Dus Kahaniyaan

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Dus Kahaniyaan
「Dus Kahaniyaan」

 「Darna Mana Hai」(2003年)以降、ヒンディー語映画界では数本の小話を1本にまとめたオムニバス形式の映画が作られるようになった。そのような映画で大成功を収めたものは今のところないのだが、しぶとく作られ続けている。2007年12月7日、遂に1本10分の小話を10本もまとめた「Dus Kahaniyaan」なる映画まで登場した。総勢25人の俳優が出演している。さて、どんな作品になったのであろうか?

制作:サンジャイ・グプター
音楽:ガウラヴ・ダースグプター、バッピー・ラーヒーリー、シャフカト・アリー・カーン、アーナンド・ラージ・アーナンド
作詞:ヴィラーグ・ミシュラー、パンチー・ジャローンヴィー、アンバル・ホーシヤールプリー、イブラーヒーム・アシュク
衣裳:プージャー・サリーン、タイヤー・ボーマンベヘラーム
出演:サンジャイ・ダット、スニール・シェッティー、ナーナー・パーテーカル、ナスィールッディーン・シャー、アヌパム・ケール、シャバーナー・アーズミー、アムリター・スィン、マヘーシュ・マーンジュレーカル、マノージ・バージペーイー、アルバーズ・カーン、アーフターブ・シヴダーサーニー、ジミー・シェールギル、ディノ・モレア、ディーヤー・ミルザー、ネーハー・ドゥーピヤー、ミニーシャー・ラーンバー、マンディラー・ベーディー、マースーミー、ローヒト・ロイ、パルミート・セーティー、スダーンシュ・パーンデーイ、ネーハー・ウーベローイ、タリーナー・パテール、アニーター・ハーサナーンダーニーなど
備考:PVRプリヤーで鑑賞。

1. Matrimony(結婚) 監督:サンジャイ・グプター

 主人公は、多国籍企業の社長(アルバーズ・カーン)の妻(マンディラー・ベーディー)。彼女は毎週木曜日、軍人の男性(スダーンシュ・パーンデーイ)と出会って不倫をしていた。ある日、不倫相手からプレゼントに首飾りと指輪をもらってしまった彼女は、家に持って帰れず、質屋に預ける。ところがそれを夫が妻へのプレゼントとして買って来てしまった。そして彼は彼女に会社でプレゼントする。だが、ケースの中には指輪しか入っていなかった。おかしいと思った彼女がよく見ると、会社の受付嬢の首にその首飾りが光っていた。

2. High on Highway(ハイウェイ・ハイ) 監督:ハンサル・メヘター

 男性(ジミー・シェールギル)と女性(マースーミー)のカップルは、酔っ払ったときにハイウェイを散歩するのが趣味だった。ところがある日、女性が通り掛った車に連れ込まれそうになる。男性は必至に抵抗するが、ナイフで手を切られて逃げ出してしまう。女性の方は運良く警察に保護されて助かったが、男性はショックのあまり部屋で自殺してしまう。

3. Pooranmashi(十五夜) 監督:メーグナー・グルザール

 ラージャスターン州のとある村。母親(アムリター・スィン)の一人娘(ミニーシャー・ラーンバー)の婚礼が行われた。婚約式が終わった後、娘は母親に花嫁用のショールを身に付けさせる。母親もそれをかぶって1日仕事をする。その夜は満月だった。実は母親には、夫の他に密かに思いを寄せている男性がいた。彼は満月の夜に帰って来ると言い残して去って行った。ふと扉を開けると、その男が戸の前に立っていた。二人は畑の中で交わる。翌朝、目が覚めた母親は急いで家に戻って来るが、二人の情事を目撃した村人が、娘が男と情事をしていたと勘違いし、近所の人々を連れて押し寄せる。娘は、母親がそのようなことをしたと知ってショックを受け、井戸に身を投げて死ぬ。

4. Strangers in the Night(夜の出会い) 監督:サンジャイ・グプター

 初老の夫(マヘーシュ・マーンジュレーカル)と若い妻(ネーハー・ドゥーピヤー)は、毎年お互いひとつずつ過去の秘密を暴露していく儀式を行っていた。今年は妻の番であった。妻は、ある夜に鉄道駅の待合室で起こった出来事を話す。それは、暴徒によって追われた子供を助けた話だったが、暴徒に触れた途端、彼女は今まで感じたことのないエクスタシーが全身を駆け巡ったというものであった。

5. Zahir(ザーヒル) 監督:サンジャイ・グプター

 銀行員を辞め、小説家になるために新たな人生を踏み出したザーヒル(ジミー・シェールギル)。引っ越し先で彼は美しい女性(ディーヤー・ミルザー)と出会う。ザーヒルは彼女に恋し、あるとき突然キスしてしまうが、彼女には絶交される。その夜、友人たちとダンスバーで酔っ払っていたザーヒルは、踊り子の中にその女性がいるのを発見してしまう。その夜、彼は彼女の家に押し入って、彼女の制止を振り切って押し倒す。だが、実は彼女はエイズであった。エイズに感染したザーヒルは、死を待つ生活を余儀なくされる。

6. Lovedale(ラヴデール) 監督:ジャスミート・ドーディー

 結婚式のために実家に戻る途中だったアヌヤー(ネーハー・ウーベローイ)は、列車の中でミステリアスな女性と出会う。その女性は片方した耳飾りを付けていなかった。アヌヤーはその耳飾りを手にとって見せてもらうが、その途端にその女性はいなくなってしまう。列車はラヴデール駅に停車していた。彼女は何かに引かれるようにその駅に降りる。森の先には1軒の屋敷があり、画家の男(アーフターヴ・シヴダーサーニー)が一人で住んでいた。ちょうど雨が降り出したこともあり、彼女は雨宿りさせてもらう。雨が止んだあと、アヌヤーは駅まで送ってもらい、そのまま父親(アヌパム・ケール)の待つ実家へ直行する。そこで二人はまた再会するが、画家の方はアヌヤーが結婚することを知ってその場を立ち去ってしまう。父親はアヌヤーに、結婚する前に本当に結婚したい人が他にいないか思い起こしてみなさい、と助言する。なぜか思い浮かんできたのはその画家であった。また、父親からは過去に告白しそこなった女性の話を聞く。彼は別れ際にその女性に片方だけ耳飾りを渡したのだった。それを聞いて、列車の中で出会ったのは、過去に父親が恋した女性だと気付き、アヌヤーは一目散に画家の家へ向かう。そこで知ったのは、耳飾りを付けていた女性は彼の母親で、もう何年も前に亡くなっているということだった。

7. Sex on the Beach(砂浜のセックス) 監督:アプールヴァ・ラーキヤー

  ディノ(ディノ・モレア)が砂浜でくつろいでいると、砂の中から一冊の古びた本を見つける。そこに自分の名前を書き込んだ瞬間、海の彼方から一人の美女(タリーナー・パテール)がやって来た。その女性の誘惑に乗り、ディノは夕方彼女の家を訪れることになった。ベッドの上で美女を待つディノであったが、いつまで経っても女性はやって来なかった。心配になって探してみると、風呂場に女性の死体が転がっていた。だが、目だけはギロリとディノの方を向いた。驚いて逃げ出すディノであったが、逃げる先々に女性が現れた。その後、ディノがどうなったかは分からない。そしてまた今日も、その古びた本が別の餌食によって砂浜の中から発見されるのであった。

9. Rice Plate(ライス・プレート) 監督:ローヒト・ロイ

 厳格なタミル・ブラーフマンのお祖母さん(シャバーナー・アーズミー)は、たくさんの荷物を抱えてプネーに住む孫娘に会いに行こうとしていた。だが、財布を家に忘れたり、イスラーム教徒のタクシーに乗ってしまったりと、どうも運が悪かった。挙句の果てにプネー行きの列車に乗り過ごしてしまう。プネー行きの次の列車は2時間後だった。その間、鉄道駅の食堂でライス・プレートを食べようとする。ところが、手を洗って戻って来た間に、彼女のライス・プレートは一人のイスラーム教徒のおじさん(ナスィールッディーン・シャー)が食べていた。怒った彼女は彼からライス・プレートを奪い取って食べる。だが、気付いたらイスラーム教徒が手を付けた食事を食べてしまっていた。気持ち悪くなった彼女は食堂を駆け出す。だが、荷物を忘れたことに気付き、引き返す。一瞬、荷物がなくなったと思った彼女だったが、よく見たら別のテーブルの下に置かれていた。また、テーブルの上には手付かずのライス・プレートが乗っかっていた。イスラーム教徒に食べられたと思っていたライス・プレートは、実は彼女のものではなく、彼のものだったのだ。以後、彼女はイスラーム教徒に対する考え方を少し改める。

9. Gubbare(風船) 監督:サンジャイ・グプター

 長距離バスの中で、新婚の夫婦(ローヒト・ロイとアニーター・ハーサナーンダーニー)は新居の間取りについて相談している間に喧嘩をしてしまう。怒った妻は夫から離れて後ろの席へ移る。そこには、たくさんの風船を抱えたおじさん(ナーナー・パーテーカル)が座っていた。おじさんもどうやら妻を怒らせてしまったらしく、謝罪するために11個の風船を持って行く途中であった。おじさんの話に感動した妻は、些細なことで夫と喧嘩したことが恥ずかしくなる。途中のバス停でおじさんは降りて行く。忘れ物を見つけた妻は後を追うが、おじさんは墓地で墓に向かって語りかけていた。それを見た妻は、バスに戻って夫のそばに優しく寄り添う。

10.Rise & Fall(下克上) 監督:サンジャイ・グプター

 ムンバイーを支配するマフィアのドン、バーバー(サンジャイ・ダット)は、相棒のナワーブ(スニール・シェッティー)と郊外の廃工場でミーティングを持つ。バーバー暗殺の指令が何者かによって出されており、ナワーブはバーバーに、オーストラリアへ逃亡するように助言する。だが、バーバーは暗殺指令を出したのがナワーブだと勘付き、それを拒否する。その場を立ち去ろうとしたとき、二人は暗殺者たちによって襲撃を受け、殺される。子供の頃にマフィアのドンを殺してドンにのし上がったバーバーとナワーブは、若い勢力の台頭によって、同じように殺されて行ったのだった。

 様々な場面で、インド人は短くまとめるのが苦手な民族なのではないかと思う。テストの問題を比べてみれば一目瞭然だ。日本では、「○字以内に述べよ」という字数制限付きの解答を嫌と言うほど訓練されるが、インドでは基本的に長く書けば書くほど高い点数がもらえるシステムになっている。インド人は長いものを短くまとめる訓練をして来ていないし、その必要性もあまり感じていないのではないかと感じる。よって、「Dus Kahaniyaan」のように、10分という短い短編映画を作るのはインド人には難しいのではないかと感じた。中にはまあまあの小話もあったが、日本人の映画監督に監督させたらもっといいものが作れるだろうと思った。

 「Darna Mana Hai」は基本的にホラー短編の集合体だったが、「Dus Kahaniyaan」には様々なジャンルの短編があり、ヴァラエティーに富んでいた。10本の内の5本を、プロデューサーでもあるサンジャイ・グプター監督が担当し、残りの5本を新進気鋭の監督たちに任せている。サンジャイ・グプター監督らしさが最も出ているのは一番最後の「Rise & Fall」だ。盟友サンジャイ・ダットを主演に据え、カットバックを多用し、グプター映画のエッセンスを10分に凝縮している。ナーナー・パーテーカルの演技が光る「Gubbare」もよい。

 他の監督の作品の中では、ローヒト・ロイ監督の「Rice Plate」がよくまとまっていて秀逸だった。メーグナー・グルザール監督の「Pooranmashi」も中の上くらい。その他の短編は「だからどうした?」という結末のものばかりだった。

 しかし、わざわざ短編を集めた映画を映画館で公開する意味があるのか、今一度問い直したい。このような企画はテレビでやる方がベターであり、わざわざ映画館に足を運ぶような価値のある作品とは思えなかった。若い映画監督や売れない俳優たちにチャンスを与える映画という位置づけならば何らかの意味はあるかもしれないが、「Dus Kahaniyaan」のような映画は、映画本来の楽しみからかけ離れていると思う。

 「Dus Kahaniyaan」は、サンジャイ・ダットやスニール・シェッティー、ナスィールッディーン・シャーやナーナー・パーテーカル、シャバーナー・アーズミーやアムリター・スィンなど、著名な俳優が出演してはいるものの、10本分の映画を観ただけの満足感は得られないばかりか、1本分の映画の楽しさすらない作品である。わざわざ観に行く必要はないだろう。