スィール)とその妻ナイナー(プラギャー・ジャイスワール)、そして離婚して独身のカビール・デーシュムク(ファルディーン・カーン)である。

 結婚式前日の夜、彼らは集まってゲームをする。各々の携帯電話をテーブルに置き、電話、メッセージ、メールなどを全てオープンにするというものだった。その中で、様々なことが明るみに出る。サマルが上司マールティー(イシター・アルン)から性的搾取を受けていること、ハルプリートが乏精子症であること、ハッピーが精子ドナーで妊娠しようとしていること、そしてカビールがゲイであることなどである。さらに、離婚調停期間にあったリシャブとヴァルティカーにも問題があった。リシャブはエスコートガール疑惑を受け、ヴァルティカーはアナーヤーとの関係に悩んでいたのである。

 そんな中、ラーディカーの結婚相手ヴァルンが行方不明になる。リシャブたちは空港にいたヴァルンを探し出し、連れ戻す。そして何とか結婚式が終わる。リシャブとヴァルティカーは離婚を見直すことを決め、ハッピーとハルプリートは仲直りし、ナイナーもマールティーに毅然と対処することを決めた。

 非常ノ豪華なキャスト陣だが、映画の製作には比較的お金が掛かっていないはずである。高級リゾートホテルのスイートルームでほぼ物語が進行し、ほぼセリフでもって進行していく。そういう意味では、当初期待していた派手さはなかった。

 しかしながら、携帯電話で着信した電話やメッセージをオープンにするというゲームは非常にスリリングで、それによって各人の秘密がさらけ出されることになり、一夜の内に彼らの人間関係に変化をもたらすというのは、とても映画らしい展開だった。脚本の勝利である。

 この映画は決してプライバシーを正直にさらけ出すことを推奨しているわけではない。むしろ、世の中には「正しい嘘」や「正しい隠し事」もあるということが主張されていた。主人公リシャブは嘘つきの名人だが、彼には善意の嘘を使いこなすだけの賢明さがあった。たとえば、彼はエスコートガールを使った疑惑を持たれ、しどろもどろになって言い訳をしていたが、それは実はヴァルンに恥をかかせないための配慮だった。

 振り返ってみると、彼らはの多くは誰かのために嘘をついたり隠し事をしたりしていた。ハッピーは、早く孫が欲しいという姑からのプレッシャーと、乏精子症であることを打ち明けてくれない夫の間に挟まれていた。彼女は、姑にもハルプリートにも内緒で精子ドナーによる妊娠を試そうとしていた。それは見方によっては詐欺や裏切りになるだろうが、別の見方では彼女なりに配慮した結果であった。

 最後に、リシャブは結婚生活について金言を述べる。結婚は、お互いがお互いを所有するという契約ではない。パートナーシップである。婚姻届、結婚指輪、マンガルスートラなど、結婚を象徴するものはいくつもあるが、本当に大事で、本当に守っていかなければならないのは、関係である。そのためには、世間の様々な声が聞こえてくる中で、常にパートナーの声を聴く必要がある。そんなことを語っていた。

 この準オールスターキャストの中で、真のスターと呼べるのはアクシャイ・クマールだけだ。主演といってもいいほど中心的な役割を果たすが、他の俳優に比べて突出して年を取っているのは隠せなかった。妻役を演じたヴァーニー・カプールとは約20歳差である。その年齢差は映画の中ではあまり意識されておらず、それが違和感を生んでいた。

 唯一、アクシャイの同年代といえるのはファルディーン・カーンだ。「Dulha Mil Gaya」(2010年)以来スクリーンから遠ざかっていたが、2024年になって突然復帰し、「Heeramandi」(2024年)などに出演している。キャストの中でも特別扱いされていた。今回彼はゲイをカミングアウトする役を演じた。

 タープスィー・パンヌーのキャスティングには興味を引かれた。ヴィディヤー・バーラン、カンガナー・ラーナーウトの後に、一人で映画の看板を背負って立てる女優として台頭したタープスィーは、いくつもの主演作を勝ち取ってきたが、その分独立独歩のイメージが強くなってしまい、一匹狼的な女優になっていた。聞くところによると男優が彼女との共演を嫌がっているそうだ。なぜなら彼女が出演すると彼女の映画になってしまうからである。なかなか釣り合う男優がおらず、格下の男優との共演が続いたが、ここにきて「Dunki」(2023年)でシャールク・カーンとの共演を果たし、キャリアに変化が生まれた。今回はアクシャイ・クマールとの共演である。スーパースターでしか釣り合わないほどまで実力が備わったと評価することもできるが、迎合とも取れる。実際、「Khel Khel Mein」で彼女が演じた役は、彼女が過去に自分中心の主演作で演じてきたような強い女性ではない。今後はこの路線で行くのだろうか。

 ヴァーニー・カプールは「Befikre」(2016年)などで印象を残したが、ヒット作には恵まれておらず、必ずしも順風満帆のキャリアを歩んできていない。今回はアクシャイ・クマールの相手役ということで期待されたが、多人数型映画ということもあって埋没してしまっていた。

 アミー・ヴィルクはパンジャーブ州で活躍する歌手兼俳優であり、「83」(2021年)や「Bad Newz」(2024年)などのヒンディー語映画にも出演してきた。ディルジート・ドーサンジと似たキャリアパスを歩んでいる。なかなかいい味を出していた。

 アーディティヤ・スィールも近年ヒンディー語映画でよく見る顔になっている。TV俳優出身だが、いくつもの映画に出演している内に、映画俳優としての貫禄も出て来たと感じる。

 プラギャー・ジャイスワールは、マディヤ・プラデーシュ州出身ながらテルグ語映画界でキャリアを積んできた女優で、「Khel Khel Mein」で本格的にヒンディー語映画界に紹介された。

 「Khel Khel Mein」は、あらゆる個人情報を携帯電話に詰め込んでいる現代人の心理を突く、脚本主体の準オールスターキャスト映画だ。アクションよりもセリフで魅せるタイプの映画であり、ターゲットとする年齢層も高い。さらに、結婚してしばらく経っている既婚のカップルが観るともっとも感じるもののある作品だ。それを読み違えなければ面白い映画である。