「Kaminey」(2009年)に続けて、2009年8月14日より公開の新作ヒンディー語映画「Life Partner」を観た。こちらは完全なコメディー映画。結婚を巡る悲喜こもごもを題材にしたヒンディー語コメディー映画には良作が多いし、ゴーヴィンダーも期待できそうであったために、鑑賞を決めた。今ホットな若手女優ジェネリアとプラーチー・デーサーイーの共演も見所である。
監督:ルーミー・ジャーフリー
制作:アッバース・マスターン
音楽:プリータム
歌詞:ジャーヴェード・アクタル
振付:サロージ・カーン、ボスコ=シーザー
出演:ゴーヴィンダー、ファルディーン・カーン、トゥシャール・カプール、ジェネリア、プラーチー・デーサーイー、アヌパム・ケール、ダルシャン・ジャリーワーラー、アムリター・ラーオ(特別出演)
備考:サティヤム・シネプレックス・ネループレイスで鑑賞。
南アフリカ共和国ケープタウン。ジート・オーベローイ(ゴーヴィンダー)、カラン・マロートラー(ファルディーン・カーン)、バーヴェーシュ・パテール(トゥシャール・カプール)は仲良し三人組だったが、彼らの結婚に対するスタンスは全く別だった。カランにはサンジャナー(ジェネリア)という恋人がおり、恋愛結婚を望んでいた。父親(アヌパム・ケール)に溺愛されて育ったサンジャナーは、思い付きで半年に1回は職業を変えてしまうような落ち着きのない女の子であった。一方バーヴェーシュは、保守的なグジャラート人家庭に育ち、お見合い結婚を望んでいた。ジートは全く結婚を望んでいないばかりか、離婚弁護士をしており、数々の夫婦の離婚を成立させて来た。
ある日、バーヴェーシュがインドのグジャラート州まで結婚相手を探しに行くことになり、カランとサンジャナーも一緒に付いて来た。バーヴェーシュたちは、父親(ダルシャン・ジャリーワーラー)の旧友ジャーデージャーの家に宿泊し、結婚仲介業者の助けを借りながら結婚相手を探すが、なかなかバーヴェーシュの好みの女性がいなかった。だが、彼はジャーデージャー家の娘プラーチー(プラーチー・デーサーイー)に理想像を見つける。話はとんとん拍子で進み、バーヴェーシュとプラーチーの結婚式が執り行われた。このとき成り行きからカランとサンジャナーも結婚する。
しかし、南アフリカ共和国に帰ってからの2組の結婚生活はうまく行かなかった。カランは昇進したために忙しくなり、ハネムーンは延期となる。サンジャナーは結婚後も未だに恋人気分で、全く家事もせず、わがままばかり言っていた。仕方なくカランは全ての家事を自らこなしていたが、過労により倒れそうになる。それを見たサンジャナーは家事に挑戦するが、大失敗して火事を起こしてしまう。とうとうカランとサンジャナーは離婚することを決める。
一方、バーヴェーシュとプラーチーは、ハネムーンで絆を深め、順調な滑り出しを見せていた。ところがハネムーンから帰って来た後、保守的な父親とモダンな考え方を持ったプラーチーの仲が次第に険悪なものとなって行った。バーヴェーシュも父親に逆らえず、プラーチーを擁護できなかった。挙げ句の果てにプラーチーに手を挙げてしまう。バーヴェーシュとプラーチーの離婚も決まる。
当然、彼らの離婚手続きを担当したのはジートであった。ジートは、再びめでたく独身に戻ったカランとバーヴェーシュのために祝杯を挙げようとし、二人をバーへ連れて行く。そこで彼は一人の女性(アムリター・ラーオ)と出会う。最初はいつも通り彼女の離婚を調整したジートであったが、その後恋に落ちてしまい、結婚することになる。カランとバーヴェーシュは、自分達を離婚させておきながら自分が結婚しようとしていることに怒るが、彼らはジートの結婚式に出席する。
高層ビルの屋上で行われた結婚式にはサンジャナーやプラーチーの姿もあった。だが、サンジャナーはダイナマイトを身体にくくりつけて来ており、下の階へ下りる階段の扉も封鎖してあった。ダイナマイトのタイムリミットは5分であった。もはや死を覚悟したバーヴェーシュは、どうせ死ぬならと、プラーチーに謝罪の言葉を述べた。プラーチーはその言葉に喜ぶ。また、カランとサンジャナーの父親はサンジャナーを止めようとしていたが、その中で父親がカランとサンジャナーの離婚を計ったことが分かる。カランとサンジャナーも仲直りする。だが、このとき5分が過ぎてしまった。・・・と思ったら、ダイナマイトは爆発せず、夜空に花火が上がった。実はこれは、ジートとサンジャナーが計った策略だった。ダイナマイトも偽物であった。そのおかげでカランとサンジャナー、バーヴェーシュとプラーチーはまたよりを戻すことになったのだった。
ヒンディー語映画界では伝統的に結婚前の男女のドタバタを描いたコメディー映画は星の数ほどあるし、結婚後のドタバタを描いた名作コメディー映画も、「Masti」(2004年)、「No Entry」(2005年)、「Shaadi No.1」(2005年)など、数多く作られるようになって来ている。その中でこの「Life Partner」を意義付けるならば、それは結婚前と結婚後の様子をバランス良く配分したことにあるだろう。また、恋愛結婚vsお見合い結婚という単純な図式になりがちだったところを、結婚自体に反対する離婚弁護士ジートを割り込ませることで、さらにマサーラー味を利かせていた。実際のところ、劇中で恋愛結婚とお見合い結婚は対立しておらず、むしろ結婚をする必要があるのかという点が議論されていたと言っていいだろう。恋愛結婚したカランとサンジャナーも、お見合い結婚したバーヴェーシュとプラーチーも、それぞれトラブルに巻き込まれている。
多少変わっていたのは、カランとサンジャナー、バーヴェーシュとプラーチーの2組の夫婦がかなり簡単に離婚をしてしまうところである。インド映画では一般に離婚を悪とする考え方が強いので、この離婚の扱いについてはちょっと過激な印象を受けた。「Life Partner」のプロットを分析してみても、この2組を離婚させることなしに、自然に同様のエンディングに持って行けたと思う。例えば裁判所で離婚成立までの猶予期間を与えられ、その間に仲直りするという流れである。このような展開の映画には、「Shaadi Karke Phas Gaya Yaar」(2006年)や「Kambakkht Ishq」(2009年)など、先例がある。「Life Partner」のエンディングは取って付けたような雑なまとめ方で多少興醒めであったが、離婚した2組の再婚が一応納得できる形で提示されていた。
この映画で残念だったのは、期待の若手女優であるジェネリアとプラーチー・デーサーイーの欠点が浮き彫りになったことである。ジェネリアは2003年から映画に出演していたが、南インド映画界を経て、「Jaane Tu… Ya Jaane Na」(2008年)によって一躍注目を集めた女優で、今後ヒンディー語映画界のスター女優の座を争う存在になるかと期待していたが、「Life Partner」での彼女は、「Jaane Tu… Ya Jaane Na」のイメージそのままの演技で、もしかしてジェネリアはこういう演技しかできないのではないかと不安にさせられた。しかも、「Jaane Tu… Ya Jaane Na」の時は、同年齢の若い俳優たちに囲まれていたおかげか、リラックスした開放感があって良かったが、今回は大味で閉塞的な演技が目立った。また、「Rock On!!」(2008年)で映画デビューを果たしたプラーチー・デーサーイーは、ジェネリアなどと並んだ際に身長の低さがばれてしまっていた。別に身長が低いことで女優としての価値がガタ落ちになる訳ではないが、映画女優にとってスクリーン上での存在感はとても重要である。プラーチーにも、正統派女優としての成長を期待していたのだが、元々の彼女のフィールドであるテレビ女優止まりの実力しかない恐れが出て来た。どちらにしろ、まだ彼女たちの潜在能力を判断するのは時期尚早であるため、今後の活躍に期待したい。
華々しいコメディー映画としての大部分はゴーヴィンダーが担っていた。台詞でのギャグ、アクションでのギャグ、そして絶妙なダンスの3拍子が揃ったゴーヴィンダーは、常に映画の中心であった。ファルディーン・カーンとトゥシャール・カプールは、彼らの個性が活きる配役のおかげで光っていた。
音楽はプリータム。豪華なダンスシーンが多かったが、耳に残った曲はほとんどなかった。唯一、ジェネリア演じるサンジャナーが歌う音程の外れた「Kuke Kuke」が印象的であった。
言語は基本的にヒンディー語。バーヴェーシュの一家がグジャラート人であるため、所々にグジャラーティー語が入る。
「Life Partner」は、最上のコメディーとは言わないが、普通に楽しめる娯楽映画である。ゴーヴィンダーはやっぱり目が離せないし、若手女優二人の共演も話題性がある。観て損はないだろう。