K.G.F: Chapter 2 (Kannada)

2.5
K.G.F: Chapter 2

 カンナダ語映画としては初の汎インド的大ヒット作になった「K.G.F: Chapter 1」(2018年)。カルナータカ州に実在するコーラール金鉱を舞台にした壮大なフィクション映画であった。「Chapter 1」という題名の通り、元々数部にわたって作られる計画の作品であり、第1部の大ヒットを受けて、第2部の製作が始まった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で撮影には支障が出たようだが、ヒンディー語映画界のスターも起用し、カンナダ語映画史上初となる10億ルピーの予算を掛け、前作よりさらにスケールアップした第2部が、2022年4月14日に公開された。カンナダ語版がオリジナルだが、タミル語、テルグ語、マラヤーラム語、そしてヒンディー語の吹替版も全国同時公開された。

 監督は前作に引き続きプラシャーント・ニール。主演も当然変わらず、カンナダ語映画界の「ロッキングスター」ヤシュ。ヒンディー語映画界からはサンジャイ・ダットとラヴィーナー・タンダンが起用されており、重要な役回りを演じる。他に、シュリーニディ・シェッティー、アチユト・クマール、プラカーシュ・ラージなどが出演している。

 ちなみに、鑑賞したのはヒンディー語版である。

 時は1978年。前作でコーラール金鉱を支配していたガルラを殺し、金鉱の新たな支配者となったロッキー(ヤシュ)。ラージェーンドラ・デーサーイーの娘リーナー(シュリーニディ・シェッティー)を人質に取り、グル・パーンディヤーン(アチユト・クマール)、アンドリュース、ラージェーンドラ・デーサーイーの協力を取り付け、金鉱の掘削を急ピッチで進めた。

 コーラール金鉱を作り上げた故スーリヤヴァルダンの弟アディーラー(サンジャイ・ダット)がコーラール金鉱を襲撃し、リーナーを誘拐する。ロッキーは単身アディーラーに立ち向かうが、銃撃を受けて倒れる。アディーラーはわざと彼を逃がす。ロッキーが重傷を負ったことでコーラール金鉱の支配権が揺らぎ、その影響はインド亜大陸西海岸に及んだ。そこで回復したロッキーはドバイに飛び、アフリカからインドまでの金塊密輸を支配するイナーヤト・カリールと交渉する。インド亜大陸西海岸の支配権は再びロッキーのものとなり、彼はカリールからカラシニコフ銃も調達する。コーラールに戻ったロッキーは圧倒的火力でもってアディーラーを圧倒し、彼に瀕死の重傷を負わせる。

 時は1981年になった。中央政界ではラミカー・セーン(ラヴィーナー・タンダン)が首相に就任した。中央捜査局(CBI)のカンネガンティ・ラーガヴァンからロッキーについてのブリーフィングを受けたセーン首相はロッキー打倒に動く。だが、逆にロッキーは首相官邸を訪れ、セーン首相を脅して帰って行く。また、リーナーはロッキーに愛の告白をし、二人は結婚する。一方、アディーラーはロッキーへの復讐の機会を虎視眈々とうかがっていた。

 リーナーが妊娠をロッキーに伝えたとき、セーン首相の後押しを受けたアディーラーがコーラール金鉱を急襲する。リーナーは銃弾を受けて死ぬが、怒ったロッキーは反撃し、アディーラーを殺す。セーン首相は軍隊をコーラールに差し向けるが、既にロッキーはいなかった。コーラールに住んでいた人々は避難をし、ロッキーが用意した新しい街に移住した。ロッキーは、ありったけの金塊を積んだ貨物船に乗ってインド洋を航行していた。セーン首相は攻撃を命じ、コーラールは爆撃され、ロッキーの乗った貨物船も金塊もろとも沈没した。

 公開と同時にインド全土で記録を塗り替える大ヒットとなり、100億ルピー以上の興行収入を叩き出した超弩級のカンナダ語映画だが、その興行的成功とは裏腹に、決して完成度の高い映画ではなかった。全編に渡ってアドレナリン分泌を刺激するようなシーンが続くが、緩急がなく、ずっと「急」の状態である。まるでハイライトだけを散りばめた予告編を2時間48分ずっと見せられているかのような作品で、観ていてとにかく疲れる。あまりに主人公のロッキーが強すぎ、神出鬼没で、しかも彼の行うことが全てうまく行くため、だんだん付いて行けなくなる。冷静に観たら、インド全土でヒットするような質の映画ではない。このような映画が100億ルピーを稼ぎ出してしまうところに、現在のインド映画シーンの異常事態を感じずにはいられない。

 ストーリーがあまりに荒唐無稽で消化不良に陥ってしまうのだが、前作はまだスケールが小さかったため、マシだった。今回は、インディラー・ガーンディー首相をモデルにしたラミカー・セーンが登場するなど、インド全土やインド現代史に触れるほどスケールアップしているため、荒唐無稽さが悪目立ちすることになった。

 ロッキーはほぼ一貫して無敵なのだが、ストーリー上の必要があるときだけ無謀な行動をし、その結果、銃弾に倒れ、弱さも見せる。その辺りからもご都合主義を感じる。ヒロインのリーナーとロッキーの恋愛ははっきり言ってあってないようなものだ。リーナーがロッキーに突然愛の告白をし、二人は結婚することになるが、彼女の変心や二人の関係についてロジカルな説明はほとんどない。そしてリーナーは妊娠した瞬間に殺されてしまう。ヒロインとは名ばかりの、見せ場のない出演だった。ロッキーがリーナーに「お前はエンターテイメントだ」と言い放つ男尊女卑シーンがあるが、彼女は残念ながらそのエンターテイメントにさえもなっていなかった。

 インド映画の切り札は母と子の関係だ。ロッキーがコーラールの支配者になり、金塊を急ピッチで掘り出させる理由には、母親の誓い、そして母親との誓いが関係していた。母親は息子がいつか支配者になると誓い、息子は母親に、世界中の金をプレゼントすると誓う。ロッキーの全ての行動の原動力は、死んだ母親であった。これはインドでは美談と捉えられることになるのだろうが、傍から見れば迷惑な話だ。母親の誓いと母親との誓いを実現するため、ロッキーは多くの人々を殺し、数々の犯罪に手を染めたのである。

 汎インド映画を標榜するテルグ語映画「RRR」(2022年)でもヒンディー語映画界からアジャイ・デーヴガンとアーリヤー・バットが起用されていたが、「K.G.F: Chapter 2」では、ヒンディー語映画界のスターであるサンジャイ・ダットとラヴィーナー・タンダンが出演していた。サンジャイ・ダットは、「Agneepath」(2012年)で演じたような悪役のイメージで今回、主人公ロッキーのライバルを憎々しく演じていた。元々、筋肉派の男優であるため、こういう役はお手の物だ。ラヴィーナー・タンダンは1990年代から2000年代に掛けて活躍した女優で、最近は彼女が主演したネットドラマ「Aranyak」(2021年)も話題になった。最近また活動を活発化させており、この「K.G.F: Chapter 2」で演じたラミカー・セーン首相役も彼女の復活を強力に後押ししている。

 「K.G.F: Chapter 2」は、比較的地味なイメージのあったカンナダ語映画が全身全霊を掛けて創り上げた汎インド的な超大作「K.G.F」シリーズの第2部であり、記録を塗り替える大ヒットになっている。だが、ストーリーテーリングに優れたヒンディー語映画、タミル語映画、テルグ語映画などと比べると詰めの甘さが目立ち、ヒットを正当化できるような完成度ではない。おそらくこれから「Chapter 3」も作られるのだろうが、あまりダラダラと続編を作り続けると、徐々に尻すぼみになっていくのではないかと心配である。何はともあれ、話題作ではある。