Jaggu Ki Lalten

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Jaggu Ki Lalten
「Jaggu Ki Lalten」

 2022年10月14日公開の「Jaggu Ki Lalten(ジャッグーのランタン)」は、日本の昔話に似た教訓めいたストーリーの低予算映画である。

 監督はヴィピン・カプール。全く情報がなく、映画を撮るのも初めてのはずである。キャストの中ではラグビール・ヤーダヴの名前がもっともビッグネームであるが、彼はどちらかといえば準主役の立ち位置であり、主役を務めるのはニーラジ・クマール・グプターという全く無名の新人俳優である。新人といってもおじさんであり、なぜ彼がこの映画で主演をしているのか不明だ。他に、アークリティー・バールティー、ナムリター・マッラー、ランビール・アーリヤンなどが出演しているが、やはり全く知られていない俳優たちばかりだ。

 貧しい生まれながら廃品回収業で商才を発揮し、一代で財を築いた実業家ハリラール・ブート(ニーラジ・クマール・グプター)は、ホテル建設予定地の視察をするためにラージャスターン州からウッタラーカンド州を訪れた。運転手のデーワン(ランビール・アーリヤン)と息子のニクンジも一緒だった。

 土砂崩れのために迂回をせねばならず、途中でガス欠になってしまったため、ハリラールとニクンジはデーワンが燃料を持ってくるのを待つ間、道端にあったジャグモーハン(ラグビール・ヤーダヴ)の経営する茶屋で休憩することになる。ジャグモーハンはおいしいチャーイを出してくれた。骨董品に造詣の深かったハリラールは、店先に吊り下げられていたランタンに注目する。聞いてみると、ジャグモーハンが曾祖父の代から受け継いできたもので、英領時代に英国人から贈られたものだという。ハリラールは200ルピーで買い取ろうとするが、ジャグモーハンは先祖伝来の品ということで断る。

 ハリラールは、その茶屋にいる間に、ジャグモーハンが多額の借金を抱え困窮していることを知る。ジャグモーハンには3人の娘がおり、長女を嫁に出したが、そのときの持参金は全て借金になっていた。さらに、次女の授業料を半年間滞納しており、学校から追い出されてしまった。ハリラールはジャグモーハンを助けるため、ランタンを多額の代金で購入したいと申し出る。ジャグモーハンの妻ドゥルガー(アークリティー・バールティー)はそれを受け入れるように夫に言うが、ジャグモーハンはなかなか売ろうとしない。とうとうハリラールは100万ルピーの値段を提案した。遂にジャグモーハンは折れる。ちょうどデーワンが戻ってきていたため、ハリラールは即金でそのランタンを買い取る。

 ニクンジはなぜ父親がこんなガラクタのランタンを100万ルピーで買ったのか理解ができなかった。ハリラールは息子に丁寧に説明する。茶屋で待っている間、ハリラールはランタンの写真を英国の博物館に送っており、その価値は2千万ルピーに相当すると知らされていた。そしてその前金として200万ルピーが振り込まれていた。よって、ハリラールにとってはランタンを100万ルピーで買っても損な取引ではなかった。自分のみならず相手にとっても得になるような取引をするのが優れた商人になるためのコツであることをニクンジは学んだのだった。

 インドでは廃品回収業および業者のことを「कबाड़ीカバーリー」という。決して社会の中で見上げられる職業ではなく、マフィアが経営に絡んでいることも少なくないが、「Jaggu Ki Lalten」の主人公ハリラールは、廃品の売買で富を築き、周囲から揉め事の調停を頼まれるくらい尊敬を集めるようになった廃品王ということだった。ラージャスターン州在住という設定で、おそらくシェーカーワーティー地方で撮影されているが、なぜか自動車のナンバーはハリヤーナー州の「HR」だった。映画では、ハリラールの運転手デーワンの視点から、彼らがウッタラーカンド州で出会った茶屋の主人ジャグモーハンとの出来事が語られる。

 筋書きはとてもシンプルで、ハリラールが経済的に困窮するジャグモーハンを救うため、彼が店先に掲げていた先祖伝来のランタンを破格の値段で買い取るというものである。

 ハリラールは、1ルピーのものを100ルピーで売り、100ルピーのものを1ルピーで買うことができるほど商才のある人物として紹介されていた。その彼が、古びたランタンを最終的に100万ルピーで買い取った。彼の見立てでは、そのランタンはせいぜい2万ルピーも出せば確実に買えるようなものだった。確かに英国の博物館が2千万ルピーで買い取るとオファーを出しており、それから比べれば100万ルピーの値段は高くないかもしれない。だが、敢えてそんな金を出さなくてもよかったのではないか。息子のニクンジは父親に聞く。

 だが、ハリラールには独自の哲学があった。取引では、買い手と売り手、どちらにも得がなくてはならない。2万ルピーの値段でもジャグモーハンにとってはありがたかったはずだが、ハリラールは、彼が抱えている借金の額はそれより遥かに大きいことを知ってしまっていた。しかも、まだ未婚の娘が2人残っており、これから持参金もかさむ。2万ルピーの現金では、せいぜい借金取りをしばらく回避するだけの効果しかなく、いずれジャグモーハンは再び金欠に陥ってしまう。ならば、彼が人生を再起できるようなまとまった額の現金を渡してあげることが、相手にとって真の得になる。そう考えたハリラールは彼に100万ルピーの値段を提案したのだった。近江商人ではないが、「売り手よし」「買い手よし」の「二方よし」精神である。

 低予算映画の作りであり、監督に技量も経験もなく、主役ニーラジ・クマール・グプターはどこからどう見ても大根役者だ。しかしながら、ジャグモーハンがあまりに可哀想なことと、ハリラールの考え方があまりに崇高であることから、軽く心に響く作品になっている。ニーラジに加えて子役たちの演技も良くなかったものの、それ以外の部分で文句はなく、特にベテラン俳優ラグビール・ヤーダヴやドゥルガー役を演じたアークリティー・バールティーの演技は良かった。

 「Jaggu Ki Lalten」は、あくまで無名監督による低予算映画なので、そういうつもりで観る必要がある。ラグビール・ヤーダヴが前面に押し出されており、確かに重要な役柄をきっちりと演じているが、主役は彼ではなく、謎の無名俳優ニーラジ・クマール・グプターだ。しかしながら、シンプルかつ道徳的な物語になっており、心に残るものはある。完全な駄作と言い切るには惜しい作品である。


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