Vikrant Rona (Kannada)

2.0
Vikrant Rona

 テルグ語映画を中心に南インド映画がヒンディー語映画を圧倒しつつある現在、カンナダ語映画界からも「K.G.F: Chapter 2」(2022年)という大ヒット映画が生まれ、この流れにうまく乗っている。ただ、一過性のものにしないためには、それに続く大ヒット作が必要だ。

 2022年7月28日公開のカンナダ語映画「Vikrant Rona」は、「K.G.F」に続く、カンナダ語映画界からの野心的な大作である。汎インド映画を目指し、ヒンディー語、テルグ語、タミル語、マラヤーラム語などの多言語展開され、主演には、言語の垣根を越えて活躍するカンナダ語映画スターのスディープを起用している。また、チョイ役ではあるが、ヒンディー語映画界のスター、ジャクリーン・フェルナンデスが出演している。

 監督はアヌープ・バンダーリー。スディープとジャクリーン・フェルナンデスの他には、ニーター・アショーク、ラヴィシャンカル・ゴウダー、マドゥスーダン・ラーオ、Vプリヤー、ヴァースキ・ヴァイバヴ、スィッドゥー・ムーリマニ、ヴァジュラディール・ジャイン、ミーラナ・ナーガラージなどが出演している。

 鑑賞したのはカンナダ語版で、英語字幕を頼りに観た。

 カルナータカ州の森林地帯にあるカマロットゥ村は、ジャナルダン・ガーンビラー(マドゥスーダン・ラーオ)という地主によって治められていた。ある日、ジャナルダンの友人の息子ヴィシュワナート(ラヴィシャンカル・ゴウダー)が双子の子供パンナー(ニーター・アショーク)とムンナー(スィッドゥー・ムーリマニ)を連れてやって来る。パンナーはもうすぐラーケーシュという婚約者と結婚する予定で、ヴィシュワナートは式をカマロットゥ村の古い屋敷で行おうとしていた。だが、ジャナルダンはそれを拒否する。なぜならその屋敷は、ブラフマラークシャサという悪魔に呪われていたからだった。28年前、ジャナルダンの息子サンジューが、村の寺院から宝石を盗んだためだった。サンジューはそれ以来、帰宅を許されず、現在はロンドンにいた。

 ところがヴィシュワナートがカマロットゥ村にやって来てすぐに、サンジューがロンドンから帰って来る。サンジューはパンナーと出会い、恋に落ちるが、二人は呪われた屋敷の井戸で警察官の遺体を発見する。カマロットゥ村に新しくヴィクラーント・ラーナー警部補(スディープ)がやって来て、事件の捜査に乗り出す。しかし、村に着いて以来、何度もラーナー警部補は命を狙われた。

 ラーナー警部補は、捜査を進める内に、村では14名の子供が次々に殺されていることを知る。そして、この事件は、28年前の事件と関わりがあることにも気付く。28年前、寺から宝石を盗んだのはサンジューだったが、村人たちから濡れ衣を着せられたのはニットーニという貧しい寺守だった。ニットーニには母デーユ、妻、息子のラーガヴァとマーダヴァ、そして一人の娘がいたが、ニットーニと妻は自殺し、学校のいじめっ子たちからラーガヴァ、マーダヴァ、娘が襲われて、ラーガヴァと娘が死んだ。だが、マーダヴァは生きており、復讐を誓ったのだった。

 ラーナー警部補は、学校で教頭をするローレンス・ピントー(ヴァジュラディール・ジャイン)こそがマーダヴァであることを突き止める。また、実はラーガヴァも生きており、サンジューになりすましていた。マーダヴァとラーガヴァはパンナーとマンヌーを誘拐するが、ラーナー警部補が駆けつけ、彼らを殺す。そしてパンナーとマンヌーを助け出す。実はラーナー警部補もラーガヴァやマーダヴァの同級生で、マーダヴァたちによって妻と娘を殺されていたのだった。

 ポスターを見ると、ハリウッド映画「インディー・ジョーンズ」シリーズのようなアドベンチャー映画を想起するかもしれないが、実際は多少のホラー要素を含んだサスペンス映画であった。密林の中にある隔絶された村で起こった殺人事件を巡る物語であり、多数の登場人物が登場して、人間関係も複雑だ。だが、脚本段階から論理的に破綻があり、ストーリーテーリングも決してうまくないため、途中から筋を追えなくなる。はっきりいって、ストーリーはメチャクチャだ。「K.G.F」も大味な映画だと感じたが、この「Vikrant Rona」を観ても、洗練性という点で、カンナダ語映画はテルグ語映画やタミル語映画の域に達していないと感じる。

 ただ、クライマックスのアクションシーンには力が入っていた。スディープ演じる主人公ラーナー警部補が、真の悪役であるマーダヴァとラーガヴァと戦うのだが、これがほぼ切れ目なしの長回しで撮られており、迫力があった。そのコスチュームも、カルナータカ州の伝わる伝統芸能ヤクシャガーナを思わせる独特なものであった。

 「Vikrant Rona」は批評家から酷評されているが、不思議なことに興行的にはヒットしている。ラーナー警部補の登場シーンである嵐の洋上での戦闘シーンや、ジャクリーン・フェルナンデスが踊る「Ra Ra Rakkamma」など、キャッチーなシーンもあるのだが、このようにプロットが崩壊している映画が観客に受けるというのは、半ば信じ難い。

 「Vikrant Rona」は、「K.G.F: Chapter 2」に続くカンナダ語映画の話題作であり、スディープが主演のサスペンス映画である。ヒンディー語を含む多言語展開が行われ、興行的にヒットしているが、何が何だか分からないストーリーであり、批評家からはそっぽを向かれている。ヒンディー語映画ファンにとっては、ジャクリーン・フェルナンデスが出演しているのがポイント高いが、彼女の出番はほとんどアイテムガール止まりだ。無理して観る必要のある映画とは思えない。